第13話 打算
これは
この時の緩和の範囲は民のみならず、
「貧窮させてすまなかった。いりようならば、またこれに加えて給わせよう」
とまで言って、後日改めて金銭を与えたという話が残っている。こうして金銭を追加で与えられた者の中には
──あの
と恥じ入って自死する者も出たというのだから、この時の徳治というものは尋常のものではなかったとみることができる。
皇甫嵩の経世済民はたった一年ばかりのものであった。しかしこれを経験して活気を取り戻した冀州の民たちは、またこうした治世となることを期待して生活することができたのである。
「いまだ漢王朝にはこのような優れた人がいるのだ」
と声に出して
何しろ、皇甫嵩をこの目で見たこともあるし、どのような戦いをする人なのかも知っている。
──いっそ皇甫将軍が漢を治めたならば
そう思ったが、彼に何か野心があったならば、このように人を想った
「ならば、わたしがやるしかない」
ともに土地を管理している次兄の
「
という
衙の中には兄もいる。きっとすべては聞き入れてはくれなくても、部分的には受け入れてくれるはずだ。そうおもって衙から
十日ののち衙から呼び出され、出した陳情に対しての回答を得ることになった。
「先の陳情について、こちらでも検討はした。だが、先の乱によってこちらも疲弊してしまった。言われた通りの条件ではこちらも立ち行かぬと判断し、以下の通りでよいならば、これを行うことにする」
吏士の発した言葉は顔良らの思った通りのものだった。そのために、こちらもやや数字を有利なものに設けていたのである。あとは納得のできる数字が
「まず年貢の量であるが、陳情にあった通りで問題ない。
まずは良い結果を得られた。しかし、これからが重要だった。
「そして五年の
顔良はこの数字を聞いて、明らかに納めなければいけない量が増えているように感じた。十分の七が五年間であれば十分の三十五となり、十分の六が六年間なら十分の三十六である。
わずかだが納めるべき量が増えているし、何より今の不安定な世情では期間が増えるということに危なさを感じる。
いつ、何が起こるのかわからない。廩から追加で年貢を出さなければいけない期間のうちに、また大乱が起きればそれだけ民の負担が大きくなる。それでは、本末転倒でしかない。
「それでは、納得いきません。われらが望むのはみなが安心して食えることです。徴税におびえながら過ごすことになれば、また民は安住の地を目指して流浪します。それが何を呼ぶのかは吏士殿もお判りでしょう。どうか賢明なご判断を」
顔良は語気に力を入れた。この機を逃せばまた天下が危うくなる。それを避けるための一歩が、この陳情にある。そう信じて疑わない彼は一歩も引かない覚悟で、いや、捕らえられ罰される覚悟でここにきている。
吏士は黙った。しかし表情を見るに、顔良の言葉にむっとしたのではない。自らの中にある義心と、官吏として収支を考えなければいけない心とが
吏士の姿を見た顔良は、その表情に明るさを見た。
──きっとこの人は、受け入れてくれる
その確信を持った時、
「わかった。むしろ、三年。十分の八とできないかを掛け合ってみよう」
蓄えられた
この努力はすぐに周囲の人に届き、三度顔良は
このころにはすっかり堂陽のあたりで有名になり、
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