第18話 陰徳
ここから諸侯らは、董卓を自身に
特に影響が大きかったであろう動きがある。
この三つの主な動きが、関東(この場合は
韓馥が公孫瓚から攻撃されると、その周りの郡を収める人間も、それに付け込んで冀州の土地を
冀州はもとから天下の
そう考えると、天下が総じて食料に困窮し、国力が弱まると同時に各地の領主が台頭し始めた時代に、冀州という土地が狙われるのは当然の流れともいえる。
韓馥は平時ならば良い領主となれたかもしれないが、こういった乱れた世には似合わない人物であった。公孫瓚を含めた周りの動きに怯えて、この諸郡の行為を
この動きは
「冀州の静まることなし」
という文言がある。さらに、兄から送られてくる
「最近は臨戦の構えを崩せず、皆が疲弊の色を見せている」
という言葉を書き添えられているからである。
顔良はこの文を読むたびに、家族が育てている作物が炎に巻かれる様を想像して不安になった。
──戦が
自分がこうなることを予期していながら、果たして
もしかしたら、戦乱のうちに家族が死ぬかもしれない。それが
身が震えた。口を押えてこれに耐えようとしていたが、芯から氷のような冷たさが湧き出てくる。
「
声がすぐ横から聞こえた。今まで気づいていなかったらしい。慌てて返事をした。
「ああ、これは」
「叔善殿、顔色が優れませんな。酒でも飲まれますか」
「いえ、仕事中ですので。
すでに夕日は落ちている。酒を飲んでから来ていても可笑しくはなかった。
「叔善殿と話をするのにそんなことは致しますまい。政務の延長できたのですよ」
友若、とは
彼は名家の生まれで、董卓政権下で司空に
「
とまで評された
「もしかして、家のことを思い出されていたのですかな」
荀諶が問いかけてきた。かれもその才能と家格を袁紹に買われて直に
「ええ、私の家は冀州ですから」
「そういえば、そうでしたな。
荀諶はその口を結んだ。冀州がいま戦火の的になりかけているのは知っているだけに、ここからは自分ではなく顔良に会話の主導権を渡そうとしたのかもしれない。
「友若殿。私がこのまま
顔良は思うところをありったけ、言葉にしてみた。もしかしたら、荀諶ならこれを受け止めてくれるかもしれない。そう思ったのである。
荀諶は少し
「叔善殿」
荀諶が顔を上げた。何かを考え付いたようである。
「今、冀州は主に
顔良は、何かを掴んだ。堂陽を、冀州を守る方法。
「私に、案があります」
顔良は策を話し始めた。
まず、公孫瓚と袁紹が協力関係にあることが前提である。例えば、冀州の内いくらかの郡を公孫瓚に
そして、公孫瓚には韓馥に対して圧力をかけるようにだけ指示する。そうすれば、公孫瓚も無理に攻め込むようなことはしないはずである。
今の対応を見る限り、この動きに対して韓馥は大きな軍事行動は起こさない。むしろ、城の中に引きこもって、軍事行動の終結を望むばかりになる。その不安を利用して、袁紹側から冀州明け渡しの使者を出す。
これで明け渡してくれれば、損害を冀州北部の小さな範囲に抑えるのみで、争いを鎮静化できるのではないか。
荀諶は顔良の言った策を興味深そうに聴いていた。そして、聞き終わった瞬間に
「なるほど、なるほど」
と相槌を打った後で、こう聞き返してくる。
「叔善殿、あなたの言っていることは
「ええ、わたしは守りたいのです。守るためにするのです。傷つかせはしたくないのです」
「そうですか。上手くいかなければ──」
「自らに縄をかけて参内いたします」
「わかりました。次に府に呼ばれることがあれば、私から具申してみましょう」
「ありがとうございます。お願いいたします」
荀諶はその言葉の通り、
袁紹はこの策に
「そのようなことをすれば、のちの敵に
袁紹は公孫瓚を信用していなかった。
それもそうである。先の反董卓の動きに参画する、と言っていたのにも関わらず、その背後を脅かすように韓馥を攻め、敗走させているからである。
すでに袁紹の中では敵である、という認識があったかもしれないし、それは
荀諶は
「公孫瓚は確かに信用できません。しかし、冀州を手にしてしまえば天下に名が轟いているのは袁太守です。諸侯は寄る辺を見つけて集ってくるでしょう」
と説得を試みたが、覆すには苦しい言説だった。
けっきょく冀州を実質乗っ取るための策は、こののち
そして荀諶、
ここで終われば袁紹は冀州牧としてその名を広めて、少なくとも周辺地域は
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