第21話 界橋
──
その報が届いたのは、
この前年、
これに怒った公孫瓚は、そのまま軍を
袁紹も公孫瓚が大きな動きを見せたことに危機感を抱いて、公孫瓚の従弟である
──
という思いは変えず、勃海郡に現れた
「領内の賊は討った。これからわれらは冀州に向かう」
公孫瓚の軍は勢いづいて、
もともと、公孫瓚の軍は騎兵を主とした精強な軍である。また、もともと冀州は
袁紹は各地の城に軍を送って、奪還しようと図ったが、ついに
まだ戦闘を始めていないせいか、この場所に血が流れるとは思えないほどに穏やかな風があたりを吹いている。
「兄上──」
公孫瓚がここまで、ほぼ抵抗のないままに進んできたということは、兄の居る
──
とすら言うかもしれない。そうして敵同士になったのなら、兄は自分に容赦はしないだろう。
実家の次兄はどうしているであろうか。
さきに自分が講じた策が、混迷を極めるための一助になったような気がして、悔いる気持ちがあった。
「
顔良は先陣の主将である
袁紹が韓馥から冀州を譲られた際に、先んじて袁紹の下に降った人物である。
麴義は黙って公孫瓚の軍を見ていた。
「お前は、勝てないと思うか。
「歩騎を比べると八倍の差があるといいます。かの軍とわれらの軍を比べると、数は変わらないのに騎兵は圧倒的に向こうのほうが多く、洗練されています」
顔良は自分の思う正直な所感を述べた。しかし、これを聞いた麴義は
「甘いな。数と質だけで判断するのは戦を知らない」
戦の経験は麴義のほうが圧倒的に多い。彼は
顔良は個人で戦ったことはあるが、将軍として戦場を
「
「聞くだけか。知らないのなら、知ろうとするのなら、黙ってこれから起こることを目に焼き付けろ。そして、後から考えろ。盗めるものは盗め」
麴義は革袋に入った水を一口飲むと、自分の寝る場所へと帰っていった。
翌日、公孫瓚の軍は本隊を除いた主力が、橋を越えてきた。そして袁紹軍の目前に迫ると、陣形を整えて今にもぶつかり合おうという姿勢をとった。
麴義らの軍は袁紹軍の本営から突出するようにして、布陣していた。
将である麴義と顔良の前には大きな盾を持った歩兵が八百。そして両翼には
──こんなに少ない兵で
彼方には
麴義の配置した千三百の軍勢は、みな盾に身を隠し、防御の姿勢をとっている。
攻めてこないと見た公孫瓚の軍は、袁紹軍の先鋒が少なく突出しているのを見て
──まずは、この軍を討って士気を挙げる
と狙いを定めて軍を動かした。
「将軍、きましたぞ」
顔良が麴義にそういったが、麴義は何も反応を示さなかった。敵の騎兵はすでに一里(約400m)もないところまで来ている。
顔良の心の臓が、鼓動を速くした。
──このまま、われは
そういった想像が冷たい汗を流させる。その
あと半里(約200m)。
あと百歩(約140m)。顔良は
あと五十歩(約70m)。突如として麴義が立ち上がり、手に持っていた小旗を振るった。
周りの兵もそれに従って立ち上がる。大音声を発し、弩を放つ。
ここまで駆けてきた騎馬たちは、突如立ち上がった
後ろから来る兵と、前から撃たれる矢の雨とに揉まれ、混乱した敵軍を
「突撃をかけるぞ」
と更なる気勢を上げさせ、一気に突っ込んでいった。
顔良も剣を抜き、駆けていく歩兵を後ろから追いかける。敵との距離は近い。百歩も行かぬうちに敵兵の集団と当たった。ひたすらに剣を振り二、三人を斬った。
すると、馬に乗った一人の武者が鋭い眼光をこちらに向けて、突っ込んできた。
「袁紹軍の将とみた。覚悟」
そう叫びながら武者は矛を振り上げた。顔良は
二回、三回。相手の斬撃を避けたが、姿勢を崩してしまった。
──ここで
そう思った瞬間、武者に矢が当たって馬から落ちた。顔良はすかさず剣をその武者に突き刺し、止めを刺す。
武者の乗っていた馬が逃げると、その陰には麴義が立っていた。
「ぼさっとするな。来い」
そういうと、橋の方向に向かって走り出した。顔良も、これに
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