なんで褒めてくれないの?

テーブルに置かれた百物語用のロウソクが、由香とさゆりの顔をほのかに照らしていた。

ランタンはすでに消され、タブレットの画面もぼんやりと光っている。


「これから九十八話まで、一気に終わらせるよ」


由香がタブレットを操作すると、動画が配信画面に映し出された。


――五分後。


「はい、九十八」


ぽふっ、と音を立てて、太いロウソクが吹き消される。


動画の再生中から、コメント欄はざわついていた。


『なんで同時なの?』

『聞き取れるかよ!』


その多くは、動画に対する困惑やツッコミだった。


「大変だったんだよ? 台本に書き起こして、速度も調整して……編集めっちゃ頑張ったの!」


由香は『褒めてよ!』とでも言いたげな顔でカメラを見つめる。


だが、返ってきたコメントは――

『余計なことを』

『無駄に努力家すぎて逆に怖い』


努力をねぎらってほしかった由香の気持ちとは裏腹に、どこか突き放すような反応ばかりだった。


「もー! 頑張ったのにー!」


ふくれっ面で不満をこぼしたあと、気を取り直すように声を張る。


「さゆりちゃん! 怖い話やっちゃって! みんなが夜中トイレ行けなくなるやつ!」


視聴者の一部は由香にツッコミたくなったが、それ以上に『幽霊が語る怪談』への期待が勝っていた。


「んー、トイレに行けなくなるやつかぁ……」


さゆりは唇に人差し指を当て、視線を泳がせる。

少し考えてから、カメラに向き直って、ゆっくりと語り始めた。

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