第6話 立功

 そこから二日、三日と続けて夜襲をかけた。さすがに賊も警戒をしていたのか警邏けいらを置いてはいたが、顔良がんりょうはその間隙かんげきっておどり込むと、たびごとに何人もの首を取って城に戻った。傷をいくつも負ったが、それでも賊の中に幾度いくどとなく斬って入る活躍を見て、吏士りしたちは

──顔良に勇あり

感嘆かんたんし、見る目を変えた。

 そうした行為を七日続けた昼に、城の外に陣取っていた賊から使者がやってきた。

「我々は貴公らの兵の持つ勇気に戦慄せんりつしております。どうか、降伏を受けてくださりますよう」

 この言を待っていた顔良は、吏士にこう言った。

「条件を付けずに受け入れるのがよろしいでしょう。ただ、首魁しゅかいだけは連れ出さねばなりません」

 しかし、吏士の側がそれに納得するわけがなく

「相手を得意にさせはしまいか」

と懸念したが、顔良は

「むしろそれが狙いなのです」

微笑ほほえみをたたえながら言った。


 会談の場には吏士が席につき、顔良がそのかたわらに立った。賊の側からは先ほどの使者と、何日か前に見た首魁とみられる男もいる。降伏に向けての話が進み、酒をわすことで雰囲気がほぐれたのを見計らって、顔良は突然、剣を抜き放ち

「民を惑わせた罪は重い、覚悟しろ」

と言うや否や、一刀のもとに首魁を斬り殺した。おびえた表情を見せる使者に剣を突き付け、厳然とした態度で

「よいか、城外の者に伝えてこい。貴様らの長は死んだ。これ以上、無用に首は取らぬ。また害されたくなければ我らの命に従え、とな」

と言って、城の外にいる流民たちに自らの言葉を伝えさせたのである。

 使者が城の外に出たのち、顔良は返り血が付いたままの顔を拭って吏士に目を向けると、先までの厳めしい顔を和らげて、元来の柔和な表情に戻った。

「吏士どの、ここからが我らの真価が問われるときです」

吏士はこの急烈な行動に戸惑いはしたものの、顔良の言葉に従って城の門を開けて、外にいた流民を迎えた。そしてくらを開放してかゆを作り、畑を作らせることを約束したのである。

 顔良は賊たちとの対決を選んだことによって、その驍勇ぎょうゆう謀略ぼうりゃくを評価されるようになり、その名を挙げた。

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