第19話 決裂

 袁術えんじゅつ州に孫堅そんけんを派遣してその刺史ししとしたとき、袁紹えんしょう周昂しゅうこうら兄弟を派遣して同じく豫州の刺史としよう目論んだ。当然、豫州では争いが起こる。

 よう城という場所で起こったこの戦いは最初、不意を突かれる形で孫堅が敗れた。

 突然の来襲に対策を迫られた袁術は、けん帝から援軍を求めるために劉虞りゅうぐに送られた使者の劉和りゅうかを拘束し、陽城へ援軍を寄せるように書かれた文書を用意させると、これを劉虞に届けた。

 劉虞はこの手紙を信じた。そのそばにいた公孫瓚こうそんさん

長安ちょうあんにおられる献帝が、わざわざ袁将軍を通じて手紙を寄こすものでしょうか。もしや袁将軍は兵を奪おうとしているのではないですかな」

いさめたものの劉虞には聞かれなかった。ならばと袁術との繋がりを作るために自らも従弟じゅうてい公孫越こうそんえつを指揮官として、さらに袁術への告げ口も持たせて派遣したのである。

 こうして豫州に向かった公孫越であったが、陽城でのしゅう兄弟との攻防において流れ矢にあたって戦死してしまう。

 公孫瓚がこの知らせを受けたときに

──おのれ袁紹

と思ったのは当然で、さらに言えば公孫越の告げ口によって捕らえられそうになった劉和が袁紹のもとに逃げ込んだことによって、袁紹と公孫瓚の対立は決定的になった。

 さらに言えば袁紹と袁術の豫州を奪い合ったことによる分裂も、反董卓連合の完全な瓦解を象徴する出来事であった。


 顔良がんりょうは拡大していく戦線をて、時代が泰平を求めていないことを悟った。

──われは、もう畑を耕せないやもしれぬ

 今となっては、あの日々を懐かしく感じる自分がいる。

 だが、今の自分には前に進むことしか許されていない。高きから低きに流れる水のようなものだ、と感じた。

「飛ぶためには屈まねばならぬ」

父の言葉が蘇ってきた。まだ自分では気が付いていないだけなのかもしれない。自分が知り得ないはねを持っていたとしたら、それをどう使うべきなのか。

 顔良の手の中には

きく将軍にき、参陣せよ」

と書かれたかんが握られていた。

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