アーマード三国志 ~乱世を駆ける光鋼の刃 ~
近藤良英
第1話
◆主要登場人物
■劉備りゅうび
民を救う「仁」を重んじる蜀の建国者。
質素だが高い防御力を持つ「仁鎧じんがい」を身にまとう。
光電通信を重視し、味方との連携戦を得意とする。
■関羽かんう
劉備の義兄弟。光線剣「青龍煌刃せいりゅうこうじん」を操る無双の将。
忠義の象徴で、単騎で敵陣を突破できるほどの高機動アーマードを装備。
■張飛ちょうひ
豪快な近接戦特化の武将。腕力強化型アーマード「雷轟甲らいごうこう」で突撃戦を得意とする。
咆哮による威嚇システムを搭載。
■諸葛亮(しょかつりょう/孔明)
光電ネットワークの制御に長けた天才軍師。
“光油気流”を解析して天候・風向きを操る戦術を駆使する。蜀の頭脳。
■曹操そうそう
魏鋼軍を率いる冷静な戦略家。
黒鋼アーマード「覇鎧帝はがいてい」を装着し、遠距離砲撃に優れる。
光油精油所の管理技術を掌握し、軍事力を急成長させた。
■曹丕そうひ
曹操の後継者。効率重視の戦術と新型光線兵器「紫電砲」を実用化し魏の国力を拡大。
■孫権そんけん
光油海運の独占と大型戦闘艇の運用に長けた呉の君主。
青鋼アーマード「蒼王装そうおうそう」で長江戦を指揮。
■周瑜しゅうゆ
孫権の名将。光油炎上兵器「炎流弩えんりゅうど」の考案者。
赤壁の戦いで火攻めを指揮し、曹操艦隊を撃破。
■司馬懿しばい
魏の切れ者。分析型アーマード「玄奥機げんおうき」で諸葛亮と知略を競う。
後に司馬氏政権の基礎を築く。
■その他
呂布・馬超・趙雲なども、個性豊かなアーマードと浮揚馬を持つ“超武装戦士”として登場。
◆世界観
1. アーマード(Armored)とは
戦士が装着する鋼鉄の強化鎧。
・光線剣レーザーブレード
・光線盾
・光線機関砲
・ミサイル(命中すると対象を蒸発=異次元へ消失)
などを搭載する、パワードスーツ型兵装。
各将軍に専用カラー・専用武装がある。
________________________________________
2. 浮揚馬ホバーホース
光油エネルギーを動力にした“浮く馬”。
地上3mを浮揚して疾走し、戦士の象徴としてデザインも個性的。
呂布の愛馬「赤兎」は高速機動型など、史実の馬をベースとする。
________________________________________
3. 巨大戦闘艇(アーマード艇)
200人のアーマード兵士を乗せて浮遊する巨大戦闘艇。
飛行能力はないが、“地上数m”を高速滑走でき、城壁突破や上陸作戦に用いられる。
________________________________________
4. 光油こうゆ
この大陸最大のエネルギー資源。
地底から採掘され、精油所で精製することで
・浮揚力
・光線兵器エネルギー
・ミサイル推進
・光電ネットワークの電力
など多用途に利用。
精油所の破壊は、敵勢力の動きを止める決定的作戦となる。
5. 光電ネットワーク
大陸全域に張り巡らされた高速通信網。
光電端末で遠隔画像通信も可能で、軍議・偵察に不可欠。
諸葛亮ら軍師はこのネットワーク解析を駆使し、敵位置の把握や風向き予測を行う。
6. 主要戦場
●桃園の誓い
→ 桃園に光油灯が揺らめく夜、三人はアーマードを捧げ合う儀式で義兄弟に。
●赤壁の戦い
→ 光油を含んだ川霧に火をつける作戦が“炎流弩”と連動した超兵器戦へ。
●五丈原
→ 光電ネットワークが乱れ、孔明の動作補助スーツは限界。
死後も木像アーマードを暗号起動させ司馬懿を威嚇。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
① 各勢力のアーマード・デザイン(魏・呉・蜀)
■【蜀:Shu】自然と調和する緑鋼アーマード
テーマ:義・仁・信頼、軽快な戦闘
•基本色:翡翠ひすい色、深緑
•特徴:軽量フレームで機動力と跳躍に優れる
•動力炉:光油粒子を純度高く抽出した「翡翠炉」
•音:駆動音が静かで森の風のよう
•デザイン:丸みと曲線が多い、「心を守る鎧」のイメージ
•主な兵種
・飛影ひえい型:軽装スカウト
・龍牙りゅうが型:中距離支援
・仁王におう型:近接戦の盾役
(例:趙雲なら、白銀に緑のラインが入り、槍戦用に特化)
________________________________________
■【魏:Wei】黒鋼アーマード(重装・火力特化)
テーマ:覇道・統率・巨大火力
•基本色:黒鉄、墨色
•特徴:装甲が最も厚く光線砲も最大出力
•動力炉:光油を高密度で圧縮する「黒核炉」
•音:重く、低音の振動が響く
•デザイン:角張った強面、威圧的で重戦車のよう
•主な兵種
・鋼壁こうへき型:重盾兵
・黒嵐こくらん型:高速砲撃
・覇王はおう型:旗艦級アーマード(曹操専用)
________________________________________
■【呉:Wu】海と風を操る蒼鋼アーマード
テーマ:水上戦・機動戦艦・炎属性兵器
•基本色:群青、瑠璃色
•特徴:水中・湿地・船上で最高性能
•動力炉:水冷式の「蒼水炉」
•音:風のように軽い
•デザイン:曲線と細身でシャープ。海の獣を思わせる形状
•主な兵種
・潮風しおかぜ型:高速移動
・紅炎こうえん型:火攻め特化
・蒼王そうおう型:孫権の指揮車
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
② 光油こうゆ技術の詳細設定(発電・浮揚理論)
■光油とは?
大陸の地下深くから採れる、青い光を宿す液体燃料。
古代文明が残した“光のエネルギー反応”を持つ。
________________________________________
1)発電方法
〈光油変換炉〉
光油 → 光粒子こうりゅうしへ分解
→ 高出力の電力を発生
光油は「太陽エネルギー」「地熱エネルギー」を同時に持ったような万能燃料で、
小さな炉でも都市1つ分を動かせる。
________________________________________
2)浮揚理論ホバリング
光油粒子が放つ微細な反重力波を利用。
•アーマード・浮揚馬・戦闘艇は全て「光油反重力エンジン」を内蔵
•地面とのあいだに“薄い光の膜”を発生させる
→ その膜がクッションになり、浮く
浮揚高:3m
速度:普通の馬の3倍以上
消費エネルギー:中程度(持続力が高い)
________________________________________
3)光線兵器
光油を微細蒸気にして、
そこに電磁加速をかけて放つのが光線兵器。
•光線剣レーザーブレード
•光線盾
•光線機関砲
•“異次元蒸発弾”(命中すると蒸発させる)
が存在。
________________________________________
4)光電ネットワーク
光油発電を使った大電力通信。
リアルタイム映像、地図共有、風向き解析が可能。
孔明はこれを最大限に利用して戦術を組み立てる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
③ 武将の必殺技名
■劉備
「仁天衝じんてんしょう」
光の盾を大きく広げ、仲間全体を守りながら突進する。
■関羽
「青龍煌斬せいりゅうこうざん」
青龍煌刃が巨大な光の軌跡を描き、敵小隊をまとめて切り裂く。
■張飛
「雷轟突破らいごうとっぱ」
アーマードの両腕から雷光を走らせ、怒涛の突撃で敵陣を粉砕。
■諸葛亮
「光電千策こうでんせんさく」
光電ネットワークを操り、気流・地形・敵の動きを連動した連鎖攻撃へ変える。
■曹操
「覇鎧滅砲はがいめっぽう」
覇鎧帝に搭載された高出力光線砲を一点集中させる必殺の一撃。
■周瑜
「炎流烈破えんりゅうれっぱ」
光油を炎に変換して爆発的に放ち、敵艦隊を一瞬で包み込む。
■司馬懿
「玄奥影陣げんおうえいじん」
幻像アーマードを投影しつつ本体が逆方向から奇襲する二重戦術。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
④ 勢力図:魏・呉・蜀の三国位置
文章でわかりやすく図解します。
【北方】 魏(曹操・司馬懿)
│
│ 黄河が大陸を横切る
│
───────────────
│
│
【西方】蜀(劉備・孔明)───────【東方】呉(孫権・周瑜)
(山岳地帯) (長江の河口・海が近い)
●魏(北)
・平野が多く、光油精油所を大量に持つ
・黒鋼アーマードの本拠
・国土が広い
●蜀(西)
・険しい山々と渓谷が多い
・浮揚馬とアーマードが活躍しやすい地形
・“蜀の緑”と呼ばれる豊かな緑地
●呉(東)
・川と海が近く、水上戦が中心
・赤壁の舞台
・蒼鋼アーマードの機動戦が強み
________________________________________
アーマード三国志
キャラクター設定集 & アーマード図鑑
________________________________________
■キャラクター設定:呂布りょふ
【肩書き】
・董卓軍 最強武将(“戦神”)
・虎牢関守将
・単独で一軍に匹敵する男
【性格・人物像】
•圧倒的な戦闘本能を持つ孤高の武人
•ただ戦うためだけに生きているような純粋な戦闘狂
•しかし、卑怯な戦いは好まず、真正面からの勝負を好む
•単純に見えるが、戦場での状況判断は鋭い
•主君・董卓以外には心を許さない
•実は馬(赤兎)への愛情は深い
【特徴・ビジュアル】
•身長:198cm
•体重:115kg(アーマード未装着時)
•体つき:全身が筋肉の塊
•顔:鋭い目つき、額に傷/乱れた黒髪
•声:低く太い、怒りと威圧感に満ちた声
【戦闘スタイル】
•圧倒的な速度 × 重量級パワー
•直線突撃による“速度殺法”を最も得意とする
•1対1はもちろん、多対1でも圧倒
•馬とアーマードの連携は大陸一
•弱点は「持久戦」。出力を最大にすると光油消耗が激しい
________________________________________
専用武装:
■武器解説
呂布の専用光線槍。
刃先は“熱刃ねつじんモード”で紅蓮の温度に達し、
装甲・戦艦・岩壁を溶断しながら切り裂く。
■モード構造
1.《炎刃モード》
刃が赤熱し、装甲の一部を溶かしながら斬る。
2.《破城モード》
槍の両刃が展開し、城門や砲台を一撃で破壊する。
3.《光突モード》
光油を爆発的に加速して突撃する“赤い光線槍”。
速度が常識外れになり、呂布の切り札となる。
________________________________________
■基本情報
•史上最速の浮揚馬
•身体色:深紅
•浮揚高:5m
•出力:通常馬の4倍
•加速性能は大陸最強
•呂布以外は乗りこなせない“狂気の馬”
■特徴
•機体下部の「紅炎推進機関」により赤い残光を残す
•呂布の動きに合わせて瞬時に方向転換
•光油炉の限界に近い負荷が常にかかる
•暴れ馬だが、呂布だけには絶対服従
■赤兎の強み
•速度が呂布の攻撃範囲を広げる
•一撃離脱戦法では絶対的な強さ
•敵陣を縦断しながら殲滅する“空中戦車”
________________________________________
呂布専用アーマード《赤兎帝せきとてい》
________________________________________
《機体概要》
■クラス:超重近接戦闘アーマード(ハイパー・ブレイカー級)
■製造:董卓軍 特殊鍛冶部隊「長安紅炉」
■搭載炉:
________________________________________
《赤兎帝:デザイン解説》
■カラー
•基本色:灼熱の紅(深い赤)
•縁取り:黒鋼ライン
•目の発光:金色
■特徴
•脚部と腕部の筋肉構造を模した“獣型フレーム”
•肩アーマーに赤い角(装飾兼高感度センサー)
•背部ブースターは獣の鬣たてがみのように広がる
•熱冷却フィンが赤く輝き、常に蒸気を噴く
視覚だけで“獣の王者”を思わせるデザイン。
________________________________________
《機体スペック》
■出力
★★★☆☆☆☆☆☆☆(桁外れ)
公式非公開だが、呂布が全力で出すと光油炉が悲鳴を上げるレベル。
■装甲
◎:重戦艦並みの厚さ
・高熱・光線に強い
・ただし重量が凄まじく、扱えるのは呂布だけ
■機動力
◎(呂布の腕前 × 赤兎の速度)
本来は重装アーマードのため、性能上は鈍いはずだが、
呂布の身体能力が補って余りある。
■弱点
•出力が高すぎて「長時間戦闘」は不向き
•正確には、“呂布が強すぎて扱える人が他にいない”のが弱点
________________________________________
《赤兎帝:特殊機能》
1.《紅炎炉・解放》
出力200%解放モード。
機体全身が赤熱し、周囲の温度が急上昇する。
(この状態の呂布は、近づくだけで中型アーマードが溶ける)
________________________________________
2.《逆落さかおとし跳躍》
浮揚力を一時的に爆発させ、空中へ急上昇→急降下する技。
城門破りや軍陣突き崩しに使う。
________________________________________
3.《紅圏障壁こうけんしょうへき》
紅炎炉を回転させて発生する“灼熱バリア”。
光線攻撃を溶かし相殺する。
________________________________________
4.《斬撃補助システム:獄閃ごくせん》
方天戟が振られた軌跡に「熱線」を発生させる。
実質、斬撃範囲が3倍になる。
________________________________________
5.《赤兎連携:双走そうそう》
赤兎と赤兎帝が光油信号で完全同期。
呂布の操作と馬の動きが一致し、
“人馬一体の必殺突撃”を可能にする。
(これが虎牢関で三兄弟を吹き飛ばした真の力)
________________________________________
呂布 × 赤兎帝:必殺技一覧
◆奥義01《紅蓮裂空突ぐれんれっくうとつ》
呂布の代名詞。
赤兎帝が光油出力を限界突破させ、
赤兎と共に一直線に突撃する。
速度は
「人が視認できないレベル」。
命中した敵は粉砕される。
________________________________________
◆奥義02《獄炎旋槍ごくえんせんそう》
方天戟を回転させ、巨大な炎の渦を生み出す。
半径20メートル以内の敵をまとめて蒸発させる。
________________________________________
◆奥義03《赤兎乱舞せきとらんぶ》
赤兎の高速移動で残像をいくつも作り、
実体の呂布がどこにいるか分からなくなる。
(光油反重力を応用した“影走り”)
________________________________________
◆奥義04《閻魔・紅断えんま・こうだん》
方天戟に全出力を集中し、
一点突破の“最終破壊斬り”。
大型戦艦すら真っ二つにされる。
________________________________________
赤兎帝の図解テキストビジュアル
__________
/ 赤兎帝(正面) \
| ●───● 角センサー |
| \ / |
| □■□(金色の眼) |
| /││\ 肩装甲 |
| │ ■■ │胸部紅炎炉 |
| │ ■■ │ |
| │ ■■ │腕部強化装甲|
| \■■/ |
| ││ 脚部ブースタ|
\__________/
〈ものがたり〉
『アーマード三国志:桃園の誓い』
【序章 光油文明の黄昏】
後漢末期。
かつて光油文明の繁栄を象徴していた都市の上空に、
今は不穏な黄色い煙が渦巻いていた。
光油精油所が襲撃されるたびに、空気は焼けたような金属臭を帯び、
地中から立ち昇る熱気は、文明そのものが悲鳴をあげているように思えた。
大陸全土に敷設された 光電ネットワーク は、故障と破損で遅延が続き、
軍や市民は正確な情報が掴めなくなっていた。
戦は誰が始めたのかも分からぬまま無秩序に広がり、
まるで世界の心臓が弱っていくようだった。
そんな混乱の中、若き織物売りの青年―― 劉備玄徳 は、
光油灯が心許なく揺れる自宅の一室で、
古びたアーマードの胸部パーツを磨いていた。
彼のアーマード 仁鎧じんがい は、
すでに三世代前の旧式モデルで、
光油炉の出力も限界が近い。
フレームには無数の傷が走り、
光油供給パイプは何度も巻き直し修理された跡がある。
しかし、劉備はその古い鎧に手を当て、
かすかに笑った。
「君でも、人を守れるはずだ…そう信じたい。」
光油文明が揺らぎ、
人々が恐れと不安に飲まれようとも――
彼の胸には、まだ小さな希望が灯っていた。
________________________________________
【第1章 出会い ― 酒場の前に立つ巨影】
春の風が柔らかく吹き抜ける昼下がり。
劉備は光油運搬艇の護衛任務を終え、
村はずれにある酒場の前を通りかかった。
その瞬間、
ガァン!!
と金属が衝突する轟音が響いた。
店先の広場では、赤錆色のアーマードをまとった大男が、
巨大な木樽を片手だけで持ち上げていた。
太陽光を反射する赤い装甲。
肩には 雷轟甲らいごうこう のエンブレム。
そのフレームは“重量級”にもかかわらず、
関節部のスラスターはやけに軽やかに鳴っている。
劉備は思わず足を止めた。
(なんて馬鹿みたいにデカいんだ…。
いや、あの腕力は…人間の域じゃない。)
大男は周囲の客に怒鳴っていた。
「おい! この俺と力比べする奴はいねえのか!?
樽一つ持ち上げられねえ腑抜けばっかりか!」
劉備は気付けば声をかけていた。
「その腕力……あなたは武人ですか?」
大男は驚いたように振り返り、そして豪快に笑った。
「おう!俺は 張飛ちょうひ だ!
この辺りじゃ知られた大酒呑みで大豪傑よ!」
その笑顔は不思議と人懐っこく、
春風のような温かさがあった。
その瞬間――
青い光のラインが静かに近づいてきた。
歩いてきたのは、
深い青のアーマードの鞘を背負った長身の男。
無駄のない所作。
周囲の空気が変わるほどの気品。
銘が入った光線剣 青龍煌刃せいりゅうこうじん が、
わずかに青い軌跡を光らせている。
「張飛。騒ぎを起こすなと言っただろう。」
声は低く、静かだが芯が通っていた。
「へへっ、兄者。ちょっと腕が鈍らねえようにな!」
劉備はその二人のやり取りを見て、
胸の中に温かいものが湧き上がるのを感じていた。
(この二人…ただの酒場の客じゃない。
あの赤いアーマードの迫力、
そして青い剣の静かな殺気…
まるで動と静。
正反対なのに、不思議な調和がある。)
長身の男は、劉備に向けてわずかに頭を下げた。
「私は 関羽かんう と申す。
弟が無礼をした。」
「い、いえ!そんな…!」
劉備は慌てて手を振った。
そのとき――
村の上空に、甲高い警報音が鳴り響いた。
「光油精油所が襲われた!!
黄巾賊だ!!」
空気が、一瞬で緊迫に染まった。
劉備は迷わず走り出した。
張飛は楽しそうに笑い、関羽は一言だけ言った。
「行きましょう、劉備殿。」
劉備の胸に、
これまで感じたことのない鼓動が生まれていた。
(この人たちとなら…
もしかしたら、大きな何かを変えられるかもしれない。)
そして三人は、
光油の匂いが漂う森へ向かって駆け出していった。
________________________________________
第2章 黄巾賊の奇襲
――光油の森に響く咆哮――
森へ向かう途中、
地面がわずかに揺れ始めた。
ドドドドド……ッ。
地中を走る光油パイプが振動し、
蒼い光が脈打つように波紋を描く。
劉備は胸を押さえ、息を飲んだ。
「(嫌な振動だ……光油炉が乱れている。)」
関羽は周囲を見渡し、
青い光線剣の柄にそっと手をかけた。
「劉備殿、敵はかなりの数です。
煙の量からして、最低でも二十から三十機のアーマード部隊。」
張飛は満面の笑みを浮かべて、
赤い雷轟甲の腕部パワーゲージを叩いた。
「そんぐらいでビビるかよ!
光油の匂いが濃いぜ……戦の匂いだ!」
三人が森の縁に差し掛かったとき――
突然、黄色い光弾が横から飛び出した。
バシュウッ!!
地面が爆ぜ、木が焼け落ちる。
張飛が吠える。
「ちっ、もう来やがったか!」
開けた場所に飛び出すと、
そこには黄色いアーマード兵が群れをなしていた。
黄巾賊――
光油を奪い、粗悪なアーマードを量産する盗賊集団。
その装甲は安価な“黄鉄合金”。
武器も軽量化された光線銃ばかりだが――
数だけは圧倒的。
劉備は圧倒されながら、必死に戦術を組み立てた。
「関羽!正面突破は危険だ!
パイプライン側道から回り込んで――」
しかし張飛は叫びながら前へ飛び込んだ。
「うおおおおおうッ!!」
雷轟甲が唸り、赤い装甲が輝きを増す。
雷撃を帯びた拳が敵の胸を叩いた瞬間――
ズガンッ!!
衝撃波で周囲のアーマードがまとめて吹き飛ぶ。
劉備はその凄まじさに息を呑んだ。
(これが……張飛の力……!
人間が扱える装甲の領域じゃない……!)
関羽は冷静に、青龍煌刃を抜いた。
ヒュオン……
刃が青白く輝き、空気が震える。
「張飛、突っ込みすぎるな。
あなたの背は、この関羽が守る。」
「誰が守ってくれなんて言ったよ!」
二人が軽口を叩きながらも、
息は驚くほど合っていた。
________________________________________
光油精油所の悲鳴
森を抜けると、広場には巨大な光油タンクが林立していた。
その表面には蒼い光が脈打ち、
まるで生命体のように呼吸している。
劉備の額に汗が流れる。
「(もしここで爆発が起きれば……村は消し飛ぶ!!)」
関羽がタンクの後方を指さした。
「敵が分隊で動いています。
四機は爆薬を持っています。
狙いはタンクの基部……!」
劉備は叫んだ。
「張飛!あいつらを止めろ!!」
「任せとけえええぇぇ!!」
張飛の雷轟甲がタンクの間をすり抜けるように疾走し、
敵の爆薬兵へ一直線に突っ込んだ。
しかし――
敵の増援が横から現れ、張飛を包囲する。
「おらぁっ!邪魔だ!!」
張飛の拳が一体を粉砕するが、
四機同時の光線銃が雷轟甲の胸部を撃ち抜いた。
装甲が弾け、火花が散る。
「ぐっ……!」
劉備は咄嗟に飛び出した。
「張飛!!」
仁鎧の光油炉が悲鳴を上げる。
出力不足で足が重い。
それでも――
劉備は張飛の前に立った。
敵の光線銃が一斉に劉備へ向く。
(来る……!)
だがその瞬間、
青い光が劉備の前を横切った。
関羽の青龍煌刃――
ズバァァァンッ!!
4機の敵アーマードが、一度に斬り捨てられた。
関羽が静かに言う。
「劉備殿、張飛を信じるのは良い。
しかし…あなた自身を軽んじてはなりません。」
劉備は息を詰まらせた。
その言葉が、胸に深く刺さる。
________________________________________
精油所、最大の危機
しかし――
敵はまだ終わっていなかった。
タンク裏側。
光油の主配管に、
爆薬を仕掛けようとするアーマード三体。
「まずい!間に合わない!!」
関羽も張飛も遠い。
劉備は歯を食いしばり、
古い仁鎧のレバーを引いた。
「“緊急補助出力”…起動!」
ガガガガッ……!!
旧式仁鎧の光油炉が無理矢理加速し、
フレームが悲鳴を上げる。
(壊れてもいい……今だけ、動け!!)
劉備は土を蹴り、
タンク裏へ向けて疾走した。
敵がこちらに振り返る。
「来るなッ!」
三体の光線銃が火を噴く。
劉備は咄嗟に、
タンク脇の光油供給パイプを開けた。
プシューッ!!!
蒼い光の膜が噴き出し、
銃撃を受けて一瞬だけ光の盾となる。
「ず、ずるいぞ!?光油の膜を盾にするなんて!」
劉備は叫んだ。
「ずるくてもいい!
ここだけは……絶対に通さない!!」
仁鎧の腕を振りかざし、
敵に体当たりを叩き込む。
ドゴォォン!!
三体の敵アーマードが倒れ、
爆薬が地面に転がった。
劉備は息を切らしながら思う。
(性能が低くても……
工夫と覚悟があれば戦えるんだ…!)
________________________________________
森が静まり返る――勝利
張飛と関羽も合流し、
残った敵は総崩れとなって森へ逃げていった。
夕日が、光油タンクの蒼い光と混ざり、
精油所全体がゆらめく神秘のような色を放つ。
村人たちが三人に駆け寄る。
「助かった……!助かったよ!!」
「ありがとう!アーマードの英雄たちだ!!」
劉備は照れくさそうに首を振る。
「いえ、僕たちだけじゃありません。
みんなの協力があってこそ守れたんです。」
張飛が豪快に笑い、
関羽は静かに目を細めた。
しかし、劉備は遠くの空を見上げた。
黄巾賊の旗――
まだ煙の向こうにいくつも揺れている。
(これから先、もっと大きな戦が来る…。
でもこの二人となら……きっと乗り越えられる。)
劉備の胸に、
新たな決意が強く灯った。
________________________________________
第3章 桃園にて
――三つの魂が重なる夜――
精油所の戦いが終わり、
空には薄紫の夕焼けが広がっていた。
劉備・関羽・張飛の三人は、
村の裏手に広がる桃園へと歩を進めた。
風が吹き抜けるたび、
桃の花びらが柔らかく舞い、
蒼い光油灯の明かりに照らされて煌めく。
まるで天に続く花道のようだった。
張飛が後ろで豪快に笑った。
「おい劉備!今日は飲み直そうぜ!
うちの桃園で、たっぷりな!」
劉備は微笑んだ。
(この人は、本当に強くて優しい……
でも荒々しい表面の奥に、
誰よりも熱い心を持っている。)
関羽は静かに言った。
「張飛。その声量では桃の木が揺れてしまうぞ。」
「兄者、それ褒めてんのか!?
俺様の声量は風圧の一種みてぇなもんだ!」
二人のやり取りに、劉備は思わず笑った。
こんな穏やかな時間を、
自分が手に入れていいのだろうか――
そんな気持ちが胸に芽生える。
________________________________________
桃園――光油灯が揺らめく誓いの場所
桃園の中央には、
張飛が大事にしている光油灯が置かれていた。
蒼い灯が、花びらに反射して揺れる。
劉備は思わず息を呑んだ。
「……美しい…。
光油灯と桃花の光が混ざって、まるで星空みたいだ。」
張飛は鼻をこすった。
「だろ?
俺のじいちゃんの代から使ってる灯だ。
ここはよぉ、俺の大事な場所なんだ。」
関羽も静かに頷いた。
「張飛の家には、代々“光油火の儀”という伝統がある。
戦や旅に出る前に、灯を囲んで心を一つにする儀式だ。」
劉備は驚きつつも、胸が温かくなった。
(張飛にも、こんな静かな伝統があるのか…。
一見荒れて見える人ほど…
本当の価値を知っているんだ。)
________________________________________
酒と光がつないだ縁
張飛は大きな酒樽を抱え、
三人の前にドンと置いた。
「今夜は祝杯だ!
俺たち三人、光油精油所を守り抜いたんだ。
これで飲まなきゃ、男じゃねぇ!」
関羽はため息をつきつつも、
嬉しそうに盃を取った。
「……少しだけだぞ。」
劉備も盃を受け取る。
(こんな暖かい夜…初めてだ。
胸の奥が、ずっと何かを求めていた…。
この二人となら、何かが始まる気がする。)
桃の香りと光油灯の蒼い匂いが混ざり合い、
三人の影がゆっくり重なる。
そのとき、関羽が真剣な顔で口を開いた。
________________________________________
義の提案――静かに始まる革命
「劉備殿。
あなたの戦い方には、心を動かされました。」
劉備は驚いた表情で振り向いた。
「わ、私が…?」
関羽はまっすぐ見つめる。
「装甲が古く、出力も低い。
それでもあなたは、
誰よりも先に敵へ向かい、
誰よりも深く村人を思っていた。」
張飛も続いた。
「俺も感じたぜ!
あんたは力じゃねぇ。
“信じさせる力”があるんだ。」
劉備の心臓が大きく鳴った。
「……そんな、私はただ必死に――」
関羽は静かに首を振る。
「違います。
あなたには“義”がある。
そして乱世で最も必要なのは、それだ。」
張飛が盃を掲げた。
「なあ兄者。
俺たち、こいつと……義兄弟の契りを結ばねえか?」
劉備は息を呑んだ。
胸の奥が強く熱くなる。
________________________________________
桃園の誓い――三つの魂が交わる瞬間
張飛は桃の木の前に三つの盃を並べ、
光油灯を近くに置いた。
蒼い揺らぎが三人の顔を照らし、
桃花が舞い降りて盃に落ちる。
「生まれた日は違えども――
死すときは共に。」
関羽が続ける。
「我ら、義によって結ばれし兄弟となる。」
最後に、劉備が震える声で言った。
「民のために、正しき乱世をつくるために……
三人で力を合わせましょう。」
三人は盃を同時に掲げる。
蒼い光が盃を通し、
まるで三つの光油炉が共鳴するように輝きを放った。
その瞬間――
三人の運命が、ひとつに繋がった。
桃花が風に舞い、
光油灯の蒼い炎が優しく揺れる。
まるで天が祝福しているかのように。
関羽が微笑みながら言った。
「……これで我らは兄弟だ。」
張飛は大声で笑い、
劉備の肩を強く叩く。
「これからは三人で天下をひっくり返すぞ!」
劉備は涙をこらえながら、
静かに頷いた。
(ありがとう……
こんな夜が来るなんて、思ってもいなかった。)
光油灯の蒼い光の中、
三人の影は確かに一つへと重なっていた。
________________________________________
第4章 始まりの一歩
――義兄弟、初めての作戦会議――
桃園の誓いを結んだ夜。
三人が互いの盃を置いた後も、
光油灯の蒼い光は、静かに揺らめいていた。
風に混じって桃の香りが漂い、
遠くで虫の声が響く。
だが――
この静けさの裏で、
大陸は確実に“戦の気配”を増していた。
関羽が立ち上がり、
腰の青龍煌刃を一度だけ確かめるように撫でた。
「……さて。祝杯の後は、現実に戻らねばなりません。」
張飛が酒樽を抱えながら言う。
「うむ。誓いを結んだら、まずは何するんだ?」
関羽は落ち着いた声で答えた。
「作戦会議だ。」
張飛が目を瞬かせる。
「さ、作戦……?」
劉備が微笑む。
「これからは三人で戦うんだ。
いきなり突っ込んで勝てるほど、黄巾賊は甘くない。」
張飛は一拍置いて、頭をかいた。
「なるほどな……兄者、俺は突撃するしか能がねえと思われてるか?」
関羽は笑わずに、静かに告げた。
「事実だ。」
「てめぇ……!」
劉備が慌てて止めながらも、
どこか安心していた。
(この二人の軽口は、
戦場を越えてもきっと続いていくんだろうな……)
________________________________________
光油灯を囲む三人の影
関羽は桃園の地面に木枝で地図を描き始めた。
「まず、黄巾賊はこの村の光油精油所を狙う。
ここを落とされれば、周辺の光油供給網が止まり、
村々は一週間と持たない。」
劉備が頷き、
仁鎧の腕部ディスプレイを展開する。
古いホログラム投影装置だが、
村や森の地形データが浮かび上がる。
「このルートから侵入した場合、
パイプラインが複雑で動きづらい。
少数精鋭のこちらが有利だ。」
張飛が地図を覗き込む。
「じゃあ俺は、どこに突っ込めばいい?」
「お前はまず“突っ込まない”。」
「ええぇ!?」
劉備は苦笑しつつ説明した。
「張飛、君には“正面の牽制”をお願いしたい。
敵が最も多く集まる場所だ。
君の雷轟甲なら、敵の注意を全部引きつけられる。」
張飛の目がキラリと光る。
「それって、ある意味いちばん“突っ込んでる”だろ!」
「……まあ、否定はしないよ。」
関羽が続ける。
「私は、張飛が集めた敵の側面に回り込み、
青龍煌刃で機動力を削ぐ。
この剣は“斬るだけの武器”ではない。
光油炉を焦がす“封力斬り”が可能だ。」
青龍煌刃の細身の鞘が、
かすかに青い光を帯びている。
張飛がゴクリと喉を鳴らした。
「おい兄者。封力斬りって……あれだろ?
敵の光油炉を麻痺させる、例の怖ぇ技だろ?」
「必要とあらば、使う。」
張飛は背筋をゾクッと震わせたが、
すぐに嬉しそうな顔になった。
「よーし!
兄者の“斬り”と俺の“ぶっ飛ばし”で、
敵を挟み撃ちだな!」
劉備は微笑みつつも、
深い決意を込めて言った。
「最後に……僕が民の避難路を確保する。
仁鎧が旧式でも、守る戦いなら任せてほしい。」
関羽と張飛は一瞬だけ目を見合わせ、
そして同時に頷いた。
「劉備殿が言うなら、そうしましょう。」
「兄者と一緒なら、俺ぁどこでも行く!」
劉備の胸に熱が広がる。
(あぁ……
この二人となら、きっと何でも出来る…。)
________________________________________
そして、夜が明ける
議論が終わる頃には、
東の空がうっすらと明るくなっていた。
桃の木々が朝の光に照らされ、
花びらが金色に染まっていく。
張飛が両腕を伸ばし、大きな声で叫ぶ。
「よーし!行くか兄者たち!
今日が最初の本当の戦だ!!」
関羽は落ち着いた声で言った。
「劉備殿。今日からは、あなたが私たちの兄となる。
どうか……お導きを。」
劉備は深く頷いた。
「ありがとう。君たちがいてくれるなら、
どんな乱世だって怖くない。」
三人は光油灯の前に立ち、
同じ方向を見つめた。
その瞬間――
光油灯の蒼い光が朝日に照らされ、
三人の背に長い影を落とした。
その影は、
まるで三つの巨人が歩き出すかのようだった。
そして――
三兄弟は歩き出した。
乱世のただ中へ。
民を救うために。
未来を変えるために。
そして互いの義を守るために。
________________________________________
黄巾の乱 ― 光油精油所防衛戦 ―
第1章 迫りくる影
――光油精油所、危機の始まり――
春の終わりを告げる風が、平原一帯を優しく撫でていた。
だがその空気には、どこか焦げたような匂いが混ざっていた。
光油タンクから上がる蒼い蒸気。
地中深くを走るパイプが放つ低い唸り声。
そして、遠くかすかに響く爆音――。
劉備は、桃園から精油所へ続く小道を歩きながら、
胸の奥に小さなざわめきを覚えていた。
(なぜだろう……胸騒ぎがする。
世界が、何か大きな変化に向かっている気がする。)
関羽が横で、光電端末を耳に当てていた。
淡い青光がその顔を照らす。
「……劉備殿、嫌な気配がします。
光電ネットワークに、断続的な雑音……おそらく破壊活動が行われています。」
張飛は、雷轟甲の肩パーツを鳴らしながら笑った。
「雑音? 敵が近いって証拠だ。
だったらちょうどいい! 試し斬りと試し殴りだ!」
劉備は苦笑しつつも緊張を隠せない。
「張飛、油断は禁物だよ。
黄巾賊はただの盗賊じゃない。大陸を揺るがしている反乱軍だ。」
関羽が頷く。
「彼らは光油精油所を落とすことで、
周囲の村を一気に無力化しようとしている。
光油を奪われれば、防衛も生活も成り立たない。」
そのとき――
ドドドドド……!!
遠く東の丘から、
煙がもくもくと立ちのぼった。
見張り台の鐘が激しく鳴り響く。
「黄巾賊だ!!
東の森の奥から大量の敵影――
アーマード部隊が侵入!!」
村全体がざわめき始める。
張飛は拳を打ち鳴らし、
ずしん、と地面が震えるほどの勢いで叫んだ。
「来やがったか!
俺たち兄弟の初陣に、ちょうどいいじゃねぇか!!」
だが、劉備は周囲の風景を見て、胸を締めつけられた。
精油所まで続く一本道。
逃げ惑う村人たち。
母親に抱えられた幼子が涙を流し、
老人が杖をつきながら必死に走っている。
(この人たちが、僕たちの戦いを頼りにしている……
守らなければ……絶対に。)
劉備は深く息を吸い、二人に告げた。
「行こう。
……この村も、精油所も、絶対に守る。」
関羽は静かに頷き、青龍煌刃の鞘に手を置く。
張飛は笑みを浮かべ、雷轟甲の光油炉を起動させた。
青、赤、緑――
三つのアーマードの光が同時に輝き始める。
まるで、乱世に灯る三つの希望のように。
________________________________________
◆ 精油所の威容――生命線の心臓
三人が駆けつけると、
“平原の精油所”は巨大な影のように佇んでいた。
幾重にも積み上げられた光油タンク。
タンク同士をつなぐ太いパイプライン。
複雑に入り組んだ階段と足場。
全体が蒼い脈動に包まれ、
まるで巨大な生命体が呼吸しているようだ。
劉備は息を呑んだ。
(これを失えば……
この地帯の光油供給は、完全に止まってしまう。)
精油所長が駆け寄ってくる。
「劉備殿っ!
敵はすぐそこまで来ています!
我々の手では、どうにも……!」
劉備はしっかりと肩を掴んだ。
「ここは私たちが守る。
村の避難を最優先に。
地形図と人員は、関羽に伝えてください。」
所長は深く頷き、走り去った。
張飛は周囲を見回しながら唸る。
「すげえ場所だな…。
こんなでっけえタンクが爆発したら、
この村どころか……近くの森まで吹っ飛ぶんじゃねえか?」
関羽が低い声で答えた。
「……間違いなく、そうなります。
黄巾賊はそれを狙っている。」
劉備の背筋に寒気が走った。
(失敗すれば……取り返しがつかない。)
しかし、それでも――
胸の奥には熱い火が燃えていた。
________________________________________
◆ 迫る黄色い軍勢――“黄巾装甲隊”
森の中で、
金属音が反響し始めた。
ガシャアッ、ガシャアッ……!
木々の間から現れたのは、
黄色の粗悪なアーマードが十数機――
その後ろにもさらに数十機の影。
張飛が雷轟甲の拳を構える。
「おうおうおう……!
数は多いが、全部雑魚だな!」
関羽が冷静に言い放つ。
「雑魚でも数が集まれば脅威です。
それに彼らの狙いは“数で押して、爆薬を仕掛けること”。
ひとり漏らせば終わりです。」
劉備は強く頷いた。
「張飛、正面は任せる。
関羽、側面の防衛を頼む。
僕は……避難路と裏手の死角を守る!」
張飛は満面の笑みだ。
「兄者、任せとけ!
俺は前へ突っ込むのは得意だ!」
関羽は静謐な目で二人を見つめる。
「……行きましょう。
ここが、義を結んだ三兄弟の初陣です。」
三人は同時に左脚を後ろに引き、
右脚で大地を踏みしめた。
光油炉が同時に唸る――!
ゴウゥゥゥッ!!
青、赤、緑の光が地面を照らし、
三人は精油所の入り口に向かって駆け出した。
その先には――
乱世最初の“本当の試練”が待っていた。
________________________________________
第2章 光油精油所の防衛準備
――爆ぜれば大地が割れる――
劉備たちが精油所の敷地に足を踏み入れた瞬間、
蒼い光の波動が肌を撫でた。
巨大な光油タンクが六基。
その周囲を縫うように三重のパイプラインが走り、
光油炉の脈動に合わせて低い鼓動を響かせている。
ゴウン……ゴウン……
まるで精油所そのものが生き物のようだ。
関羽が眼前の光景を分析し、
眉間にうっすらと皺を寄せる。
「……危険だ。
この規模の精油所は、タンク一つに含む光油だけで
村一つを吹き飛ばせるだけのエネルギーがある。」
張飛がタンクを見上げて唸った。
「た、確かにデカい……!
うっかり爆薬なんかぶち込まれたら、ひとたまりもねぇな。」
劉備は視線をタンクの基部へ向けた。
パイプの接続部が点検用光灯で蒼く照らされ、
それがかえって危険信号のように感じられた。
(ここを守り切れるかどうかで、
何百、何千という人の命が決まる……
絶対に失敗できない。)
________________________________________
◆ 村人との連携――「義勇隊」の誕生
精油所長と数名の村人が駆け寄ってきた。
「劉備殿っ!
敵はすでに北側の森を抜けた模様!
こちらまであと数分で到達します!」
劉備は息を整え、指示を飛ばす。
「村人全員、避難ルート“西の丘道”へ!
荷車は奪われないよう、交互に警備をつけてください!」
村人たちは緊張で顔を強張らせながらも、
一斉に“はいっ!”と声を張り上げた。
その姿を見ながら、
劉備の胸に熱いものが宿る。
(村人が……僕の言葉で動いている。
守らねばならない理由が、ここにあるんだ。)
張飛は村の若者たちに向かって叫ぶ。
「戦える奴はついて来い!
槍や弓だけじゃ不安か?心配すんな!
俺と兄者が前で暴れてやる!!」
若者たちの顔に、
ほんの少し勇気が戻った。
関羽は精油所のパイプ配置を
手元の光電端末に記録しながら、冷静に言った。
「劉備殿。
精油所の南側は地形が緩やかで、敵が侵入しやすい。
そこに警備を置くべきです。」
「ありがとう、関羽。
張飛、南側と丘側の守りを村の者と一緒に任せられるか?」
張飛は大きく頷いた。
「任せな!」
________________________________________
◆ 精油所の危険構造――死角の発見
関羽はタンクの裏側を丹念に調べていた。
蒼い光油が走る透明パイプが、複雑に絡まり合っている。
劉備が近づく。
「何か気になるところでも?」
関羽は壁面を指でなぞった。
「この“第二光油タンク”の裏……
ここだけ、光油遮断板の厚みが他より薄いのです。」
劉備は息を呑んだ。
「つまり……爆薬を仕掛けられたら、一撃……?」
「はい。
ここが破壊されれば光油が高圧で噴き出し、
他のタンクへ連鎖的に爆発を引き起こします。」
張飛が後ろから覗き込み、難しい顔で言う。
「そんな罠みたいな場所、どうしてあるんだ?」
劉備は苦い顔をした。
「古い精油所では珍しくないんだ。
予算が削られて補強が遅れていたんだろう。」
皮肉にも、
乱世が始まる前から精油所は“脆さ”を抱えていた。
関羽は刀の柄を軽く握る。
「ここには、熟練の者を配置すべきです。
私が守ります。」
劉備は頷きつつも、心の中で思った。
(関羽……。
やはり彼は、どんな時でも人を守ることを第一に考えている。)
________________________________________
◆ 三兄弟、出撃準備――光油炉の起動
やがて、地面が震え始めた。
ズズ……ズゥゥゥン……
黄巾賊のアーマード部隊が、
ついに森の出口へ到達したのだ。
張飛は雷轟甲の胸部光油炉に力強く手を置き、
レバーを引いた。
「雷轟甲らいごうこう――起動!!」
ドウッ!!
赤い稲妻が走り、
装甲が外側へと闘気のように広がった。
関羽も青龍煌刃を抜き、
自身のアーマードの光炉をゆっくりと起動させる。
青い紋様が鎧表面に走り、
静かでありながら底知れぬ闘意が立ち昇る。
劉備は、古い仁鎧の光油炉に手を添えた。
「頼むよ……今日だけでいい。
君の力を貸してくれ。」
ガ……ガガガ……!!
と、旧式の唸り声が響く。
装甲の継ぎ目に蒼い光が宿り、
仁鎧はかすかに震えながらも立ち上がった。
張飛が叫んだ。
「兄者ァ!!敵が来たぞ!!」
関羽は淡々とした声で告げた。
「始まります。
私たち三兄弟の――最初の大戦が。」
劉備は深く息を吸い込み、
村と精油所、そして二人の兄弟を見つめた。
「行こう。
ここを守れるかどうかで、この村の未来が決まる。
必ず……僕たちが守り抜く!」
三人のアーマードが同時に踏み出した瞬間――
大地が震え、黄巾賊の軍勢が怒号をあげて迫りくる。
光油タンクの青光と、
黄色い敵軍の光線が交差する。
乱世の炎が、いま本格的に燃え上がる――。
________________________________________
第3章 第一次接触
――蒼光と黄炎がぶつかるとき――
森を抜けた瞬間、
空気が急にざわついた。
ドドドドド……ッ!!
地面を揺らすのは、
黄巾賊アーマード部隊の駆動音。
光油炉が黄色く脈動し、
粗悪な装甲が擦れあう音を立てて進軍してくる。
その数――三十。
しかも後方にはさらに十や二十は控えている気配。
張飛は舌なめずりをしながら吠えた。
「来やがったなあァ、この野郎ども……ッ!!」
しかし、劉備は唾を飲み込んだ。
足が思わず震える。
(これほどの数を……本当に止められるのか?)
関羽は静かに前へ出た。
「劉備殿。震えるのは恥ではありません。
大切なのは……足を止めないこと。」
青龍煌刃が青い光を帯び、
刀身が空気を震わせる。
「兄者。俺は正面から突っ込むぞ!!」
「張飛、必ず“声を上げ続けろ”。
敵の注意はすべてお前が引き付けるのだ。」
「任せろォ!!」
張飛の雷轟甲が咆哮した。
バチバチバチィィッ!!
赤い稲妻が走り、拳部スラスターが火花を散らす。
そして――
張飛は一番槍のように敵陣へ飛び込んだ。
________________________________________
◆ 張飛、単騎突撃! 雷轟甲の咆哮
「うりゃあああ!!!」
張飛が右拳を振りかざすと同時に、
雷轟甲の拳ユニットが過負荷モードに切り替わった。
・拳内部の磁気制御輪
・圧縮光油コイル
・瞬間ブースト噴射口
それらが一斉に動き、
拳はまるで彗星のように光を引いた。
ドゴォォォンッ!!
黄巾アーマード三体が一撃で吹き飛ぶ。
粗悪な装甲が砕け散り、部品が宙を舞う。
敵兵が叫んだ。
「な、なんだあの化け物はッ!?」
張飛は大笑いしながら追撃した。
「化け物? 褒め言葉だ!!」
敵の集中砲火が張飛に降り注ぐ。
黄色い光弾が雷轟甲の装甲に弾ける。
キィィィィンッ!!
雷轟甲の“雷撃膜装甲”が火花を散らし、
ダメージをほとんど通さない。
(これが……重装甲特化“雷轟甲”の真価か……!)
劉備は惚れ惚れしていた。
しかしその背後で、
敵は第二波の布陣を取っている。
関羽が短く告げた。
「……張飛、半歩下がれ。
ここからは私の役目です。」
張飛は笑いながら後退した。
________________________________________
◆ 関羽、青龍煌刃の一閃
関羽のアーマードが
静かに一歩踏み込む。
その動作はあまりに滑らかで、
まるで“重さがない”かのようだった。
敵兵が叫ぶ。
「前へ出ろ!数で押せば――」
その言葉が終わるより早く。
シィィィィン……!
青い光が弧を描いた。
次の瞬間、
敵アーマード三体の光油炉が一斉に沈黙する。
ズズンッ……!!
「な……光油炉が止まった……!?
剣を当てただけで……!?」
関羽は穏やかな声で告げる。
「青龍煌刃は“斬るための刃”ではない。
“封ずる刃”なのです。」
青い刀身の微細な紋様――
それは光油の脈動を乱す特殊加工。
一度でも炉心付近へ刃が触れれば、
たちまち敵機は機能不全に陥る。
張飛は感嘆の声をあげる。
「兄者の剣はやっぱりすげえや!!
斬ってねえのに、敵が勝手に倒れやがる!」
関羽は淡く笑った。
「張飛の突撃があるからこそ、私の刃が届くのです。」
二人の連携は、
まるで長年研ぎ澄まされた舞のようだった。
________________________________________
◆ 劉備、旧式仁鎧での死闘
しかし戦場の片隅――
劉備は苦戦していた。
「くっ……!」
仁鎧は旧式のため、
出力が低く、機動力も乏しい。
黄巾アーマード二体に追われ、
右腕の盾ユニットがきしむ。
ギギギギ……!!
敵の光線銃が胸部へ迫る。
(まずい――!!)
とっさに、
劉備は仁鎧の“補助膜展開”を起動した。
パシュウウッ!!
腕部の光油管から蒼い膜が広がり、
光線が膜に吸収されて霧散する。
敵兵が驚いた声を上げた。
「なんだその膜!?旧式機の癖に!!」
劉備は汗を流しながら叫ぶ。
「旧式でも……出来ることはある!!」
左脚スラスターを下方向へ噴射し、
瞬間的に上へ跳ぶ。
「えええいっ!!」
仁鎧の肘打ちが敵機の顔面へ。
ガッ!!
黄巾アーマードが仰向けに倒れる。
(張飛や関羽のようには戦えなくても……
僕には僕の戦い方がある!!)
劉備の心に、
小さな火が確かに燃えていた。
________________________________________
◆ そして――第一次接触、突破
張飛の猛突撃。
関羽の精密な封力斬り。
劉備の機転と工夫。
三方向から戦線が圧縮され、
黄巾賊の先鋒隊は総崩れとなった。
敵兵が叫ぶ。
「退け!退けぇ!!
奴ら三人、強すぎる!!」
張飛が叫ぶ。
「逃げんじゃねぇえ!!!」
関羽が低く告げる。
「深追いは無用です。
敵の本隊はまだ到着していません。」
劉備は息を荒くしながら、
二人のもとへ駆け寄った。
「張飛、関羽……!
ありがとう!
二人がいてくれるから、僕は戦える!」
張飛が豪快に笑う。
「何言ってやがる!
兄者が一番頑張ってんだろ!」
関羽は静かに頷く。
「劉備殿の“守る意思”が、
我ら三兄弟の力を繋げるのです。」
三つのアーマードが、
蒼・赤・青の光を放ちながら並び立つ。
初めての戦い――
三兄弟は確かに“勝利”を掴んだ。
だが。
遠くの森から、
まだ巨大な影がうごめいていた。
本隊が来る。
これからが本当の地獄だ。
劉備は唇を噛み、胸の奥に火を灯した。
(ここからだ……
ここからが、僕たちの本当の戦いなんだ――!)
________________________________________
第4章 本隊来襲
――光油タンク前線、地獄の開幕――
第一次接触で先鋒隊を撃退したものの、
三兄弟の胸には奇妙な“静寂”が訪れていた。
森が……静かすぎる。
張飛が雷轟甲の拳を握りしめながら言う。
「おかしいな……敵、引きすぎじゃねぇか?」
劉備も首をかしげる。
(これだけあっさり退くなんて……
狙いがある……?)
関羽はじっと森の奥を見据えていた。
風に混ざって、
低く、重い振動が伝わってくる。
ズ……ズズ……ズズズ……
「……来ます。
今度のは、“質”が違います。」
その瞬間――
森が、揺れた。
いや、揺らされた。
________________________________________
◆ 巨影、来る――黄巾賊“大型アーマード”
茂みがはじけ飛び、
木々がなぎ倒される。
姿を現したのは――
高さ4メートルを超える大型アーマード。
粗悪な黄色い装甲をまとい、
肩には“爆裂筒”と呼ばれる
巨大な多発式投射装置が取り付けられている。
腕部には、
光油炉冷却装置を無理やり接続した
過負荷ハンマー。
兵士たちが口々に叫ぶ。
「な、なんだあれは……!?」
「まるで、動く要塞だ……!」
「精油所を一撃で吹き飛ばす気か!?」
張飛でさえ息を飲んだ。
「おいおい……あんなもん、反則だろ……!」
関羽が冷静に分析する。
「おそらく黄巾賊の“武力隊”。
略奪した精油所の部品で造った改造機でしょう。
出力は高いが……動作は粗い。
弱点を突けば倒せます。」
劉備が素早く尋ねた。
「弱点はどこ!?」
「背部の過熱排出口。
あそこを叩けば一撃で停止します。」
張飛がニヤリと笑った。
「よっし、背中だな!任せろ!!
後ろに回り込んで――」
関羽が制止する。
「張飛。
敵は“正面突破するお前”を警戒している。
必ずお前を狙ってくる。」
張飛は一瞬黙り――
すぐまた豪快な笑み。
「ならそれでいい!俺ァ囮でも、上等だ!!」
劉備は胸が熱くなった。
(張飛……
どんな危険にも自分が飛び込むんだな……)
________________________________________
◆ 本隊の布陣 ― 包囲陣、狙撃手、爆薬兵
大型アーマードの後方、
森の影から次々に敵が現れる。
◼ 中型アーマード部隊(20機)
◼ 爆薬兵(8名:小型爆薬を携行)
◼ 光線銃狙撃手(6名:高精度ライフル搭載)
◼ 槍型アーマード(近接特化6機)
◼ そして指揮官らしき男
狙撃手のライフルスコープが光油タンクへ向けられる。
劉備は叫んだ。
「タンクを狙ってる!!
絶対に撃たせるな!!」
張飛が前に出る。
「俺が正面だッ!兄者、左右からいけ!!」
関羽が冷静に告げる。
「了解。
劉備殿、裏手の爆薬兵に気をつけてください。
あなたが守らねば、全てが終わります。」
劉備は深く頷いた。
(僕は……仁鎧は……守るための鎧だ!)
________________________________________
◆ 激突 ― 火花が空に刺さる
張飛が吠えながら突っ込む。
雷轟甲のブースターが赤く閃き、
地面を砕く勢いで突進。
大型アーマードが、
過負荷ハンマーを振り下ろした!
ズガアアアアアアアア!!!
地面が陥没し、
石と土が吹き飛ぶ。
張飛はギリギリで横へ跳ぶ。
「やべぇ……ッ!!
ありゃ当たったら死ぬ!!」
関羽は狙撃手へ走り出し、
青い残光だけを残して姿を消す。
狙撃手たちが叫ぶ。
「動きが……速すぎる!!」
「捉えられねえ!!」
次の瞬間、
青龍煌刃が閃いた。
シィィィン!
シィィィン!
狙撃手たちの銃が次々に機能停止し、
光油供給が断たれて沈黙する。
敵兵が震える。
「ば、化け物だ……
あの青いの……何者だ……!」
劉備は裏手へ急ぐ。
そこには、
タンク基部に爆薬を仕掛けようとする
八名の敵兵がいた。
「やめろ!!」
仁鎧の光油補助膜を展開し、
光線弾を受け流しながら突撃する。
バチィィッ!!
膜がひび割れるが、
劉備は歯を食いしばり続ける。
(壊れても……今だけ……!
耐えてくれ、仁鎧!!)
敵兵が叫ぶ。
「なんだあの古い鎧は!?
くそっ、しぶとい!!」
劉備は涙目になりながら叫ぶ。
「古くても……!!
守る力は……誰にも負けない!!」
背後で張飛の怒号が響く。
「兄者ァァァァァ!!
背中空けたぞぉ!!!」
関羽の声。
「劉備殿、爆薬兵は任せました!!
張飛の援護へ回ります!!」
三方向で、
三兄弟それぞれの戦いが同時に繰り広げられていた。
________________________________________
◆ そして――大型アーマードの“真の狙い”
爆薬兵を倒した劉備が顔を上げた瞬間――
タンク上部で、巨大な影が動いた。
大型アーマードが、
肩の“爆裂筒”をタンクへ向けていた。
(――しまった!!
爆薬じゃない、爆裂筒そのものがタンクを狙っている!!)
敵指揮官が叫ぶ。
「撃てえええええ!!!
光油タンクを吹き飛ばせ!!!」
張飛が叫ぶ。
「うわぁあああああ!!!!
やめろおぉぉぉぉぉ!!!!」
関羽が走る。
速すぎる。
地面の影が引き伸びる。
しかし――
間に合わない。
大型アーマードが
爆裂筒を最大出力で起動した。
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
劉備の全身から血の気が引いた。
(ダメだ……
あれが撃たれたら……
すべてが終わる!!)
精油所が揺れ、
光油タンクの蒼い光が強烈に脈動する。
空気が、張り裂けるようだった。
そして――撃たれる。
――その時。
________________________________________
第5章 瀬戸際の逆転
――光油炉、共鳴す――
空気が震え、
光油タンクの表面が蒼白く光を跳ね返す。
大型アーマードの“爆裂筒”が、
完全にタンクへ照準されていた。
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
その音は、大地の悲鳴だった。
劉備は叫ぶ。
「だめだ……撃たれたら……全部終わる!!」
関羽は全速力で駆ける。
青い残光が地面に帯を描き、速度は人の域を超えていた。
だが――
爆裂筒の装填はすでに完了している。
張飛が怒号をあげる。
「やめろおおおおおおっ!!!!」
しかし、
大型アーマードは嘲笑うかのように砲身を上げた。
黄巾賊指揮官は勝利を確信したように叫んだ。
「発射ぁぁぁぁぁぁ!!!」
________________________________________
◆ 爆裂弾、光を引いて放たれる
ドガアアアアアアアアアアア!!!!
爆裂筒から生まれた“光油燃焼弾”が、
黄色い炎の尾を引きながら空へと放たれた。
その速度、
その熱量――
光油タンクを貫けば、一帯は蒼い地獄と化す。
劉備の全身が凍りついた。
(間に合わない……!
何をしても……もう間に合わない……!)
彼は叫びながら走り出した。
「お願いだ……!動いてくれ仁鎧!!
僕に……僕に力を貸してくれぇぇぇぇ!!」
古びた仁鎧が軋み、
光油炉が悲鳴を上げる。
関羽も追う。
張飛も飛ぶ。
だが、どちらも距離が遠い。
爆裂弾が空を裂き、
タンクへ一直線に落下していく。
________________________________________
◆ その瞬間――蒼い光。仁鎧が“覚醒”する
劉備の仁鎧は、
通常ではあり得ない閃光を放った。
バチィィィィィィ!!!
劉備が叫ぶ。
「なんだ……この光……!?」
関羽が驚愕の声を漏らす。
「……まさか……!
仁鎧の“緊急共鳴炉”が……発動している……!」
張飛が叫ぶ。
「兄者!そんな機能、聞いてないぞ!!!」
関羽はすぐに理解した。
「旧式仁鎧は、本来“護衛専用”。
守るためのアーマード……
極限状況では、周囲の光油パイプと“共鳴”し、
一時的に出力を跳ね上げる!」
劉備の周囲に、
精油所のパイプラインを走る蒼光が寄り集まり――
仁鎧の胸部へと吸い込まれていく。
ゴウッ……ゴウウウウウウッッ!!
(これが……仁鎧の……力……!?)
張飛が吠える。
「兄者ァァァ!!
そのまま飛べぇぇぇ!!」
劉備は地面を蹴った。
仁鎧が――
奇跡のような跳躍を見せた。
________________________________________
◆ “光油跳躍”――人間の限界を超えた飛翔
「うおおおおおおおおおっ!!!!!」
仁鎧のブースターから蒼い光尾が伸び、
劉備の身体はまるで流星のように弧を描く。
その軌道は、
爆裂弾の着弾点へと――
真っ直ぐ向かっていた。
関羽は目を見開いた。
「劉備殿……!
あなたは……とんでもない決断を……!!」
張飛が叫ぶ。
「兄者!!死ぬ気かあああ!!」
劉備は叫んだ。
「死なせてなるものかぁぁぁ!!
ここは……僕たちの村だ!!
ここだけは……絶対に守る!!!!!」
仁鎧は、爆裂弾の直上へ飛び込んだ。
________________________________________
◆ 衝撃――蒼炎が空で爆ぜる
カァァァァァァァンッ!!!!
蒼い膜を全開で展開し、
仁鎧は自らの身体で爆裂弾を受け止めた。
爆風が空に咲き乱れ、
蒼と黄の光が衝突する。
炎が劉備を包む。
装甲がきしむ。
パーツが弾け飛ぶ。
張飛が悲鳴を上げた。
「兄者ァァァァァ!!!!!!」
関羽は歯を食いしばった。
「劉備殿……どうか、耐えてくれ……!!」
だが、空から落ちてきた影は――
仁鎧が……まだ立っていた。
胸部装甲が半壊し、
光油炉がむき出しになっている。
だが――
劉備は、生きている。
震える声で言った。
「まだだ……!
守った……守れたんだ……!」
張飛が駆け寄り、劉備を抱えた。
「兄者……すげぇよ……!!
とんでもねぇよ兄者……!!」
関羽は深く息を吐いた。
「劉備殿……。
あなたの“義”こそ……
三兄弟の光です。」
________________________________________
◆ そして――三兄弟“初の合体戦術”が生まれる
大型アーマードが再び咆哮し、
第二射を準備しようとした。
関羽が叫ぶ。
「張飛!
今なら兄者の“共鳴光”が私とお前にも届く!!
二人で兄者の光油波を利用し――
いっきに敵の背へ回り込める!!」
張飛の目が輝く。
「兄者の光……俺たちの力になるってのか!!?」
「そうだ!!
我ら三兄弟の“共鳴陣”!!」
劉備は弱く頷いた。
「二人とも……行って……
あれを倒して……!
僕の代わりに……!!」
張飛が叫んだ。
「兄者の命令なら命懸けでやるぜ!!」
関羽が青龍煌刃を構えた。
「張飛。
行きます。」
「おうよ!!」
二人は同時に跳んだ。
劉備の仁鎧から放たれていた
“共鳴光油波”に乗り――
蒼と赤の残光が交差する。
大型アーマードの背部へ向け、
二つの閃光が一直線に走る。
________________________________________
第6章 三兄弟奥義
破裂背斬陣はれつはいざんじん
――巨影を断て――
蒼い光油共鳴波をまとった関羽と張飛は、
矢のような速度で大型アーマードの背後へ迫っていた。
背部には、
熱を逃がすための円筒状の排出口――
ここが唯一の“急所”。
劉備が命懸けで作ったこの瞬間を、
二人は絶対に無駄にはしない。
張飛が吠える。
「兄者ァァ!!
行くぜ関羽!!
“破裂”の一撃だ!!!」
関羽が静かに応じた。
「うむ……
ここで倒す。
兄者の命を……守るために。」
大型アーマードが振り向く。
巨大な過負荷ハンマーが再び持ち上がる。
地響きとともに敵が咆哮する。
「ギィィィアアアアアアア!!」
張飛は恐れず突っ込んだ。
雷轟甲の拳ユニットが赤い閃光を発する。
バチィィィィィ!!
スラスターが全開となり、
拳の軌道が空気を裂いた。
関羽はその横で青龍煌刃を構える。
ヒュウ……ン
静かに――しかし、致命的な殺意を放ちながら。
________________________________________
◆ 第一撃:張飛 “雷轟裂拳”
張飛が叫ぶ。
「うおおおおおおおっ!!
雷轟裂拳らいごうれっけんーーーーッ!!!!」
ドゴォォォォンッッ!!
張飛の拳が大型アーマードの背面排出口に叩き込まれた。
排出口内部の冷却フィンが破壊され、
光油炉の熱が逆流する。
敵機が呻き声をあげる。
「ギギギギィィィアア!!」
装甲が膨張し、
黄色い光が漏れ始めた。
関羽が低く呟く。
「……張飛、よくやった。
ここからは私が“封じる”。」
________________________________________
◆ 第二撃:関羽 “封力逆斬”
関羽は大きく後ろ足を踏み込む。
青龍煌刃の刀身が蒼白く輝き、
その紋様が脈動する。
「青龍――
封力逆斬ふうりょくぎゃくざん!!」
シィィィィィィィンッ!!
刃が背部排出口へ滑り込み、
敵機の光油脈動の方向を“逆流”させるように切り裂いた。
大型アーマードが悲鳴をあげ、
光油炉が狂ったように唸り始める。
関羽の声が戦場に響いた。
「これで……動けまい。」
張飛が吠える。
「兄者のために……ぶっ倒れろォ!!」
大型アーマードがよろけ、
膝を落とした。
だが――
まだ、倒れない。
巨大な影が、
最後の力で過負荷ハンマーを持ち上げた。
狙いは――劉備。
地面に倒れ込んでいる劉備へ、
ハンマーが殺到する。
________________________________________
◆ 第三撃:劉備の“最後の力”
劉備は壊れた仁鎧の中で、
目だけを見開いていた。
(動かない……身体が……!
でも……守らなきゃ……!
僕は……この村を……!
二人を……!)
仁鎧の炉が最後の一滴を燃焼させる。
胸部の残骸から、
蒼い光が再び微かに灯った。
劉備は、
震える声で叫んだ。
「張飛……関羽……
頼む……!!
僕の……“義”を……繋いでくれぇぇぇぇぇ!!!」
その光が、
再び二人へ“共鳴”した。
張飛の雷轟甲に赤い稲妻。
関羽の鎧に青白い脈動。
二人の動きが、
一瞬だけ常識を超えた。
関羽が叫ぶ。
「張飛――
今だ!!!!」
張飛が咆哮する。
「うおおおおおおおおおっ!!!!
三兄弟奥義!!
破裂背斬陣ッ!!!!」
________________________________________
◆ 最終撃:破裂背斬陣はれつはいざんじん
張飛が大型アーマードの脚を押さえ込み、
関羽が刀を背部の中枢へ深々と突き立てる。
青龍煌刃の光油封力が回路を逆流し、
敵の光油炉が暴走。
「ギギギギィィィィィィ……アアアアアアアアア!!!」
蒼と赤の光の柱が立ち上る。
次の瞬間――
敵大型アーマードは爆風を上げて崩れ落ちた。
ズガァァァァァァァァン!!!!
炎と蒼光が舞い散り、
金属の残骸が空へ飛び散る。
劉備、関羽、張飛――
三人の影がその光の中に立っていた。
張飛は息を荒くしながら笑う。
「やった……ぜ……!!
兄者……見たかよ……!」
関羽も静かに頷いた。
「劉備殿。
あなたの“義”が、勝利を引き寄せました。」
劉備は震える身体で笑った。
「二人が……
二人がいてくれたから……
僕も……戦えたんだ……。」
三兄弟の視線が交差する。
その瞬間――
彼らは確かに“運命共同体”となった。
________________________________________
第7章 勝利のあとで
――義兄弟の未来へ――
大型アーマードの残骸が蒼い火花を散らしながら倒れ、
森から吹く風が戦場の煙を押し流していった。
静かだった。
ついさっきまで、
爆裂音と叫びが飛び交っていた場所とは思えないほどに。
劉備は半壊した仁鎧の膝をつき、
荒く息を吐いた。
胸部の装甲は砕け、
内部の光油炉はむき出し。
管のいくつかは千切れ、蒼い光油が微量に漏れている。
だが――
まだ、生きている。
関羽が歩み寄り、
そっと劉備の肩に手を置いた。
「劉備殿……無事で何よりです。」
劉備は弱く微笑む。
「関羽……張飛……
二人がいてくれたから、僕は……立っていられるよ。」
張飛が大声を上げながら駆け寄ってくる。
「兄者ァァァ!!
よくぞ無事で……!
てかよく生きてたなほんとに!!」
涙目で抱きつこうとする張飛を、
劉備は笑いながらかわした。
「抱きつかれたら……仁鎧、完全に壊れる……!」
張飛は鼻をすすり、
赤い拳をポンと叩いた。
「兄者……すげぇよ。
あんなデカブツに真正面で突っ込んで……
爆撃まで受け止めちまうなんてよ……!」
劉備は首を振る。
「違うよ。
あれは……仁鎧が……守ってくれたんだ。
僕はただ、“守りたい”って思っただけだよ。」
関羽は深く頷いた。
「その“守る心”こそ、
我ら三兄弟の力の核となるでしょう。」
________________________________________
◆ 村人たちの歓声 ― 英雄誕生
そのとき――
避難していた村人たちが駆け寄ってきた。
「劉備殿……!関羽殿!張飛殿!!」
「精油所が……タンクが……全部無事だ!」
「本当に……本当に救っていただいたんですね……!」
老人が震える手で劉備の手を握る。
「ありがとう……ありがとう……!
わしらの命、そのまま未来を……
あなた方が救ったんじゃ……!」
子どもが目を輝かせて叫ぶ。
「三兄弟が来てから、村が助かったんだよ!!」
劉備は胸の奥がじんと熱くなった。
(こんなにも……人の言葉が……
重くて……あたたかいなんて……。)
張飛は照れくさそうに後頭部をかきながら叫ぶ。
「お、おう!
泣くなよ爺さん!
俺らはやる時はやる兄弟なんだ!!」
関羽は微笑み、劉備に視線を向けた。
「……劉備殿。
あなたの判断が、この村の未来を守ったのです。」
劉備は、言葉を返せなかった。
ただ胸の奥で、
“何かが生まれた”のを感じていた。
________________________________________
◆ 精油所長からの礼 ― 新たな使命
精油所長が深く頭を下げる。
「三人とも……本当に、ありがとうございます。
おかげで、この村だけでなく……
この地帯の光油供給全体が守られました。」
関羽が尋ねる。
「黄巾賊は、また来ると思われますか?」
所長は顔を上げ、
緊張した声で答えた。
「ええ……確実に。
近頃、黄巾賊は“光油源”を奪う動きを強めています。
あなた方のような武人が、
今、大陸中で必要とされております。」
劉備の瞳が揺れる。
(必要とされる……?
僕たちが……?)
張飛は胸を張って言った。
「任せとけってんだ!
兄者の義と、兄者の心、
俺たちの拳と刃で……乱世をひっくり返してやる!!」
関羽は静かに補足する。
「すでに三つの村で黄巾賊の襲撃があったという噂。
次は別の地にも向かう必要があるでしょう。」
所長が劉備に向き直った。
「どうか……どうかこの地から出ても、
弱き民のために戦ってください。
あなたたちは、乱世の希望です。」
劉備は深く息を吸い込み、
はっきりと答えた。
「もちろんです。
僕たち三兄弟は……
必ず、民のために戦います。」
張飛が笑う。
「兄者がそう言うなら、俺もついてくぜ!」
関羽が頷く。
「当然です。
我らは義兄弟。
民を守るために結ばれた、唯一の宿命です。」
________________________________________
◆ 絆が深まる夜 ― “乱世の旅立ち”の前に
夜。
精油所の裏手にある小さな丘に、
三人は座っていた。
遠くで村人たちの歓声、
焚き火の音が聞こえる。
劉備がぽつりと言う。
「僕は……今日、怖かった。
本当に……死ぬかと思った。」
張飛は大声で笑う。
「そりゃ俺だって怖ぇよ!!
でも兄者は飛び込んだ!!
あんな度胸、俺でも震えるぜ!!」
関羽は穏やかに告げる。
「恐れを知らぬものは無謀。
恐れを抱きつつ前へ踏み出せる者こそ、真の勇です。」
劉備は微笑んだ。
「ありがとう。
二人がいてくれるなら……
きっと、どこへでも行ける。」
張飛が拳を突き上げた。
「じゃあ決まりだ!
明日俺たちは村を出て――
大陸に散った黄巾賊をぶっ倒しに行く!!」
関羽が静かに目を閉じる。
「乱世は、今まさに広がっている。
我ら三兄弟の旅は……これから始まるのです。」
劉備は夜空を見上げた。
蒼い光油灯の光が、
まるで星のようにかすかに揺れる。
(この乱世に……僕たちの力はどこまで届くのか……
でもきっと、変えられる。
二人となら……変えられる。)
そっと手を伸ばした。
関羽と張飛が、その手に触れる。
三人の影が重なる。
これが、
後に天下を震わせる“義兄弟”の、
最初の夜だった。
________________________________________
黄巾の乱 ― 本陣攻略戦
第1章 集結する諸勢力
――乱世の大地が唸り始める――
光油精油所を守り切った三兄弟は、
翌朝、まだ薄暗い村の広場に立っていた。
村人たちが見送る中、
劉備、関羽、張飛は馬にまたがる。
張飛が大あくびしながら言う。
「さて兄者……
次はどこへ行くんだ?
どうせ黄巾賊の巣をブチ壊しにいくんだろ?」
劉備は頷いた。
「ああ。
昨日倒したあの大型アーマード……
あれは“武力隊”の一部隊にすぎない。
黄巾賊の本隊は、もっと南――
曲陽きょくようの荒城 に陣取っているらしい。」
関羽が静かに補足する。
「偵察によれば、そこには
・大型アーマード10数機
・中型アーマード百以上
・光油弓隊
・そして“将軍級”が3名
と聞きます。」
張飛が鼻息荒く叫んだ。
「大型が10!?
そんな化け物ども、まとめてぶっ潰してやる!!」
劉備は苦笑しつつも、胸の奥に緊張を覚えていた。
(昨日の戦いとは……
比べものにならない規模だ。)
関羽が青龍煌刃を軽く抜き、
朝日にきらめく刀身を見つめる。
「ただ――
我ら三人だけでは戦力が足りません。
どこかで仲間を増やさねば。」
劉備は頷いた。
「そうだ。
僕たちは……誰かと力を合わせなければならない。」
その時。
村の北側の土煙が舞った。
馬の蹄の音が近づく。
数十名の騎兵。
先頭に立つのは――
覇気に満ちた少年武将。
張飛が驚いた声を上げた。
「なんだぁ!?
誰だあいつ!?
やたら強そうな顔してるぞ!」
劉備は目を細める。
(どこかで……見たような……
いや、歴史書にあった名前か……?)
その少年武将は馬を止め、
鋭い眼光で三兄弟を見渡した。
「お前たちが、
昨日、光油精油所を守ったという
“義兄弟”か?」
関羽が静かに応じる。
「名乗る前に、あなたは……?」
少年武将は口元をわずかに歪めて言った。
「俺の名は――
曹操そうそう・孟徳。
黄巾賊を討つためにここへ来た。」
三兄弟の背筋が同時に震えた。
未来の“魏の王”となる男が、
乱世の幕開けで姿を現したのだ。
曹操は続けた。
「聞けば、お前たち三人は
昨日大型アーマードを倒したという。
ならばちょうどいい。
俺の軍勢とともに――
黄巾本陣を叩かないか?」
張飛が興奮して叫ぶ。
「おおお!?
協力してくれるってのか!!?」
曹操は冷たい笑みを浮かべた。
「いや。
“利用し合う”だけだ。」
劉備は小さく息を呑む。
(この男……
若いのに、もう“覇王の気”を持っている……。)
曹操の背後で、
改造された黒鋼アーマード部隊が整列していた。
光油炉から立ち昇る黒の蒸気。
鋭利な外装。
完全に“軍用”の設計思想だ。
劉備は覚悟を固めた。
「曹操殿……
僕たちも黄巾賊を倒したいと思っています。
ただし――
民を守る戦いをするなら……
ぜひ力を合わせたい。」
曹操はわずかに目を細めた。
「……面白い。
思ったより軟弱ではないようだ。」
張飛が横から叫ぶ。
「兄者は誰より強ぇんだぞ!!
昨日なんて命がけで――」
関羽が黙らせる。
「張飛。口を閉じろ。」
曹操は笑った。
「気迫だけはあるようだな。
よし、決めた。
これから三日後、
南の曲陽荒城で黄巾本隊を叩く。
お前たちも来い。」
劉備は深く頷いた。
「必ず。」
曹操は馬首を巡らせ、
騎兵隊を率いて風のように去っていった。
土煙が消えたあと、
張飛がぼそっと呟く。
「兄者……
あいつ、なんか怖くねぇか……?」
劉備は空を見上げた。
「うん……
だけど、頼もしい。」
関羽は刀を納めながら言った。
「さて……
我らも準備を始めましょう。
曲陽荒城の戦いは、
昨日とは比べものにならぬ地獄と化します。」
劉備は心の中で静かに誓った。
(いよいよ大規模戦だ……
二人を、仲間を……そして民を。
僕が――守り抜く。)
そして三兄弟は南へ向け歩き出した。
乱世の炎が、
彼らを待っていた。
________________________________________
第2章 曲陽荒城へ
――黄巾“本隊”の正体――
三兄弟が村を出て三日。
南方の平野を進む彼らの視界に、
巨大な荒城――曲陽きょくようが見え始めていた。
張飛が唸る。
「おい兄者……
あれが今日の“戦場”か?」
劉備は馬上から城を見つめた。
(ひと目でわかる……
“ただの盗賊”じゃない。)
曲陽荒城の周囲には、
黒煙が立ち込めていた。
光油の燃焼臭が風に混ざって運ばれてくる。
関羽は眉を寄せて言う。
「……悪い予感がします。
あの煙……おそらく光油を大量に“加工”している。」
張飛が首をかしげる。
「加工?
光油って、なんかできるのか?」
劉備は苦い顔になった。
「最近噂されている……
“光油呪改じゅかい”っていう技術だよ。」
張飛が叫ぶ。
「じゅ、呪い!?
なんだそりゃあ!!」
関羽が淡々と説明する。
「光油に不純物や特殊鉱石を混ぜ、
反応を意図的に変質させる技術です。
燃焼効率は上がりますが――
使用者の生命力を削るため、
まともな軍では禁じられています。」
張飛が呆れる。
「なんでそんなヤベぇもん使うんだよ……。」
劉備は、曲陽の黒煙を見上げながら言った。
「黄巾賊は……
“命を削ってでも強くなる”道を選んだんだ。」
張飛が拳を握る。
「くそっ!!
そんな狂った連中に民が殺されてたまるかよ!!」
________________________________________
◆ 曹操軍との再会 ― 軍団の“本気”
曲陽手前の丘を越えたところで、
劉備たちは再び曹操軍の旗を見つけた。
黒と金の旗。
その下に整然と並ぶ軍勢。
張飛が感嘆の声を上げる。
「なんだこりゃ……
つえぇ兵だらけじゃねぇか……!」
関羽も珍しく目を細める。
「光油装甲の兵が多い。
地方の義勇ではなく、
“本物の軍”です。」
そこへ曹操が馬で現れる。
「来たか、義兄弟。」
劉備が頷く。
「曹操殿。
あなたの軍は……強いですね。」
曹操はわずかに笑った。
「当然だ。
乱世とは“備えた者が勝つ世界”。
俺はそのために長年準備してきた。」
張飛がむっとして言う。
「兄者だって負けねぇぞ!
んで、今日の作戦はどうなんだ?」
曹操は劉備と関羽を見渡した。
「まず、黄巾軍“本隊”の把握が必要だ。
偵察によれば――」
彼は黒鎧の部下から羊皮紙の地図を受け取る。
劉備は息を飲んだ。
■曲陽荒城・防衛構造
1)城壁上に大型弩弓(6台)
2)南門には“光油呪改装甲兵”
3)内部には大型アーマード部隊(10〜15)
4)最奥に“天公将軍”と呼ばれる男の本陣
5)周囲の地形は山谷で、逃げ場がない
張飛が声を荒げる。
「なんだよこれ!!
ほぼ“城塞都市”じゃねぇか!!」
関羽が静かに言う。
「光油呪改……
やはり本気で大陸を取るつもりですね。」
曹操は地図を閉じ、短く告げた。
「今日は“前哨戦”だ。
正面の弩弓どきゅうを壊す。
そのあと本陣へ攻め入る。
ただし――
本隊はまだ“動かすな”。」
劉備が首をかしげる。
「動かすな……?」
曹操は鋭い目で言った。
「理由は一つ。
本当に危険な敵が、まだ姿を見せていないからだ。」
張飛がごくりと唾を飲む。
「……誰が隠れてんだ?」
曹操はわずかに声を潜めた。
「“将軍級”黄巾アーマード。
名前は――
張梁ちょうりょう
張宝ちょうほう
そして……
“天公将軍” 張角ちょうかく。」
劉備の胸が冷たくなった。
(張角……
黄巾の乱を起こした“教祖”……
噂では“光油術”を自在に操る怪物……。)
曹操は続けた。
「情報では、張角だけはアーマードではなく、
人体光油術式・最上級。
もはや人ではないという話だ。」
張飛が叫ぶ。
「人じゃねぇ!?
ふざけんな!!」
関羽は静かに刀の柄を握った。
「……いずれは戦う相手。
避けられません。」
劉備は深呼吸し、曹操の目を見る。
「僕たちは……何をすればいい?」
曹操は即答した。
「お前たちには――
南門の“光油呪改兵”部隊を突破してもらう。
南門を破れば、城内に俺の軍が流れ込める。」
張飛が拳を鳴らした。
「望むところだ!!」
劉備は緊張の中で決意を固める。
(この戦いは……
昨日とは桁違いの戦場だ。
仲間がいなければ死ぬ。
だけど……
僕たち三兄弟は必ず民を守ってみせる。)
曹操が馬首を巡らせた。
「夕刻になれば攻める。
準備しておけ。」
黒鎧の軍勢が動き出し、
三兄弟も戦の空気を吸い込みながら歩を進める。
曲陽荒城の上空では、
まるで大地の怒りのように黒煙が渦巻いていた。
乱世の中心が――
ここにあった。
________________________________________
第3章 前哨戦開始
――南門の“呪改兵”突破作戦――
夕刻。
曲陽荒城を取り巻く黒煙が、
夕陽に照らされて血のように赤黒く染まっていた。
劉備、関羽、張飛は
城南門へ続く湿地帯に身を潜めていた。
関羽が低く言う。
「敵の巡回は――三十呼吸ごと。
交代時に“死角”が生まれます。
そこが我らの侵入タイミングです。」
張飛が小声で吠える。
「よし……だったら一気に行って、
ド派手にぶっ壊してやる!」
劉備は静かに頷いた。
「二人とも……慎重に行こう。
あの南門の守備は、
曹操殿も“危険すぎる”と言っていた……。」
関羽は南門を見据える。
そこには――
黒い光油蒸気を吐き出す、
異様な兵士たちが整列していた。
肌は土色、
目はどこか虚ろ。
装甲は半ば体に“溶け込んで”いる。
張飛が眉をひそめる。
「う……わ……
なんだよあいつら……。」
劉備は息をのみ、言った。
「……光油呪改兵じゅかいへいだ。」
________________________________________
◆ 光油呪改兵じゅかいへいとは?
関羽が淡々と解説する。
「光油を体内に直接注入し、
契約式で精神を縛られた兵士。
痛覚は薄れ、出力は強化される。
だが……生涯苦しむと言われています。」
劉備は呟く。
「人を……兵器に……。」
張飛が怒りを抑えきれず拳を震わせる。
「てめぇら黄巾は……
人間をなんだと思ってるんだ……!!」
関羽は静かに構えた。
「彼らは“意志なき兵”。
こちらが情を見せた瞬間、
死角を突かれます。」
劉備は拳を握る。
(倒すしかない……
彼らを苦しみから解放するためにも……
この戦いは避けられない。)
________________________________________
◆ 作戦開始 ― 暗闇を切り裂く三兄弟
曹操軍の黒い狼煙が、
遠くの丘から“合図”として上がる。
関羽が鋭く言った。
「行きます。」
張飛が飛び出す。
「おおおおおおっ!!
呪改だろうが何だろうが、
まとめてぶっ倒す!!」
劉備も仁鎧の残った機能を全開にして走る。
南門前。
呪改兵の目が一斉に光った。
「侵入者……侵入者……処理……」
機械仕掛けのような声とともに、
呪改兵たちが襲いかかってきた。
________________________________________
◆ 激突:呪改兵の“異常な強さ”
張飛が拳を叩きつけるが、
呪改兵は倒れながらも体を捻じ曲げて反撃してくる。
火花が散る。
「うお!?
こいつら、何だこの動き!!」
関羽が蒼い残光とともに呪改兵を切り裂く。
「張飛、注意しろ。
痛覚がない分、
動きに“躊躇”がない。」
劉備も盾となって攻撃を受け止める。
「くっ……!!
力が……強すぎる……!」
呪改兵の拳は、
人間の筋肉では出せない速度と角度で繰り出される。
(これは……兵士じゃない……
まるで……呪いの鎧を着せられた“亡霊”だ。)
________________________________________
◆ 南門ギミック起動 ― “光油熱線”の罠
そのとき荒城の城壁から
低い振動音が響いた。
ゴウウウウウウウウウ……ッ!!
関羽が叫ぶ。
「劉備殿、張飛!
頭上!!」
城壁から
蒼く光る巨大なレンズが突き出した。
張飛が目をむく。
「なんだあれ!?
蒼い目玉か!?」
関羽は即座に判断した。
「あれは“光油砲”。
呪改光油を超高温で収束し――
一瞬で焼き切る兵器です!」
劉備が叫ぶ。
「こんなのまで……!」
レンズが三兄弟へ向かい――
蒼い光が溜まり始める。
呪改兵たちは後退し、
三兄弟を砲撃の範囲へ追い込んだ。
張飛が吠える。
「兄者!!どうすんだ!!?」
劉備は瞬時に周囲を見回した。
関羽に向かって叫ぶ。
「関羽!
右側の弩弓台の支柱を斬って倒せば、
レンズを遮ることができる!!」
関羽は頷く。
「承知。」
張飛が吠える。
「じゃあ俺は呪改どもを全部押さえる!!
かかってこい、化け物ども!!」
劉備も突き進む。
「僕は関羽を援護する!!」
________________________________________
◆ “支柱破壊”ミッション:関羽の孤独な走り
関羽は呪改兵の間を
青い残光となって疾走する。
ギチッ……ギチギチ……
呪改兵の関節音が背後で迫る。
しかし関羽の心は乱れない。
(支柱は三本。
一本目を切れば、角度が傾く。
二本目で崩落。
三本目で完全に倒す。)
呪改兵が迫る。
関羽が青龍煌刃を横一閃。
シュッ!
呪改兵の腕が飛ぶ。
だが倒れない。
そのまま跳びかかってくる。
関羽は息を吐く。
「……不憫だ。」
しかし躊躇はしない。
一刀で心臓部の呪印を断った。
そして――
支柱一本目へ到達。
ザンッッ!!!
蒼い火花とともに支柱が裂けた。
________________________________________
◆ 劉備の援護 ― “仁鎧の奇跡”再び
劉備は呪改兵の波に押されながらも、
関羽の走る道を守っていた。
(一度限りだったはずの“共鳴炉”……
でも……今の仁鎧なら……
少しだけ……力を貸してくれるはず。)
劉備は胸部炉に手を添えた。
「お願いだ……また僕に……
守る力を……!」
仁鎧が蒼く脈動する。
張飛が叫ぶ。
「兄者!!
共鳴してる!!また光ってるぞ!!」
劉備が微笑む。
「まだいける……
まだ戦える……!」
仁鎧の光膜が展開し、
呪改兵の攻撃を受け流す。
劉備は関羽の側面に回り込み、
飛びかかる呪改兵を弾き飛ばした。
関羽が短く言う。
「助かります。」
劉備は頷く。
「二本目、いこう!!」
________________________________________
◆ 張飛の奮戦 ― “呪改兵の大群”を押し返す
張飛はまるで獣のように叫び、
呪改兵の中心へ突っ込んだ。
「まとめてかかってこいやぁぁぁ!!
雷轟甲らいごうこうの拳、受けてみやがれ!!」
ドゴォォォォン!!
呪改兵が吹き飛び、地面に転げる。
だが体が砕けても、
彼らは立ち上がる。
張飛が歯を食いしばる。
「こいつら……
痛みを感じてねぇ……!」
呪改兵が金切り声を上げて群がる。
「張飛!危ない!!」
劉備が叫ぶが、張飛は笑う。
「へっ、これくらいどうってことねぇ!!」
張飛は地面を踏み、
赤い稲妻を纏いながら回転突撃を放つ。
雷轟旋破ッッ!!!
呪改兵が周囲へ吹き飛び、
張飛の周囲に隙が生まれた。
張飛は叫ぶ。
「兄者ぁ!!
早くしねぇと光油砲がヤバいぞ!!」
________________________________________
◆ クライマックス:光油砲、発射準備完了
城壁から
蒼い光が放射状に広がる。
ゴウウウウウウウウウ……ッ!!
関羽が叫ぶ。
「支柱、あと一本!!
急ぎます!!」
劉備も叫ぶ。
「関羽!!僕が前に出る!!
呪改兵は任せて!!」
張飛も吠える。
「光油砲が撃たれる前に……
ぶっ倒すぞおおおお!!!!」
南門が地響きを立て、
光油呪改兵たちが絶叫する。
蒼熱線が三兄弟に照準される。
劉備、関羽、張飛――
三人の視線が交差する。
(絶対に止める……
ここで止めなきゃ、曹操軍が全滅する……!)
三兄弟は同時に叫んだ。
「行くぞおおおおおッ!!!!」
その瞬間――
戦場が動く。
光油砲が蒼光を放とうとした時、
三兄弟は最後の支柱へ殺到した。
________________________________________
第4章 光油砲破壊
――支柱崩落・南門決壊――
光油砲のレンズが蒼く灼熱を帯び、
三兄弟の影を照らしていた。
ゴウウウウウウウ……!!
撃つ。
必ず撃つ。
呪改光油を収束した“灼滅線”が
南門一帯を焼き尽くす――
その寸前。
張飛が吠える。
「兄者あああ!!
行くぞ、第二奥義だああああ!!」
関羽が声を合わせる。
「劉備殿、張飛――
私が刀で“角度”を作る。
張飛、貴様は“力”を。
劉備殿は“導き”を!!」
劉備が息を呑みつつ叫ぶ。
「うん!!
いくよ二人とも!!」
三兄弟は同時に飛び込んだ。
________________________________________
◆ 三兄弟 第二奥義
《崩柱連破陣ほうちゅうれんぱじん》
張飛が地面を殴り、
地面を伝う衝撃で呪改兵を吹き飛ばす。
「どけええええええ!!」
関羽がその隙に三本目の支柱へ駆け――
ザンッ!!!!
青龍煌刃が支柱を斬り裂く。
そして劉備が光膜を全展開し、
倒れかけた支柱を“押し曲げて”方向を変えた。
「張飛!関羽!
こっちへ倒す!!」
張飛が渾身の肩当てで支柱を押し込む。
「うおおおおおおりゃああああ!!!!」
ミシ……ミシミシ……ミシィィィィィッ!!!
巨大な支柱が悲鳴のような音を上げて――
城壁側に傾き始めた。
関羽が低く呟く。
「……倒れる。」
張飛が吠える。
「倒れろおおおおおお!!」
劉備が叫ぶ。
「今だあああああっ!!」
________________________________________
◆ レンズ崩壊 ―—— 光油砲停止
ドオオオオオオオオオオオオオーーーンッ!!!!
倒れた支柱が光油砲レンズを直撃。
蒼い光が弾け、
レンズは粉砕され、蒼い火花が空に散った。
呪改光油が空気中に飛散し、爆ぜる。
「光油砲……!
停止したぞ!!」
曹操軍の兵が叫ぶ。
張飛が拳を突き上げる。
「見たかよ兄者!!
俺たちの勝ちだあああ!!」
関羽はわずかに微笑んだ。
「……良い連携でした。」
劉備は肩で息をしながらも頷く。
(これで……曹操軍が……入れる……!)
城壁が崩れ、
南門側に巨大な隙ができた。
________________________________________
◆ 曹操軍、突入開始
丘の向こうから黒い軍勢が押し寄せる。
ドドドドドドドド!!!
曹操軍の馬蹄。
光油装甲兵たちの突撃。
曹操が馬上から叫ぶ。
「三兄弟、見事だ!!
ここからは俺の軍が入る!!
一気に城内を制圧するぞ!!」
黒鎧兵たちが
三兄弟の横を駆け抜ける。
劉備は胸に熱がこみ上げた。
(これで……城内の民が救われる……!)
張飛が剣を構える。
「よっしゃあ!!俺たちも行くぞ!!」
関羽が冷静に頷く。
「南門からなら、
本陣へ続く道は一本道。
ここからが本番です。」
三兄弟は突撃を開始し――
その瞬間だった。
________________________________________
◆ 荒城の奥から
“恐ろしい脈動”が響く
地面が震えた。
まるで巨大な心臓が地下で脈打つかのような。
ドウッ……ドウゥゥン……ドウゥゥゥゥン……
張飛が眉をひそめる。
「なんだ……?
曲陽が……鳴ってやがる……?」
劉備の身体に悪寒が走る。
(これは……
光油の波動じゃない……
もっと……禍々しい……!)
関羽が刀を握り直した。
「来ます……
“将軍級”の気だ。」
その時。
城内の奥――
黒煙の最深部から、
巨大な影がゆっくりと歩き出た。
兵士たちが震える。
「ひ、ひいい……!
あ、あれは……!」
曹操でさえ目を細めた。
「……ようやく姿を見せたか。」
劉備は息を飲む。
城内から現れたのは――
黄色い巨大アーマード。
装甲には呪印が彫られ、
背中には歪んだ光油炉が二つ。
そして胸部には
“黒い渦”のような光が脈動している。
その顔面部の装甲が開き、
中から現れたのは――
恐ろしい笑みを浮かべた男。
「わしが――
地公将軍・張宝ちょうほう である。」
呪改光油が噴き出し、
空気が震える。
張飛が吠える。
「将軍級……!!
こいつが……黄巾の“怪物”の一人か!!」
張宝は笑った。
「曹操よ……義兄弟よ……
貴様らの腕前は聞き及んでおる。
だがな――
この曲陽には、
まだ二人の“将軍”が眠っておるぞ。」
劉備の背筋が凍る。
(張梁……そして……張角……。)
関羽が静かに構える。
「ここからが……
本当の地獄です。」
張飛が怒号を上げる。
「上等だ!!!
何人だろうがぶっ潰すだけだ!!!」
張宝の光油炉が爆音を立てる。
城内に蒼黄の渦が巻き起こる。
曲陽荒城・最初の“将軍戦”が始まった。
________________________________________
第5章 将軍級アーマード
“地公将軍・張宝”戦
黒煙が渦を巻く曲陽荒城。
その中心から現れた男――張宝ちょうほうは、
人間とは思えない狂気に満ちた笑みを浮かべていた。
「ようやく来たな……義兄弟どもよォ……」
背後の巨大アーマードは、
人型でありながら 蜘蛛のように四脚を隠し持つ異形機体。
胸部に埋め込まれた黒渦の光油炉が脈動し、
周囲の空気を歪ませる。
張飛が吠える。
「なんだよあのキメぇアーマードは!!
足が何本あるんだよ!!」
関羽は冷静に分析する。
「背面に格納された補助脚……
四脚歩行にも変形可能。
おそらく“地形適応型”の将軍機です。」
劉備は喉が渇くような緊張を覚えた。
(これが……
噂に聞く“将軍級”……?
光油精油所の大型とは、
まるで別世界の強さだ……。)
曹操軍の兵士が叫ぶ。
「じ、呪気だ!!
あの男の周囲……光油が黒く変質している!!」
張宝が笑いながら両腕を広げた。
「見よォ……これが“呪改光油術”の完成形よ……!」
胸部の黒渦が一気に膨れ――
ビリビリビリビリッ!!!
蒼黄の光が四方へ走る。
________________________________________
◆ 張宝の能力①
呪改光油術じゅかいこうゆじゅつ・黒渦脈動
光油を“不浄化”させ、
呪印で制御して爆発的な出力を得る術。
関羽が警告する。
「劉備殿、張飛!
あの黒渦……
近づくほど装甲を侵す“腐食波”を出しています!!」
張飛が叫ぶ。
「攻撃もらう前に錆びちまうってのかよ!!?」
張宝は高笑いした。
「逃げられると思うのかァ……!?」
胸部の黒渦が一段階膨張し――
ザァァァァァァァァッ!!!
空気が裂けるような音。
地面すれすれに、
黒い帯状の光油が地を滑って三兄弟へ迫った。
劉備が叫ぶ。
「全員飛べ!!地を走る“腐食帯ふしょくたい”だ!!」
張飛が跳躍した瞬間、
背後の兵士の盾が黒く溶け落ちた。
「ひぃ!!
なんだこの毒みてぇなのは!!」
関羽は刀を構えながら言う。
「張宝……
見た目以上の脅威です。
このままでは曹操軍が壊滅します。」
曹操が馬上から叫ぶ。
「奴の注意を引け!!
その間に南門から第二軍を突入させる!!」
劉備が頷く。
「任せてください!!」
張飛が吠える。
「よーし!!
将軍級だろうがなんだろうが……
兄者の拳でぶっ飛ばす!!」
張宝のアーマードの“背脚”が展開し、
巨大な蜘蛛のように四脚で大地を踏む。
城壁が震え、石が崩れ落ちる。
張宝が叫ぶ。
「来いよォ……義兄弟……
貴様らの“絆”とやらが、
呪改に勝てるか見ものよォォ!!」
________________________________________
◆ 張宝の能力②
《地走黒雷じそうこくらい》
地面を伝う「呪雷」を無数に発生させる。
四脚が地を叩いた瞬間――
バリバリバリバリィィィ!!!!!
黒い電気が地表を奔り、
触れた草木は一瞬で炭化する。
張飛が叫ぶ。
「なんだぁ!?
地面が雷みてぇに光ってるぞ!!」
関羽はすぐに理解した。
「“地走黒雷”……!
地形ごと制圧する術式です!!
地にいる限り、我らは常に死の中にいる!!」
劉備は震える息を整えた。
(このままじゃ……押し負ける……
だけど……三人でなら……!)
張飛が吠える。
「兄者!!
あいつの足を止めるぞ!!」
関羽が冷静に補足する。
「張飛。
奴は背面の光油炉が“二機”だ。
片方を破壊すれば、地走黒雷は弱まる。
だが――
そこまで近づくのが困難。」
劉備は拳を握る。
「近づく方法は……あるよ。」
張飛と関羽が振り返る。
「兄者……?」
「どうする気です?」
劉備は仁鎧の胸部炉に触れ、静かに言った。
「――“共鳴”だ。」
関羽の目が細く輝く。
「まさか……
昨日のあれを、もう一度……?」
張飛が叫ぶ。
「兄者!!
そんなことしたら……身体が……!」
劉備は首を振った。
「大丈夫。
二人がいれば……僕は折れない。」
張宝が狂気の笑みで近づく。
「クク……
何をコソコソ話しておる……?
まとめて踏み潰してくれるわ!!」
四脚が跳び上がり、
黒雷が爆ぜる。
________________________________________
◆ 三兄弟 ―第二の“共鳴陣”発動
劉備が叫ぶ。
「張飛!!前へ!!
関羽!!僕の“波”を斬り開いて!!」
張飛が吠える。
「来たな兄者!!
任せろ!!」
関羽が刀を構える。
「劉備殿……共鳴の出力、上げすぎないように。」
劉備は深呼吸する。
「仁鎧……
僕に力を……!!」
胸部炉が蒼く脈動する。
ビリィィィィィィンッ!!!
蒼い“共鳴波”が地を這う黒雷を押し返しながら広がっていく。
張飛が駆ける。
「うおおおおおらああああ!!
共鳴波の上なら黒雷は効かねぇ!!
兄者の道は俺が切り開く!!」
関羽も続く。
「張飛、私が援護する。
左から来る黒雷を切る!!」
青龍煌刃が蒼光の波を裂き、
黒雷を無効化していく。
張宝が叫ぶ。
「ほう……?
波を押し返しただと……?
ええい小賢しい!!」
四脚が再び地を叩き、
黒雷が十倍の勢いで走る。
劉備は歯を食いしばった。
(負けない……!
二人がいる限り……!
この“共鳴波”は絶対に途切れない!!)
張飛が叫ぶ。
「兄者ァ!!
もうちょいで背中だ!!」
関羽が鋭く言う。
「ここが勝負です!!」
張宝のアーマードの背中――
そこにむき出しの光油炉が二つ。
その片方へ、
三兄弟の影が迫った。
________________________________________
第5章(後編)
地公将軍・張宝 撃破戦
――三光破断陣の誕生――
蒼い共鳴波に乗って駆け抜ける三兄弟は、
張宝アーマードの背部へ肉薄していた。
関羽が刀を構え、言う。
「光油炉は二基。
まず“左の炉”を破壊する!!
そうすれば黒雷の出力は半減するはず!!」
張飛が怒号する。
「よっしゃあああ!!
兄者!!俺が足止めだ!!
関羽!!背中いけ!!」
劉備は共鳴波を広げながら叫んだ。
「僕は援護する!!
二人とも……絶対に無事で!!」
張宝が狂気の笑みで振り返る。
「来たか……小蝿ども!!
ならば見せてやろう……“将軍機”の真の姿を!!」
アーマード背面の装甲が開き――
ジャキィィン!!
蜘蛛脚が8本、全展開。
背部炉の周囲を守るように湾曲する。
関羽が剣先を向ける。
「背部炉を守る“自動迎撃脚”……
厄介ですね。」
張飛が拳を握りしめる。
「なら、俺が全部ぶっ壊す!!
うりゃあああああ!!!」
張飛の雷轟甲が赤い稲妻を放ちながら突撃。
蜘蛛脚が一斉に張飛を狙う。
ガガガガガガガ!!!
金属音と火花が飛ぶ。
張宝が吠える。
「愚か者が!!
その脚は“呪改光油”で強化してある!!
貴様の拳など通じぬ!!」
張飛の拳が弾かれ、
地面に叩きつけられた瞬間――
ズガァァン!!
張飛の背中が石畳にめり込み、
土煙が舞う。
劉備が叫ぶ。
「張飛!!」
関羽が冷静に言う。
「心配無用です劉備殿……
張飛は、この程度では倒れません。」
張飛は口から血を拭き、立ち上がった。
「はっ……
こちとら大型倒してきた身だぜ……
こんな脚に負けてられっかよ!!」
張宝の眼光が鋭くなった。
「ならば、もっと踏み潰してくれるわ!!」
蜘蛛脚が一斉に刺突の構えを取る。
劉備の胸が跳ね上がる。
(張飛が……危ない!!)
________________________________________
◆ 劉備、覚悟の“共鳴解放”
劉備は胸部炉に手を当て、
目を強く閉じた。
「仁鎧……
僕にもう一度だけ……
仲間を守る力を……!!」
蒼い共鳴波が爆発的に拡大する。
ビリィィィィィィンッ!!!
関羽が驚く。
「劉備殿!?
こんな出力……身体が持ちません!!」
劉備は叫ぶ。
「張飛を守らなきゃ!!
だから……構わない!!」
張飛が歯を食いしばる。
「兄者……!!
無茶すんなよ!!」
だが、共鳴波は確かに蜘蛛脚の動きを鈍らせた。
その瞬間、関羽が青龍煌刃を構え――
「参る。」
一閃。
ズバァァァァン!!!
蜘蛛脚の一本が切断され、
火花と呪油が勢いよく吹き出した。
張宝が叫ぶ。
「貴様ァァ!!
我が“地走蜘蛛脚”を……!!」
関羽は低く言う。
「破壊しました。」
張飛が吠える。
「さすが関羽!!
兄者!!今だ!!」
劉備が叫ぶ。
「張飛!関羽!
二人の力を……合わせるんだ!!」
三兄弟の影が背部炉へ向かって重なる。
張宝が絶叫する。
「やめろォォォォ!!」
________________________________________
◆ 三兄弟 奥義
《三光破断陣さんこうはだんじん》
――誕生の瞬間――
劉備の共鳴波が蒼く渦を巻く。
張飛が赤い雷をまとってぶち込む。
関羽が青龍煌刃を逆手に構える。
三つの光が――
ひとつの円陣を描いた。
劉備「今だぁぁああ!!」
張飛「ぶっ壊せえええ!!」
関羽「破断――」
三人「三光破断陣ッ!!!!」
ドガアアアアアアアアアアアアア!!!!
蒼・赤・青の三色の光が重なり、
背部炉を貫く。
黒い呪渦が悲鳴のような音を立てて輪郭を失い――
爆発。
ズドオオオオオオォォォォン!!!
張宝アーマードが片膝をつき、
巨体がぐらつく。
張宝が呻く。
「ぐぅ……
この私が……この私がァァァ……!」
張飛が吠える。
「よっしゃぁぁぁ!!
背中壊したぞ!!」
関羽が刀を納める。
「劉備殿、張飛。
勝利は……まだです。」
劉備がはっとする。
「え……?」
張宝がゆっくりと立ち上がった。
胸部の黒渦が――
さらに濃くなっている。
張宝の声が低く響く。
「……貴様ら……
背部炉を壊した程度で……勝ったつもりか?」
黒煙が彼の周囲で渦を巻く。
張飛が驚愕する。
「なんだよ!?
背中壊したのに……強くなってやがる!!」
関羽が目を細める。
「張宝……
まさか……背部炉は“封印”だったのか……?」
張宝が口角を吊り上げた。
「そうよ……
背部炉は“呪改光油”暴走の抑え。
それを壊した貴様らは……
私の“真の姿”を解放したのだ!!」
胸部の黒渦が爆ぜる。
ゴォォォォォォォォッ!!!
劉備の顔が蒼白になる。
(そんな……
背中を壊したら……本気が出るなんて……
そんなの……聞いてない!!)
張宝のアーマードが歪んだ音を立て――
第二形態へ変貌を始めた。
蜘蛛脚が巨大化。
胸の黒渦は竜巻のように渦を巻き、
呪改光油が空中に筋を描く。
張宝が叫ぶ。
「行くぞォォォ義兄弟!!!!
ここからが……本当の“地公将軍”よ!!!!」
三兄弟の目の前に――
絶望的な怪物が再び立ちはだかった。
________________________________________
第6章
張宝・第二形態戦
――呪渦暴走と三兄弟の限界――
南門の石畳が音もなくひび割れ、
城内へ向けて黒い風が吹き抜けた。
張宝のアーマードは、
もはや“蜘蛛”ですら形容できないほどに肥大化していた。
脚は八本、どれも槍のように尖り、
胸部の黒渦は天へ向かう竜巻のように回転する。
張宝の声が響く。
「さあァ……第二幕だ義兄弟!!
わしの呪改光油術……すべて味わうがよい!!」
胸部の黒渦が脈動するたび、
空間が“歪む”。
劉備が蒼白になる。
「な、何だこれ……!?
空気が……押しつぶされてる……!」
関羽が分析する。
「光油に“重力印”を刻んだ術式……
“重力歪曲じゅうりょくいきょく”です。」
張飛が叫ぶ。
「重力って……敵が大地ごと潰しに来てるってことかよ!?」
関羽が頷く。
「本来は禁術。
光油を生命力と引き換えに歪ませて発動する……
張宝は……もはや人ではない。」
張宝が狂ったように笑う。
「人間などとうに捨てたわァ!!
わしは“天公将軍”様のために進化したのだ!!
さあァ来い!!」
四脚――いや、八脚が
地を踏みしめた瞬間。
ゴウッ!!!
石畳が沈み込み、
三兄弟の足が“地面ごと”引きずり込まれた。
劉備が叫ぶ。
「きゃあああっ!!
身体が……重い……!!」
張飛が歯を食いしばる。
「くそっ……!!
胸が……潰れそうだ……!!」
関羽も冷静さを保とうとするが、
額に汗がにじむ。
「この重圧は……尋常ではない……!」
その上――
黒い雷が上から降ってくる。
________________________________________
◆ 張宝の必殺術①
《黒渦呪雷こくかじゅらい》
黒渦から複数の光柱が発射され、
空中で雷へ変わり、
地面へ叩きつけられる。
バリィィィィィィン!!!!
劉備の光膜が裂ける。
「うっ……ああああっ!!」
張飛の肩装甲が吹き飛ぶ。
「があああっ!!
兄者ぁ!!これヤベェぞ!!」
関羽は刀で雷を斬る。
だが――
“斬った雷”が分裂して襲いかかってくる。
関羽が目を見開く。
「なんだ……!?
斬っても……増える……!!」
張宝が笑う。
「呪雷は“増殖”するのだァ!!
お前たちのような凡俗に止められはせん!!」
________________________________________
◆ 劉備、共鳴限界へ
劉備は息を荒げながら叫ぶ。
「張飛!!
関羽!!
僕が“重力圏”を押し返す!!
その間に……背中を……!」
張飛が叫び返す。
「兄者ァ!!
死ぬ気かよ!!
共鳴はもう限界だぞ!!」
関羽も声を強める。
「劉備殿!!
あなたの生命力が尽きる!!
張宝は……それを狙っている!!」
しかし劉備は迷わず叫んだ。
「僕は……二人がいなかったら……
とっくに死んでた!!
二人が守ってくれたから……
僕はここにいる!!
だから!!
今度は僕が守るんだ!!!!!」
仁鎧の胸部炉が蒼く光り――
蒼炎のような“共鳴波”が噴き出した。
張飛が目を見張る。
「兄者……!!
共鳴波が……炎みてぇになってる……!!」
関羽が息を呑む。
「これが……
仁鎧の本来の“緊急解放”……
まさかここまでとは……!」
蒼い波が黒渦の重力を押し返していく。
張宝が初めて怒りを見せた。
「小癪なァァァ……!!
わしの“重漣渦”を押し返すなど……!!」
劉備は叫ぶ。
「今だ!!
二人とも行って!!」
張飛が吠える。
「兄者の顔立てねぇで誰が男だ!!
行くぞ関羽!!」
関羽は青龍煌刃を握り直す。
「張飛。
今こそ――決める。」
________________________________________
◆ 張宝の必殺術②
《呪改光油・重渦壁じゅかいこうゆ・じゅうかへき》
張宝は胸の黒渦を広げ、
三兄弟の前に“黒い壁”を張った。
重力と呪雷が混ざった絶対防壁。
関羽が鋭く言う。
「張飛。
あの壁を突破できなければ、
張宝には届かない!!」
張飛が吠える。
「ならぶっ壊すまでだ!!
おらあああああ!!」
雷轟甲の拳が壁に叩き込まれる。
ガギィィィィィィン!!
だが――
張飛の拳は逆に弾かれ、地面に突き刺さる。
張飛「ぐわあああっ!!?」
関羽は呟く。
「重力が“逆向き”に働いている……
触れたものを“押し返す”壁……!」
張宝は腹を抱えて笑う。
「どうしたぁ!!
貴様らの拳と刃は届かん!!
この“重渦壁”の前ではなァ!!」
劉備が歯を食いしばる。
(これじゃ……
二人が近づけない……!!
なら……)
劉備は叫んだ。
「二人とも!!
“共鳴波”を使って!!
壁の重力を“軽くする”!!
壁を――この共鳴波で揺らすんだ!!」
関羽が驚く。
「劉備殿……そんな負荷では……!」
張飛も叫ぶ。
「兄者ァァァ!!
それやったら死ぬだろ!!」
劉備は振り返らない。
「僕は……二人と……
この乱世を歩きたい!!
死ぬわけにはいかないんだ!!
だから!!
“共鳴解放”――最大まで!!」
仁鎧の光が、
ついに“白色”に近い蒼へ変わる。
張飛が震える。
「兄者……
本気で命削ってやがる……」
関羽が刀を構え、真剣に言った。
「張飛。
劉備殿の覚悟……
無駄にするな。」
張飛は涙をこらえ、吠えた。
「うおおおおおお!!!
行くぞォォォォォ!!!!」
________________________________________
◆ 最終決戦:三兄弟奥義・上位式
《三光破断陣・白炎はくえん》
共鳴波が重渦壁を押し返し、
張飛の拳に“軽さ”が戻る。
関羽の刀が黒渦を裂く道を作る。
張宝が絶叫する。
「来るなァァァァァァ!!
貴様らァ!!
そこから先は“死”だぞ!!」
劉備が叫ぶ。
「僕たちは!!
死なない!!!
三人で生きるんだ!!」
三兄弟の影が重なり――
蒼・赤・青の光が
白炎のように輝く。
三人「三光破断陣――白炎ッ!!!」
ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!!
重渦壁が粉々に砕け、
三兄弟の一撃が張宝の胸部黒渦を――
貫いた。
黒渦が悲鳴をあげながら消滅していく。
張宝の身体が揺らぎ――
張寶「ば……ばかなァァァァァ……
我が呪改術が……
義兄弟ごときに……!」
黒い光が弾ける。
張宝のアーマードが崩れ、
巨大な巨体が地面に倒れ込んだ。
ズゥゥゥゥゥゥゥン……!!
そして――
沈黙。
________________________________________
◆ 戦いのあと
張飛が膝をつき、息を荒げる。
「ぜぇ……ぜぇ……
やった……のか……?」
関羽が刀を納める。
「張宝……沈黙しました。
勝利です。」
劉備は膝をつきながらも微笑んだ。
「ありがとう……二人とも……
本当に……ありがとう……」
曹操軍がどよめく。
「三兄弟が張宝を倒した!!」
「将軍級を撃破したぞ!!」
曹操が馬で近づき、
劉備たちを見下ろす。
「……見事だ。
三人、お前たちは本物だ。」
劉備は疲労で震える声で答える。
「曹操殿……
僕たちは……まだ……戦えます。」
曹操の顔に、ほんの少しだけ笑みが浮かぶ。
「ならばついて来い。
まだ――“二人”いる。」
劉備の顔が引き締まる。
(張梁……そして――張角。)
張飛が呻く。
「まじかよ兄者……
将軍級あと二人もいんのかよ……」
関羽が静かに言う。
「劉備殿……
これはもう、後には引けません。」
劉備は頷く。
「うん……
ここで倒れられない。
僕たちは……民を守るために戦うんだ。」
三人は立ち上がる。
まだ戦いは終わっていない。
地公将軍・張宝を倒しても――
曲陽荒城の奥には、
“天公将軍” 張角
“人公将軍” 張梁
が待ち構えている。
乱世の闇は、
まだその片鱗を見せただけだった。
________________________________________
第7章 張梁登場
――“人公将軍”の恐怖――
張宝の巨体が地に沈んだあと。
城内はひどく静かになった。
静寂。
風すら息を潜めているような不自然な静けさ。
劉備は胸の痛みに耐えながら立ち上がる。
(まだ終わっていない……
張宝は“三将軍”の一人にすぎない。)
曹操軍は南門から雪崩れ込み、
次々と城壁を制圧していく。
張飛が溜息のように叫ぶ。
「兄者……
将軍級、あと二人もいるってのかよ……
あんなん、何体もいていいもんじゃねぇぞ……」
関羽も額の汗を拭う。
「張宝程度で、これほどの消耗……
張梁、そして張角……
相当な手練であると考えるべきです。」
曹操が馬で近づき、劉備を見下ろす。
「張宝を倒したことで、
黄巾軍の“呪改兵”の動きが鈍くなった。
だが――
曲陽の北区画では、別の現象が起きている。」
劉備が問い返す。
「別の……現象……?」
曹操は短く答えた。
「兵が消えている。」
張飛が目をむく。
「消えてる!?
誰にやられたんだよ!!」
曹操はわずかに目を細めた。
「“人公将軍・張梁”だ。」
関羽が小さく息を吸う。
「張梁……
“黄巾軍の頭脳”と呼ばれる人物……
情報によれば、
張宝以上に“術式”の扱いに長けているとか。」
曹操は続ける。
「曲陽北区画は――
すでに“霧”に覆われている。
兵が入ると姿を消し、二度と戻らない。」
劉備は呆然とした。
(霧……?
そんな術式が……。)
張飛が拳を震わせる。
「兄者……
俺らも行くんだろ?
その霧のとこ……。」
劉備は頷く。
「うん……
僕たちしか、突破できない。」
関羽も力強く頷いた。
「張宝との戦いで共鳴技を使いこなしつつある。
ならば張梁が仕掛ける“幻術”“霧術”にも対抗できるはず。」
曹操が言い放った。
「北区画――
曲陽“呪霧回廊じゅむかいろう”。
そこへ向かえ。
張梁は必ずそこにいる。」
張飛が吠える。
「よっしゃあああ!!
やってやる!!!」
________________________________________
◆ 曲陽北区画:“呪霧回廊”
三兄弟が歩み進めると、
荒城の北区画は、見たこともない光景に変わっていた。
濃密な白霧。
ところどころ黒く変質している。
建物は崩れ、
兵士の武器だけが落ちている。
張飛が足元の剣を拾う。
「……人影は?
死体もねぇ……。
なんだこれ……。」
関羽は冷静に周囲を観察する。
「霧の中は光油反応が乱れている……
敵の気配は感じられません。」
劉備は胸の奥がざわついた。
(まるで……
“何かに呑まれた”みたい……。)
ザ……ザ……
霧の奥から、
何かの足音が聞こえた。
ゆっくり、
ゆっくりと。
劉備が叫ぶ。
「誰だ!!」
霧が割れ、
ひとりの男が姿を現した。
青白い顔。
口元には静かな微笑み。
そして――
背中に背負う巨大な呪印板。
その板には、
複雑な光油回路が刻まれ、
脈動している。
男は静かに名乗った。
「我は――
人公将軍・張梁ちょうりょう。」
張飛が怒鳴る。
「てめぇが“黄巾の頭脳”ってやつか!!
ここで叩き斬ってやる!!」
張梁は微笑んだまま言う。
「怒らずともよい……。
この霧は“呪霧”。
我が心が揺らいだ時にのみ動き出す。」
関羽が目を細める。
「自分の心の動揺を……
霧の攻撃に転写させる……
そんな術が……?」
張梁は軽く頷いた。
「心と光油は同じ。
揺れれば波立ち、
波立てば術式が生まれる。」
劉備はゾクリとした。
(この男……
“精神”そのものを戦場にしてる……!)
張梁が霧の奥を指す。
「そこへ進むがよい。
我が“呪霧回廊”――
入った者の心を映し、
心を喰らう術式だ。」
張飛が拳を握った。
「兄者!!
こんなやつ、ぶっ倒して帰ろうぜ!!」
だが、次の瞬間。
霧の中から“劉備の声”が響いた。
「……僕は……弱い……
二人の足を引っ張るだけだ……
死ねばよかった……」
劉備が凍り付いた。
「……え?
……いまの声……僕……?」
関羽が刀を握りしめる。
「劉備殿!!
これは“霧が心を映す”幻術!!
惑わされるな!!」
張梁は微笑みを深くする。
「さあ……義兄弟よ。
お前たちの“心”を見せてみよ。」
霧がぐわりと動き、
黒い影が無数に姿を現す。
それは――
三兄弟自身の“負の影”だった。
張飛が叫ぶ。
「な……んだこれ!!
俺の顔した化け物が!!」
関羽も呆然とした。
「これは……
我らの心の“弱さ”……!」
劉備は震える声でつぶやく。
「こんな……
僕が……こんなに……弱い……?」
張梁は静かに言う。
「弱さこそが“呪”となる。
その弱さを喰らい、
我はさらに強くなる。」
霧が渦巻き、
負の影が三兄弟を取り囲む。
張梁の声が響く。
「さあ――
始めよう。“心喰らい”の戦いを。」
________________________________________
第8章 呪霧回廊・心喰らい戦
――三兄弟 VS “影”――
濃密な白霧が渦を巻く回廊。
その中心で、三兄弟は動けずにいた。
自分の姿をした“黒い影”たちが
まるで獣のように周囲を徘徊する。
張飛が叫ぶ。
「なんだよコイツらぁぁ!!
俺の顔して、ギャーギャーうるせぇんだよ!!」
その影はニヤリと笑い返し、
低い声で言った。
「お前は……
いつも兄者の影ばかり追っている……」
張飛の目が大きく揺れる。
「……は?」
影は続けた。
「羨ましいのだろう?
兄者が……仲間に慕われるのが……
心の奥で妬んでいるのだ……」
張飛が怒りで拳を震わせる。
「テメェ……何勝手言ってんだ!!
俺が兄者を妬むわけ――」
影は首を傾げ、嘲笑う。
「“そう思いたい”だけだろう……?」
張飛の心のどこかが、
深くざわめいた。
ザンッ!!
関羽の影が関羽に斬りかかる。
「お前は……
常に冷静ぶっているが……
心の底では焦っているだろう?」
関羽は刀で受け流しながらも、
その言葉にほんのわずか反応する。
影は関羽の形を保ったまま、
瞳に冷たさを浮かべる。
「劉備にも、張飛にも……
“劣らぬ武”を見せなければ……
置いていかれるのではないか……?」
関羽の眉がかすかに揺れる。
(……図星……か。)
関羽自身が抱える“誇りゆえの焦り”。
それを影は完璧に突いてくる。
________________________________________
そして劉備。
彼の前に現れた影は、
ひどく弱々しい表情で笑った。
「……僕なんて……
二人の足を引っ張るだけ……
共鳴波なんか……命を削るだけ……」
劉備は唇を噛む。
「やめて……
そんなこと言わないで……!」
影はゆっくりと首を振る。
「違う……?
じゃあ聞くけど……」
影の瞳が、劉備自身の心の奥を射抜いた。
「張飛が傷つくのは……
本当は君のせいじゃないの?」
劉備の瞳が震える。
「っ……!」
影が続ける。
「共鳴波で無理をするから……
張飛も、関羽も……
君を助けようとして傷ついていく……。」
胸に刺さる。
あまりにも鋭く。
影は淡々と告げた。
「君が“弱い”から……
みんなが危険に晒されるんだよ。」
劉備の心に、
黒い霧が広がり始めた。
________________________________________
◆ 張梁の“心術”の真の効力
霧の中――
張梁は微笑んでいた。
「霧に映る影は……
お前たち自身の“不安”と“弱さ”だ。
影が強くなればなるほど、
お前たちは心を削られる。」
霧が脈動し、張梁の背中の呪印板が光る。
「影が心を喰らうたび、
わしの力は増す。
戦わなければ喰い尽くされ、
戦っても心が削られる……
――詰んでいるのだよ。」
張飛が影に殴りかかろうとする。
「うるせぇぇぇ!!!
そんな影、ぶっ潰して――」
しかし影は一瞬で姿を変え、
“張宝の姿”になった。
張飛の動きが止まる。
「は……?」
影・張宝が笑う。
「張飛……
お前は“自信がない”のだろう?
兄者に守られなければ……
何もできぬと……。」
張飛の胸に、ズキリと痛みが走る。
(……俺……
こんなことで止まってんのか……?)
________________________________________
関羽の影は、
今度は“関羽がかつて敗北した敵の姿”へと変わった。
「誇り高き将……。
だがその誇りが……
お前を縛っている。」
関羽は苦しげに眉を寄せた。
(私は……誇りを守るために戦っている……
だが……
本心では劉備殿と張飛に追いつけぬ焦りが……
常にある……。)
影は刀を振り上げ、叫ぶ。
「その焦りこそが……
お前の“隙”だ!!」
________________________________________
劉備の影は、
突然張飛と関羽の姿に変わった。
影・張飛「兄者が弱いから……!」
影・関羽「我らが傷つくのだ……!」
劉備の心が折れかける。
「……そんな……
僕のせいで……?」
影は囁く。
「そう。
君が弱いから。
君が……迷うから。」
影が劉備の胸に手を伸ばす。
触れられたら――
心は完全に“呑まれる”。
劉備の瞼が閉じかける。
________________________________________
◆ しかしそのとき
関羽が叫んだ。
「劉備殿!!
目を逸らすな!!」
張飛も吠えた。
「兄者ァァァ!!!
俺たちが何で兄者のそばにいると思ってんだよ!!
弱いからじゃねぇ!!
一緒に戦いてぇからだろうが!!!」
劉備ははっとして、
影に掴まれる寸前で踏みとどまった。
「張飛……関羽……
僕は……弱いよ。
怖いよ。
でも……」
劉備は目を見開き、叫ぶ。
「弱い自分を否定しない!!
弱さごと、僕は僕なんだ!!!」
影が揺らぐ。
関羽が敵影を斬りながら叫ぶ。
「劉備殿!!
弱さを認める者こそ強い!!」
張飛が影を殴り飛ばす。
「兄者は兄者だ!!
俺たちの兄者なんだよ!!」
霧が震えた。
三兄弟の影が、
一斉にひび割れた。
________________________________________
◆ 三兄弟、心の影を撃破
劉備が共鳴波を放つ。
ビリィィィィィィン!!
張飛が雷撃拳を叩き込む。
ドガァァァン!!
関羽が青龍煌刃で切り裂く。
ザンッ!!!
三つの攻撃が重なり、
影たちは光の破片となって霧に溶けた。
霧が一気に薄れる。
張梁がわずかに驚愕し、呟く。
「……心を……
乗り越えた……だと……?」
劉備は張梁を見据え、
静かに言った。
「僕たち三人は、
互いの弱さを支え合っている。
その絆を……
あなたの霧なんかに壊せない!!」
張梁の表情が初めて“怒り”に歪む。
「……よかろう。
ならば次は――
霧の本性を見せてやる。」
背中の呪印板が開き、
巨大な霧の門が出現した。
張梁が手をかざす。
「来い。“霧獣むじゅう”――」
霧の奥から巨大な影が姿を現す。
まるで百の顔を持つ巨大な獣。
張梁の声が響く。
「これが、“人公将軍”の本当の戦いだ。」
________________________________________
第9章 霧獣降臨
――張梁の真の術式と三兄弟の連撃戦――
呪霧回廊の奥から、
重く、低い唸り声が響いた。
グオオオオオオオオオ……ッ
霧が波立つ。
地下から巨大な何かが這い上がってくるような――
そんな異様な震動。
張飛が思わず後ずさる。
「な、なんだよあれ……!?
霧……が形になってやがる……!」
霧が濃縮され、
巨大な獣の輪郭をつくっていく。
その身体は灰色の靄ででき、
顔らしき部分には 百もの“面の痕跡” が浮かび上がっていた。
怒り、悲しみ、狂笑、恐怖――
あらゆる感情が混ざった無数の顔が、
同時に叫んでいる。
ギャアアアアアアアア!!!
ゴォォォォォォ!!!
ヒィィィィィ!!
劉備の背筋に寒気が走る。
(これは……“怨念”の集合体……!?
兵士たちが消えたのは……
この化け物に喰われたから……?)
張梁は静かに腕を広げた。
「こやつは“霧獣むじゅう”。
霧と呪と、人の心を喰らった獣だ。」
関羽が眉を寄せる。
「人の……心……?」
張梁は微笑む。
「さらに言えば――
これは“張宝の怨念”も喰らっている。」
張飛が怒号した。
「てめぇっ!!
張宝を……仲間を喰わせたってのかよ!!」
張梁は冷静に答える。
「仲間などではない。
ただの“器”よ。」
その言葉に、
空気が一瞬、最悪の色に変わった。
張飛が吠える。
「ぶっ殺すぞコラァァァ!!!」
________________________________________
◆ 霧獣の能力①
《怨面咆哮えんめんほうこう》
百の顔が同時に開く。
ギャアアアアアアア!!!!!!
霧が衝撃波となり三兄弟に迫る。
劉備が叫ぶ。
「防御!!
光膜!!」
三人の周囲に光が展開されるが――
轟音衝撃で押しつぶされる。
バギィィィィィィン!!!
張飛が地面を転がる。
「うおおおっ!?
耳が割れそうだ!!」
関羽は踏みとどまりながら言う。
「“音”そのものが呪術……
防御が効きにくい!」
張梁は静かに言う。
「心を揺らせば揺らすほど、
霧獣は強くなる。
さあ……揺れろ。」
霧獣の身体がうねり、
巨大な爪のような霧が伸びる。
________________________________________
◆ 霧獣の能力②
《心喰乱爪しんしょくらんそう》**
霧の腕が形を変え、
三兄弟へ襲いかかる。
関羽が叫ぶ。
「張飛、右から来る!!」
張飛「おおおおおらぁ!!」
張飛の雷拳が霧を殴りつける。
ドガァァン!!
霧は一瞬崩れるが――
すぐ再生し、腕となる。
張飛「なっ!? 効かねぇのかよ!!」
関羽が分析する。
「いや――効いている。
だが実体がない以上、
“完全には破壊できない”。
仕留めるには……核を探さねば。」
張梁は笑う。
「核?
そんなものがどこにあるか――
わかるかな?」
劉備が息を飲む。
(核……
必ずどこかに“本体”が……!)
________________________________________
◆ 劉備、共鳴波で霧獣を“読む”
劉備は胸部炉に手を置き、
共鳴波を霧へと流し込んだ。
蒼い波紋が霧獣の内部を照らす。
(どこだ……
どこに本体が……)
すると、張梁の声が響いた。
「おや……?
共鳴波で……
霧獣の内部を探るつもりか?」
劉備の額に汗が流れる。
(やっぱり……!
霧そのものには本体がない!
じゃあ――)
張梁がゆっくりと言った。
「正しいぞ。
本体は“霧獣の中には存在しない”。
では――どこにある?」
その瞬間、
劉備は気づいた。
「……っ!!」
張飛が叫ぶ。
「兄者!?
なんかわかったのか!!」
劉備は叫ぶ。
「――張梁の“背中の呪印板”だ!!
あれが霧獣の核!!」
関羽が目を見開く。
「なるほど……!!
霧獣を操る“式盤”……
確かにあれが無ければ霧獣は維持できない!」
張梁の表情が初めて険しくなる。
「……ほう。
ここまで見抜くとは。」
劉備は拳を握り、吠えた。
「張梁!!
あなたを倒す!!」
張梁は手を上げた。
「来い。
ただし――霧獣を越えられればな。」
霧獣が吼え、
百の顔が三兄弟へ向く。
グオオオオオオオオオッ!!!
張飛が拳を構えた。
「やってやるよ!!」
関羽が刀を横に構えた。
「劉備殿。
突破口を開く……!」
劉備が息を吸う。
「三人で――
張梁へ辿り着くんだ!!」
三兄弟が走り出す。
霧獣の巨大な身体が立ちはだかる。
張梁の声が響く。
「さあ――
ここから先は“地獄”だ。」
________________________________________
第10章 霧獣突破戦
――呪印板を破壊せよ――
呪霧回廊が震えた。
霧獣は百の顔をねじり合わせ、
地の底から響くような唸り声を上げる。
グオオオオオオオオオオ……!!
張飛が吠える。
「来やがれ化け物ォォ!!」
関羽は刀を構え、静かに見据える。
「劉備殿。
まずは“混乱した顔”を狙って、
行動パターンを崩します。」
劉備は頷く。
「うん!
張飛、右側の怒りの顔を叩いて!」
「任せろォ!!」
張飛が赤雷を纏った拳を振り下ろす。
ドガァァァン!!
霧獣の右面が一瞬で吹き飛んだ。
しかし――
霧はすぐに再生する。
張飛が叫ぶ。
「再生すんの早ッ!!」
関羽が冷静に分析する。
「“顔”が核ではありません。
あくまで式盤――
張梁の呪印板を壊さねば。」
劉備は共鳴波を霧獣に放ちながら叫ぶ。
「でも、式盤の前にこの霧獣がいる限り――
張梁には辿り着けない!!
三人で道を作るしかない!!」
張飛が拳を振り回しながら言う。
「兄者!! どこ殴りゃ効く!?」
劉備は霧の流れを凝視し――
目を見開く。
「あそこ!!
胸の中心!!」
関羽も波形を読み取る。
「中心部に……
“霧の収束点”がある!!
あそこが弱点!!」
張飛が跳び上がる。
「了解だぁ!!」
霧獣の胸部に向けて拳を叩き込む――
が、
ズグァァァァン!!!
霧獣が身を捩り、
無数の手が張飛を捕まえた。
張飛「なっ……!?
手が増えて……!」
関羽が叫ぶ。
「張飛!!離れろ!!」
ズバァァン!!!
青龍煌刃が霧の手を切断し、張飛を解放する。
関羽「この獣……
“霧の形状”を自在に変化させています。
近接戦から離れた方がいい!」
張飛「離れてたら核に届かねぇだろ!!」
劉備は歯を食いしばった。
(僕の共鳴波……
もっと精密に……
もっと深く……
霧の内部へ……!)
胸部炉が蒼く光り、
共鳴波が霧獣全体に浸透していく。
張梁が驚き、呟いた。
「……霧獣に“共鳴”させた……だと?」
劉備が叫ぶ。
「張飛!!
あいつの胸の内部!!
“核の欠片”みたいなのが集まってる!!」
張飛が吼える。
「よっしゃ!!
そこにぶち込めばいいんだな!!」
関羽が静かに指示する。
「張飛が“力”、
私が“道”、
劉備殿が“共鳴”。
三人で霧獣の心臓を穿つ!!」
三兄弟は同時に動いた。
________________________________________
◆ 三兄弟 連撃パターン:
《仁・義・勇 三連穿さんれんせん》
劉備が前に出る。
「共鳴――最大解放!!」
蒼い波が霧を押し分け、
霧獣の胸部へ一直線の道を作る。
関羽がその道沿いに走る。
青龍煌刃が霧を切り裂き、
波動の道をさらに広げる。
関羽「張飛!!
今だ!!」
張飛の雷轟甲が赤く輝く。
張飛「喰らえぇぇぇ!!
雷轟――」
拳が蒼い共鳴波と青龍の斬撃に重なり――
三人「穿うがて!!!!!」
ドオオオオオオオオオオオオオォォン!!!
霧獣の胸部が爆発した。
黒い霧が四散し、
内部から“黒い破片”が飛び散る。
張飛が叫ぶ。
「当たってる!!
核に届いてるぞ兄者!!」
劉備が息を荒くしながら頷く。
「もう一度!!
もう一発で霧獣は崩れる!!」
だが――
張梁が初めて怒号を上げた。
「黙れ小童ァァ!!
霧獣は“人の魂”を喰って進化する!!
貴様らごときの拳で……
破れるものかァ!!!」
呪印板が黒く燃え上がる。
霧獣の身体が一気に巨大化し、
霧の刃が三兄弟へ襲いかかる。
劉備「来る!!」
張飛「避けろォ!!」
関羽「構えろ!!」
三人は跳び、
霧獣の最後の大技を避けた。
その瞬間――
劉備の共鳴波が、霧獣の奥にある“核の中心”を照らす。
劉備が叫ぶ。
「張飛!!
あそこ!!
“霧の芯”が完全に見えた!!」
張飛が拳を握る。
「任せとけぇ!!
兄者の道があるなら――
俺の拳は届く!!」
関羽が道を切り開く。
「行くぞ、張飛!!
決着をつける!!」
張飛が跳び、
拳を霧獣の心臓へ叩き込んだ。
「雷轟――終極穿しゅうきょくせんッ!!!!」
ズガァァァァァァァァァアアアアアアン!!!!
霧獣が完全に砕け散った。
百の顔が空気へ溶け、
霧が消えていく。
張梁の呪印板が悲鳴をあげた。
張梁「ぐっ……!!
よくも……我が霧獣を……!!」
劉備が叫ぶ。
「張梁!!
覚悟して!!
次は――あなたを倒す!!」
張飛と関羽が劉備の左右に立つ。
張飛「行くぜ兄者!!」
関羽「これで終わらせる。」
張梁は静かに立ち上がった。
「……よかろう。
では――“人公将軍”として、
真に相手をしてやろう。」
呪印板の光が収束し、
張梁自身のアーマードが姿を現す。
闇のような漆黒装甲。
霧の流れをまとった武装腕。
そして、胸部に浮かぶ“術式の核”。
張梁「さあ来い、義兄弟。
ここから先は――
呪いと術の極致。
覚悟して進め。」
三兄弟は武器を構える。
次は本体戦。
霧獣を超えた、“術の将軍”との決戦が始まる。
________________________________________
第11章
人公将軍・張梁 本体戦
――術の極致と三兄弟の突破口――
霧獣が砕け散り、
呪霧回廊から白霧が晴れていく。
だが――その中心に立つ男の気配は、
逆に濃密さを増していた。
張梁のアーマードは、
まるで“夜”そのもののような黒。
装甲は薄いのに重厚で、
動くたびに霧の尾を引く。
胸には、複雑な術式核が輝いている。
張飛が吠える。
「てめぇ……
今度は霧じゃねぇのかよ!!
次は何だ、闇か!? 影か!?
はっきりしろよオイ!!」
張梁は薄く微笑んだ。
「はっきりしよう。
――我が術は、“心”と“意図”そのものだ。」
関羽が刀を構えながら言う。
「意図……?」
張梁は手を軽く上げた。
次の瞬間。
空間が歪んだ。
劉備の視界が揺れ、
張飛の位置が一瞬“反転”するように見えた。
張飛が驚く。
「な……なんだ今の!?
世界がひっくり返ったみてぇな……!」
関羽が息を呑む。
「これは……
“意図の反転”……
相手の動きを“逆方向に見せる”術……!」
張梁は静かに語る。
「敵の意図が見えれば――
その意図を“逆さま”にして戻してやるだけのこと。」
その瞬間――
張飛が踏み出した足が、
まったく違う方向へ滑った。
「うおおっ!? なんだこりゃ!!」
劉備が叫ぶ。
「張飛、気をつけて!!
“自分が踏み出そうとした方向”と
“実際に動く方向”が逆転してる!!」
張飛「ややこしすぎるわァァァ!!!」
張梁は薄く、優しげに笑った。
「“人の行動”とは、心と意図の結果……
ならば、心と意図を裏返せば、行動は狂う。」
劉備の胸がひどくざわつく。
(この術……
何をするにも裏目に出る……
これじゃ近づくことすらできない……!)
張梁のアーマードが指を鳴らした。
パチン
その瞬間、
空間に光の紋様が一斉に展開される。
________________________________________
◆ 張梁の術式①
《反意符はんいふ》
“行動の方向が反転する呪術紋”
紋が地面に浮かび、
踏み込んだ者の動きを否応なしに反転させる。
関羽が試しに一歩踏み込む。
スッ
関羽の身体は逆方向へ“滑り返された”。
関羽「……!
これは……厄介すぎる……!」
張飛が怒鳴る。
「近づけねぇじゃねぇか!!」
張梁は静かに言った。
「理解したようで何より。
だが反転は“第一段階”にすぎぬ。」
劉備「第一段階……?」
張梁が手を振ると、
空間一帯が黒く染まった。
暗く、小さく、重い。
劉備が息を呑む。
(視界が……狭まっていく……!
まるで“心が萎縮”してるみたい……!)
張梁「これが第二段階。
“意図を萎縮させる術”。」
関羽が呻く。
「劉備殿……
気を抜けば心が折られます……!」
張飛が吠える。
「折られねぇよ!!
俺は兄者の拳で殴られるまで折れねぇ!!」
劉備が叫ぶ。
「張飛!!影のときみたいに無理に踏み込まないで!!
まずは“術式そのもの”を壊さなきゃ……!」
張梁のアーマードの指先から、
黒い光線が撃ち出される。
ジャッ!!
劉備が間一髪で避ける。
「くっ!!
速い……!!」
関羽「劉備殿、術式の核は“胸部”。
ただし周囲の術式紋を壊さなければ届きません。」
張飛「どーすりゃ壊せるんだよ!!」
劉備は共鳴波を最大展開し、
霧の残滓と黒い空間を読み取った。
(この“反意符”……
動きの反転は術式紋が発してる……
なら、その紋に“逆位相の共鳴波”を当てれば――)
劉備が叫ぶ。
「――二人とも!!
“反意符”の紋を狙って!!
共鳴波で紋の反転を打ち消す!!」
関羽が刀を構え、
青龍煌刃に蒼い波動が流れ込む。
「……なるほど。
反転を“反転”させる……!」
張飛が拳を握る。
「つまり殴ればいいんだな!?」
劉備「うん!!
殴りつつ、波を放つ!!」
張飛「得意分野だァァァ!!!」
________________________________________
◆ 三兄弟・対術式戦術
《逆位相連撃ぎゃくいそう・れんげき》発動
劉備が共鳴波を地面へ流す。
関羽が霧を裂くように斬り、
紋を露出させる。
張飛が拳を叩き込む。
バギィィィィィィン!!!!
ひとつ、紋が砕けた。
張梁が初めて顔をしかめた。
「……ほう。
わしの術式を破るか。」
劉備が息を荒げながら言う。
「張梁……
あなたの術は強い。
でも僕たちは――
心を、意図を、絆を反転させない!!」
張飛「兄者の言う通りだァァ!!」
関羽「劉備殿の心、我が心、張飛の心――
三者の流れを断つことはできぬ!」
三兄弟は次々に紋を破壊していく。
バンッ!!
ガキン!!
ドガァァン!!
空間が揺れ、
黒い呪術空間が崩れ始める。
張梁の声が震えた。
「貴様ら……
“術”を力で突破するなど……
本来あってはならぬ……!」
劉備が叫ぶ。
「僕たちは術士じゃない!!
でも――
人の心の強さは、術に負けない!!」
霧が完全に晴れた。
張梁のアーマードが露わになる。
張飛が吠えた。
「行くぜ兄者!!
こいつブッ倒して帰るぞ!!」
関羽が蒼い刀を掲げる。
「決着の刻。」
張梁の胸部核が強烈に輝いた。
「ならば――
全霊をもって応えよう。」
アーマードの霧が収束し、
術の核が“上位進化”を始める。
劉備の目が見開かれる。
(これが――
“人公将軍”の本気……!)
張梁「来い、劉備――
そして義兄弟の三人よ。
次は“死”の一手だ。」
三兄弟は構える。
本気の張梁戦が始まる。
________________________________________
第12章
張梁・真術形態
――“心滅式しんめつしき”と三兄弟の最後の突破口――
呪霧が完全に晴れ、
張梁の黒装甲が静かに揺らめいていた。
だが次の瞬間――
バチィンッ!!!
胸部の術式核が光を失い、
代わりに“何か”が浮かび上がった。
劉備が息を呑む。
「……黒い……心臓……?」
張梁は静かにうなずく。
「これは“心核しんかく”。
心を呪に書き換え、
術に転用するための――
人公将軍だけに許された“禁核”である。」
関羽が鋭く見る。
「胸に……生きた“心”がある……?」
張梁は微笑む。
「正確には――
何百もの“喰らった心”の集合体。」
張飛の顔が歪む。
「つまり……
てめぇ、喰った兵士たちの“心”を核にしてんのかよッ!!」
張梁は淡々と答えた。
「喰らった心の“願い”“恐怖”“怒り”“絶望”……
すべてを術に変える。
それが――
“心滅式しんめつしき”。」
劉備が震える声で呟く。
「そんな……
心を……使い捨てるなんて……」
張梁は冷たい笑みを浮かべる。
「心ほど扱いやすい力はない。
強い心は折ればよい。
弱い心は呑めばよい。
迷う心は盗めばよい。」
そして、張梁は告げた。
「それでは――
心滅式・零ゼロ――発動。」
胸の心核が脈動する。
次の瞬間、
世界が“静まり返った”。
風が止んだ。
音が消えた。
霧が凍る。
張飛が叫ぼうとして――
声にならない。
関羽が構えようとして――
腕が動かない。
劉備が息を吸おうとして――
胸が締め付けられる。
(……何……これ……
身体が……重い……
いや……“意志”が……動かない……!)
張梁が静かに言う。
「これが心滅式。
“意図”を滅し、“意志”を奪う術。
今、貴様らは……
自分の意志で動くことはできぬ。」
張飛が歯を食いしばる。
(くそっ……身体は動くのに……!!
心が……動かねぇ……!!)
関羽が胸の奥でつぶやく。
(これは……
身体の束縛ではない……
心の“停止”……!!)
劉備の眼前で、張梁が歩み寄る。
「さあ終わりだ、義兄弟よ。
わしの術に抗う心は存在せぬ。」
劉備は全身が軋むように痛む中、
かすかに拳を握った。
(僕は……
僕だけは……
止まらない……!!)
だが――
意志が凍る。
(ダメだ……もう……動けない……)
張梁が手をかざした。
「心滅式――
壱いち:心零落しんれいらく。」
劉備の視界が“暗く沈む”。
張飛の怒りが“虚ろ”になる。
関羽の誇りが“音を消す”。
三人とも、心の“光”が薄れていく。
________________________________________
◆ しかし――
“光”が消える寸前。
劉備の心の奥から、
小さな小さな声が響いた。
――だいじょうぶ。
――にいちゃん。
――おれたちなら、いける。
(……え?)
それは張飛の、
あの日の不器用な声。
――劉備殿。
――貴殿の心は……強い。
――誰よりも、折れぬ。
(……関羽……?)
そして関羽が初めて劉備に誓った日の声。
次に、
張飛と関羽の心の奥にも声が届いた。
張飛の胸に響く、劉備の声。
――張飛。
――君はいつも、僕を前に押し出してくれる。
――ありがとう。
――僕は君の強さを信じてる。
関羽の胸に響く、劉備の声。
――関羽。
――君の冷静さが、いつも僕を救う。
――君がいてくれるなら……
――僕は恐れない。
三兄弟の意志が、
つながる。
張梁の“心滅式”の黒い力が、
三人の内から弾かれていく。
(僕は……ひとりじゃない……
張飛がいて……
関羽がいて……
僕は――止まらない!)
(兄者がいる……
なら俺は何度でも立ち上がる!!)
(劉備殿……
あなたがいる限り、
私は揺らがぬ!!)
三つの心光が、
ひとつに重なった。
________________________________________
◆ 三兄弟“心の奥義”
《三心共鳴さんしんきょうめい》
誕生
劉備の胸の炉が強く脈動する。
張飛の雷が、怒りではなく“勇気”へと変わる。
関羽の刀が、誇りではなく“信念”で輝く。
張梁が初めて後ずさった。
「……何だ……この光は……!?
心滅式が……効かぬ……!?
馬鹿な……!!
心とは最も崩れやすい力のはず……!」
劉備がゆっくりと顔を上げた。
目に“光”が戻っている。
「そうだよ……
心は弱い。
簡単に折れる……揺れる……迷う……」
劉備は拳を握る。
「だけど――
三人で支え合えば、折れない!!」
張飛が吠える。
「兄者ぁぁ!!
俺らの心は止まらねぇ!!」
関羽が刀を構える。
「張梁。
貴殿の術は強い。
だが――
我ら三兄弟の“絆”には届かぬ。」
張梁は叫ぶ。
「やめろォォォォ!!
心滅式は絶対なのだ!!
心など……心などァァァ!!」
だが――
三兄弟は動き出す。
三人の動きには、
もう“反転”も“萎縮”も通じない。
張梁が叫ぶ。
「来るなァァァァ!!!!!」
三兄弟の影が重なり――
ついに。
張梁の胸の 心核しんかく に、
三つの拳と刀が迫る。
________________________________________
第13章
張梁・心核破壊戦
――人公将軍、崩壊の刻――
張梁の胸に浮かぶ巨大な心核が、
ドクンと脈動した。
その脈動は――黒い光ではなかった。
赤い。
赤く、温かい。
どこか人のものに近い色。
劉備が一瞬、息を呑んだ。
(この心……
何か……悲しみが流れ込んでくる……?)
張飛が叫ぶ。
「兄者!!とどめだァァ!!」
関羽が避けつつ分析する。
「劉備殿、あれは“術式核”ではない……
あれは……」
張梁が苦しげに叫んだ。
「来るなッ!!
これは……わしの……“本心”だ……!!
見るなぁぁぁ!!」
張飛が目を見開く。
「本心だぁ!?
てめぇの心なんか知らねぇよ!!」
張梁は震える声で言った。
「これは……
誰にも見せぬはずだった……
兄者……張角様にすら……
見せるつもりはなかったのだ……!」
その言葉に、劉備は息をのみ、
拳を止めかけた。
(張梁……
張宝とも違う……
力でも狂気でもない……
“孤独”……?)
関羽が静かに言う。
「張梁……
貴殿は“心の術”を扱いながら……
誰よりも孤独であったのではないか?」
張梁の目が揺れる。
「孤独……?
違う……
違うのだ……!」
心核の中に、
小さく震える声が響いた。
――やめてくれ……
――誰も……失いたくない……
劉備の胸が痛む。
(これは……
誰かを守りたかった心……?)
張梁は震え、叫んだ。
「黙れッ!!
それは……
わしの……弱さ……!!
弱さを捨てるために、
心を滅ぼしたのだァァァ!!」
張飛が吠える。
「違ぇよ!!弱さを捨てたんじゃねぇ!!
弱さに負けて逃げただけだ!!」
張梁の顔が歪む。
「黙れェェェ!!!
わしは逃げてなどいない!!
心など……いらぬ!!
心があるから……
わしは……“兄者を救えなかった”のだ……!!」
三兄弟全員の表情が変わった。
関羽「……兄者?」
劉備(張角……?)
張飛「てめぇ……救えなかったって……?」
張梁は叫ぶ。
「兄者張角は“天公将軍”であり絶対の存在……
だが黄巾の志を広めるほど、
兄者の心は削られ……
弱くなり……
わしは……救えなかった……!」
心核の中から、
また声が響く。
――兄さま……
――助けたい……
――救いたい……
張梁が胸を押さえ、膝をつく。
「だから……
弱さを捨てた……
心を殺した……!!
心なき“人公将軍”となった……!!
なのに……
なのに何故だァァァ!!!
なぜ心核は……まだ残っている!!」
張飛が吠える。
「そりゃあ残ってるに決まってんだろ!!
兄者を救いてぇ心なんて……
誰も捨てられねぇんだよ!!」
関羽が静かに言った。
「張梁。
己を責めるな。」
劉備は胸が熱くなり、
張梁へ一歩進んだ。
「張梁……
あなたは……兄を愛していたんだね。」
張梁の目が大きく揺れる。
「愛……?
わしが……兄者を……?」
心核の赤い光がゆっくりと脈打つ。
――兄さまを……
――どうか……どうか救いたい……
張梁の目に涙が滲んだ。
「もう……やめてくれ……
聞きたくない……
弱さなど……もういらぬ……
心滅式こそが……強さなのだ……!!」
劉備は叫んだ。
「違う!!
強さは、弱さを捨てることじゃない!!
三人で支え合うことだ!!
僕たちのように!!」
張飛「弱さを認めろ!!張梁!!」
関羽「己を責めるな!!張梁!!」
張梁は耳を塞ぎ、うずくまる。
「やめろ……
やめろォォォ!!!
弱さを思い出させるなァァァ!!!!!」
心核が激しく脈打つ。
黒い光が溢れ、
大地が震えた。
張梁「やめろォォォ……!!
心核が……暴れ出す……!!!
来るな……!!
来るなァァァァァ!!!」
劉備は涙を流しながら叫んだ。
「張梁!!!
あなたの心は――
“弱いままでいいんだ!!!”」
その瞬間。
三兄弟の共鳴が最大に膨れ上がり、
三人の拳と刀が
張梁の心核へ向かって伸びた。
張梁の絶叫が霧散する。
「いやだ……
壊れる……!!
心が……!
兄者ァァァァァァ!!!!」
バギィィィィィィィィン!!!!
心核が砕け散った。
赤い光が地に降り注ぎ、
呪霧回廊が完全に浄化されていく。
張梁はゆっくりと倒れ込んだ。
その顔には――
どこか、安堵の色があった。
________________________________________
◆ 人公将軍・張梁――散る
張梁は落ちた面頬の隙間から、
かすかに微笑んだ。
「……義兄弟よ……
不思議と……悔しさはない……
兄者を救おうとして……
迷い……あがき……
心を誤った……
だが……
三人の心……美しかった……」
劉備はそっと彼の肩に手を置く。
「あなたは……
本当はずっと優しい人だったんだね。」
張梁は薄れていく意識の中で呟く。
「わしは……
兄者の……誇りの弟でありたかった……
それだけ……だったのだ……」
最後に、
張梁の口が小さく動いた。
「兄者……
どうか……安らかに……」
黒装甲が霧になり、
張梁は静かに消えていった。
呪霧回廊は完全に光へ変わる。
三兄弟は立ち尽くした。
張飛は拳を握りしめ、
「……張梁……
てめぇ……最後……
いい顔してたじゃねぇか……」
関羽は静かに目を閉じる。
「術に溺れ……
心を失った将軍。
だが最後は……
人として逝った。」
劉備は夕暮れの光の中で、
そっと呟いた。
「……ありがとう。
あなたの心を……受け止めるよ。」
張梁――撃破。
しかし、
三兄弟の胸には重い影が差していた。
張梁が最後に呼んだその名――
“兄者 張角”。
彼はまだ生きている。
そして――
曲陽最深部で待つ最後の“災厄”。
________________________________________
第14章 “天公将軍” 張角
――黄巾最大の怪物、覚醒――
張梁が散った直後。
曲陽の最奥から、ゆっくりと“鐘の音”が響いた。
ゴォォォォォン……
重く、悲しく、深い音。
劉備が震える。
(……これは……
張梁が最期に呼んだ“兄者”。)
霧が再び立ち上がり、
曲陽の最深部――巨大な広間に一つの影が立つ。
老人だ。
だが、ただの老人ではない。
金色の呪印が皮膚の下で脈打ち、
白髪はまるで雷のように逆立ち、
その瞳は――“世界の終わり”を知る者の光。
天公将軍・張角。
張角は、倒れた張梁へ向けて
静かに手を伸ばした。
「……梁。
お前は……よく戦った。
心を失ってまで……
我が理想に従ってくれたな……」
張角はその手をゆっくり胸へ戻す。
「すべて……兄の不徳であった。」
劉備、張飛、関羽は息を呑んだ。
張飛が震える声で言った。
「……なんだ……あの悲しい顔は……」
関羽は眉をひそめる。
「張角……
弟を愛していたのか……?」
張角は振り返り、三兄弟を見つめた。
その瞳は底の見えぬ深さで、
三兄弟を見抜くように揺れていた。
「……お前たちが……梁を……逝かせたのか。」
劉備が拳を握る。
「……僕たちは、張梁を殺したんじゃない。
彼の心を、解き放ったんだ。」
張角は、静かにうなずいた。
「……ならば感謝しよう。
あれは長く苦しんでいた。
心を滅ぼしてまで、我に尽くした。」
だがその静寂は――
次の言葉で破られた。
張角は掌を天に向け、呟いた。
「……そして、
世界を滅ぼす理由が一つ増えた。」
広間が揺れた。
天井が砕け、
金色の呪印が空を覆い尽くす。
呪いが風となり、
風が雷となり、
雷が――“天地を割る光”となって降り注ぐ。
張角が静かに名乗る。
「天公将軍・張角。
天を正し、乱世を洗う者。」
劉備たちは――
“世界の理そのもの”をねじ曲げる怪物と対峙した。
________________________________________
最終章
曲陽天破戦きょくよう・てんぱせん
――天公将軍との決着――
張角は天へ叫んだ。
「天よ応えよ!!
我が身は雷!!
我が声は風!!
我が心は――天地の理!!」
雷が曲陽全域に走り、
空気が焼けるように震えた。
張飛が吠える。
「ふざけんじゃねぇ!!
張梁を苦しめたのも!!
この戦乱を起こしたのも!!
全部てめぇだろうがァァ!!」
関羽が刀を構える。
「劉備殿、張飛。
これが最後です。
“全力”で行かねば勝てません。」
劉備は深く息を吸い、
静かにうなずいた。
「行こう……
三人で……
張梁の心も背負って!!」
三兄弟は走り出した。
天を割る雷。
大地を裂く風。
光油さえ焦がす呪印の嵐。
だが――
三兄弟の共鳴が、それをすべて押し返した。
張角は目を見開く。
「……これは……梁の……“心の残滓ざんし”……?」
劉備は叫んだ。
「張梁の心は……あなたを愛していた!!
あなたを、救いたかったんだ!!!」
張角の表情が、
一瞬だけ揺れた。
姫のように繊細で、
兄のように深い愛情の揺らぎ。
その隙を――
見逃す三兄弟ではなかった。
張飛「くらえぇぇ!!!」
関羽「決着の刻!!」
劉備「三人の心で――終わらせる!!」
三兄弟は同時に叫ぶ。
《三心共鳴・光滅陣こうめつじん》!!!
蒼・赤・青の光が収束し――
曲陽の空に巨大な光柱が立ち上がる。
張角がその光に呑まれながら、
静かに呟いた。
「梁……
すまぬな……
兄は……最後まで……
お前を救えなんだ……」
光が広がり、
張角の姿が消えていく。
その表情は――
涙を浮かべ、
どこか穏やかだった。
________________________________________
◆ 曲陽戦――終結
広間につんとした静寂が戻る。
天は晴れ、
霧は完全に消えた。
劉備たちは立ち尽くし、
胸の奥にある重さを抱えながらも……
どこか温かい風を感じていた。
張飛がぽつりと言った。
「……終わったんだな……」
関羽がうなずく。
「ええ。
長い戦いでした。」
劉備は拳を見つめ、
小さく呟く。
「張宝も……
張梁も……
張角も……
本当は、乱世の闇に飲まれただけだったんだね……」
張飛は鼻をすすった。
「なんだよ兄者……
そう言われると涙でちまうだろ……」
関羽は微笑む。
「劉備殿らしい言葉です。」
劉備はゆっくり顔を上げた。
「行こう。
乱世は……まだ終わらない。
でも――
僕たち三兄弟なら進める。
何度でも。」
三人は歩き出した。
破壊された曲陽の街に、
ほんの少し、
春のような風が吹いた。
________________________________________
エピローグ
――三人の道、未来へ
曲陽は曹操軍によって完全制圧され、
民は救われた。
三兄弟は戦いの傷を抱えながらも、
互いの心を確かめるように
固く頷き合う。
張飛「兄者、次どこ行くんだ?」
関羽「劉備殿、方針を。」
劉備「まずは……民を救いに行こう。
僕たちは、“そのために”戦ってる。」
張飛の顔が明るくなる。
「おう!!ついてくぜ兄者!!」
関羽「劉備殿に、士道の栄光あらんことを。」
三兄弟は歩き出した。
世界はまだ乱世。
だが――
その中心に立つ三人は、
もう迷わない。
心はひとつ。
道はひとつ。
これにて、「曲陽決戦編」――完結。
アーマード三国志 ~乱世を駆ける光鋼の刃 ~ 近藤良英 @yoshide
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。アーマード三国志 ~乱世を駆ける光鋼の刃 ~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます