第7話 黄巾
五年ほど経った
「甲子」
と書きつけられたことに不吉を感じた朝廷は、各地にその調査を求めた。
この影響があって各地で取り締まりが強化された結果、
──
この知らせを受けたその日のうちから宦官や兵士らに尋問を行い、これに加わったと疑われるものを尽く捕らえて
これに太平道の首領である
ただ、もともと準備をしていた朝廷側と、慌てて蜂起した張角の側とでは統率の差が出た。
そして各地の主だった反乱地域に対して、王朝の中でも特に優秀な人物に軍を
果たして、彼らが向かった先で見た光景は、黄色い頭巾で頭を
「
といい、叛乱した人々が結託した集団を
「
と呼んだ。
各地の広い
──
顔良と次兄の
門前で官服を着た長兄の
「早く入れ、夕刻には閉めるぞ」
と呼びかけを繰り返している。
──この中にいて私心を持ち込まない兄は逞しい
と顔良は思った。兄や父も同様なことを思っていたようで、堂々とした態度で門をくぐった。
三日三晩ののち、遠くから太鼓の音が聞こえてきた。
──官軍か
そう思った衛兵たちが城壁の上に上って、手で陽の光を
大きく、朱色に染められた旗。間違いなく官軍だ。
この報せを聴いた吏士たちは城壁上に漢に属することを表す旗を挿すように指示し、自らは門の
官軍が城に着くと、門を開けてこれを迎え入れた。軍についていた使者の一人が
「我らは朝廷より命を受け、黄巾の賊を討つために遣わされた、
そういわれた
夕刻。軍が城の周りに駐屯の準備をする中、民の受け入れをあらかた終えた長兄の顔毅が、顔良らのいる街の
「兄上」
「嗚呼、みな無事で何よりだ。われは今から義勇兵らを
「そうでしたか。ならば、ちょうど良かった」
「ちょうど良いとは、まさか」
「わたしも兵として参ります」
「
「承知しております。しかしながら、わたしを三男の身でありながら育ててくれた恩義に報いたいのです。行かせてください」
顔良の目は
「良よ」
父が口を開いた。
「これからは絶えず世が乱れようや。もしお前が死ぬことがあれば、
息を漏らす父の姿を見た顔良も往くべきなのかを迷ったが、次兄の粛は彼の背を推した。
「父上、かつて大事を成すのは必ずや良だと言っていました。かれが雄飛する機会はここなのではありませんか。いまこそ勇ましさを評して行かせてやるべきです」
顔良の父には、次男の粛の方が自分よりもよほど家の中を見ているのではないか、という思いがある。学業に齧り付いていた自分よりも、畑で身を焦がしながら人の中に置かれた彼の方が人を知ってはいまいか。その負い目とも言える感情が父から
「
というひと言を引き出したのである。
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