立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花

「お前…本当に今さらだな」


今まで何となく

「ボス」というポジションがあったから

なぁなぁで来ちゃったけど

これから先、個人で呼べないと

不便を感じそうだったので聞いてみた。

しかし…


「それは…主様が決めてくだされば」

「私達は、このままでも特に困ることはございませんので」

「そうなんだ…。でも私も村人達も困るよね。うーん…よし!群れの子達は村人に決めてもらって、君達4人は私が名付けるわ」


この子達は今後、村での生活が中心になる。

そうなれば、個人を識別できないというのは

恐らく、いや、絶対に困る。


なぜなら人間は、ある程度年齢を重ねると

若い子がみんな同じに見えてくるのだ。


なので村の年配衆は、名前で覚えておかないと

役割分担する際に、絶対困ると断言できる。


そんな考えからの提案だったのだが

思いの外、彼女達が喜んでいる。


「主様から直々に名前を頂けるなんて光栄です!」

「そう?喜んでもらえるなら良かった。じゃぁ…そうだね、こっちから順番にローズ、ルリカ、ミモザ、リーフね。私のことは以後名前で呼んで。それから、こっちがヴェールで、こっちがヴィータね。よろしくね」


彼女達はドラゴンの姿の時から

それぞれのカラーが全面に出た容姿をしていた。


なので、その色の植物に見立てて

レッドドラゴンがローズ

ブルードラゴンがルリカ

イエロードラゴンがミモザ

グリーンドラゴンがリーフ

と名付けてみた。

女の子だしね。


すると再び光が!


思いっ切り身構えたが

光の量はそれほどでもなかった。


どちらかといえば、特筆すべきはその形。


ヴェール、ヴィータと契約した時のように

胸元から光の筋が伸びて

それぞれの胸に消えていった。


神様コンビの時と違っていたのは

その筋が糸のような細さだったことくらい。


「…ねぇ、今のってもしかして…」

「心臓の共有はしてないから大丈夫よ。今の契約で、離れていても多少の意思疎通が可能になったのよ」

「喜怒哀楽と、緊急事態を知らせる程度だがな」


あぁ、びっくりした。

これ以上の共有はさすがに荷が重い。


名前をもらった彼女達は

ひとしきり喜びと感謝を口にすると

村人達の中へ向かって行った。


「お疲れ様です。本当にありがとうございました」


と、声を掛けてきたのは

王都の調査員、レオさんとラインさん。


「あぁ、お疲れ様です。無事、問題が解決したようで何よりです。……あの、私達のことなんですけど…」


私がそこまで言うと、2人は察してくれたが

表情が硬い。


「もちろん、我々が口外することはまずありません。加えて、この村の人々にも箝口令かんこうれいを敷いています。ですが…」


そこまで言うと、口籠った。


分かってはいる。

どんなにダメと言った所で

人の口に戸は立てられない。


「それで十分ですよ。ご協力、感謝します」

「とんでもない!ご協力に感謝するのは我々の方です。それから、口外しないとは言いましたが、上への報告はしなければなりません。なるべく話が外に漏れないようには致しますが、国の上層部には知られてしまうことをご了承下さいますか?」

「えぇ、もちろん。理解はしています」


そんな会話を交わした後

彼等は急ぎ報告をしに行くため、村を出るという。


護衛は?と聞くと

騎士団がこちらへ向かっているので

大丈夫とのこと。


私達への依頼料は、王都で必ず支払うと

約束をして、彼等は村を去っていった。

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