百物語ってさ

百物語を始めるには、ちょっと早いかも――


そう思った由香は、コメント閲覧用のタブレットを片手に、スマホに向かって話し始めた。


「百物語って、怖い話を一本話すたびにロウソクを一本消すの。そしてね、全部消えたら――なんか起きるんだよ! ね、ワクワクするでしょ?」


楽しそうな顔で、さらに続ける。


「――でもさ、百話って長いよね。一話五分でも五百分……つまり八時間二十分! もう――大っ変!」


由香はにんまりと笑った。


「だから考えたの! 百物語を超時短で済ませる方法!」


由香は荷物からロウソクとスタンドを取り出した。

太いのが一本、細いのが二本。


「これ! 太いのが九十八話分、細いのは残り二話分ね」


得意げに微笑んで、カメラに顔を寄せる。


「実はね、あーし、九十八話ぶち込んだ動画を作ってきたの! 五分で九十八話終わらせるっていう神動画! だからロウソクも、九十八本分まとめて消しちゃいます!」


コメント欄はざわついた。


『なんでだよ』

『怪異さんも聞き取れなくて困るだろ』


だが、由香はまったく動じない。


「九十八話が同時なんだから、ロウソクは一本で済むの!」

真顔で断言する。


「で、九十九話がさゆりちゃん、百話があーし。完璧じゃん!」


『理屈は謎だけど、さゆりちゃんの話は聞きたい』

『本物の幽霊が話す怪談ってすごそう』


そんなコメントに、由香は口を尖らせた。


「もー! あーしのも楽しみにしてよ~!」


文句を言いながらも、楽しそうだった。


気づけば森はすっかり暗くなり、ランタンの明かりだけが辺りを照らしていた。


「さて、いい感じに真っ暗になったし――そろそろ始めよっか」


小さく息を吸って、笑顔で宣言する。


「ロウソク、点けまーす!」

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