素直な気持ち

「ちょっと、一旦休憩。頭ん中整理したい」


道の端に寄り、木に背中を預けて座り込んだ。

頭の中で、今の話と一番最初に聞いた話を

照らし合わせてみる。


……まぁ、確かに言ってないね。


言ってないことだらけだったのは否めないけど

あの状況でこんな説明をされても

理解できないし、受け入れることも

できなかったと思う。


仕方なかったんだろうな。

私があそこで首を縦に振らなかったら

2人はこっちの世界に来ることも

叶わなかったはずだから。


「神様も、色々と大変なんだね」


私がポツリと零すと

2人は苦笑いをしながら言う。


「でも今回は、いつもと違って楽しいわ」

「こんなに長い時間、外にいて契約者と会話をするのは初めてだからな」


あぁ、そうか。


通常ならば、彼らは契約者の身の内に

宿っているだけで、戦い方や魔力の使い方

この世界に関するあれこれを教えるのは

契約者を召喚した、神聖国の人間達の役割なのだ。


やたらと「言ってなかった」が多いのは

誰に何を話したかを覚えていないんじゃなくて

そもそも、そんな説明をしたことがないから

何を教えたらいいか分からなかったんだ。


「でも…あんまりじゃない?自分達のことを、失敗作とか不完全とか、そんな言い方しないでよ。逆に、神様でもダメな所があるんだって思ったら、なんか親近感湧くし、それは2人のってことでいいんじゃないのかな?私は好きだよ。そんなヴェールとヴィータのこと」


私がそう言うと、2人は少し驚いて

泣き笑いみたいな顔をしていた。


「そんな風に言われたことなんてなかったな」

「カオリが初めてよ。ありがとう」


別に礼を言われるようなことは言っていない。

私は自分が思うままを口にしただけだ。


今までの契約者と彼等の関係性って

どんな感じだったんだろ?


コライ村で聞いた話を思い出した。


歴代の契約者達は皆

力を手放すことを選択している。


でもそれって

当然だけど2人とは別れるってことだ。


今の私にはまだ、この2人と天秤にかけられる程の

存在はいない。


これから先、もしそんな人が現れたら…

私も過去の契約者達と同じように

この2人との別れを選んでしまうのだろうか。


「お礼なんて…今の私の素直な気持ちだよ」


ふぅ。


息を吐き立ち上がると、再び歩き出した。


それにしても……魔核とは。

これまた凄いものがあったもんだね。


この世界の根源で、2人の本体…。

それだけを聞いても、とんでもない力を持っている

というのが分かる。


だけど、2人を生み出したかと思えば閉じ込めたり

世界を維持するための力だけを残して

自らを封印するなどという

器用なことをやってのける辺り

自我とか意志とかはあるのかな。


「魔核」っていう名前からは

人型は想像できないね。


それから神聖国と神官。


今までも神聖国の名前は何度か耳にしていたが

具体的にどういう国かってのは

聞いたことがなかったな。


神聖国っていうのは代名詞みたいなもので

正式には、ベルマーノという国名があるらしい。


そして神官。

話を聞く限り、神官は契約者の子孫ってことだ。

私の召喚については、神官以上に情報を持っている

人はいないだろうな。


とりあえず、当面の目標は決まった。

神聖国に行き、神官に会うこと。


そのためにも、まずはウィムニス王都へ。

私達は歩を進めるのであった。

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