第7話 【閑話】 臆病者
僕の名前は天堂直人。
「オラ、早く焼きそばパンとヨーグルトドリンク買って来いよ!」
「私はツナサンドと牛乳」
「俺は鮭のおむすび2個とお茶な」
「あの……久保田くんに三上さんに峰村くん……お金……」
「そんなのお前の奢りに決まっているだろうが!」
また、僕の奢りか......
「そうそう……それだけで今日一日虐められないならラッキーじゃん」
「お前、俺から金取るの? あんっ! 殴られたいのか……」
「ゴメンなさい……すぐに買ってきます!」
僕は……今、パシリにされている。
これでも、少し前まで『異世界で勇者』だったんだ。
綺麗な姫を恋人に持ち『人類の希望』とまで呼ばれていた。
元は勿論、只の日本人だった。
だけど、異世界 トリスタニアに女神様に転移させて貰ったんだ。
勿論、チートも貰ったよ。
そこでの僕は、簡単に言えば超人だった。
歴戦の騎士の剣が止まって見え、オーガの棍棒すら剣1本で止めてみせた。
外見もお気に入りのキャラに似た美形で、権力も思いのままだった。
気に食わない奴は王に頼み国外に追放してやった。
『勇者』の為なら喜んで国王がやってくれた。
美しいオルタナ姫と婚約していて美形だった王子レオン。
自分の息子だと言うのに国王は国外追放してくれたし、美しいオルタナ姫も俺の婚約者にして貰えた。
全てが自由自在だった。
だが……チートが中途半端だったのか、魔王との戦いで僕はあっさり殺された。
女神と『死んだ場合でも元の世界に戻るだけ』という約束だったので……この世界に戻ってきた。
チートを失った僕は……元の最下層の人間へと戻った。
勇者として生きてきたのだから、勇気位あるんじゃないか?
『そんな物は無いよ』
だって、勇気を出して久保田くんに逆らったら……ワンパンで沈められて後はタコ殴り。
気がついたら『許して』を連呼していた。
結局、僕は只の弱者に戻った。
「手前えーー! ぼぉ~とすんじゃねーよ! もし売り切れていたらただじゃすまさねーかんな!」
「すみません……すぐに行きます」
僕はもう勇者じゃない。
ただの臆病者だ。
だけど……異世界でもし、僕が魔王に勝てていたら……
こんな惨めな生活をしないで、異世界で楽しく過ごせていたんだろうな……
勝てなかった僕は……元の臆病者のパシリとして生きていくしかないんだ。
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