「笑って読めるのに、読後にちゃんと温度が残る」タイプの作品です。

会話のテンポと関西弁の切れ味が抜群です。軽妙な掛け合いが続くのに、どこか切実さと体温があって、読者を一気に部屋の中へ引き込みます。「鏡さんに謝れ」「異世界への入口作りすぎや」など、笑わせながらも人物像が即座に立ち上がる台詞運びが巧みです。

SF的な荒唐無稽さと現代社会風刺の融合が非常に鮮やかです。
・AI管理のマンション
・ゴミ出しルールが宗教化する社会
・陰謀論と株価操作
・宇宙客船と低軌道衛星
これらが「割れた姿見」という極めて生活感のある事故から連鎖していく構造が秀逸で、現代的な不安と可笑しさを同時に描いています。馬鹿馬鹿しい理屈なのに、情報過多社会では「ありそう」に感じてしまうリアリティが怖くもあり、笑えます。