尋常じゃない契約者 -sideヴィータ-

合計64体ものドラゴン達と従魔契約を

結んだカオリは、村人達に事情を説明するため

まずは1人で山を下りていった。


俺とヴェールは山で待機。

説明を終えたカオリが

転移魔法でこちらに戻ってこれるようにだ。

カオリが戻ってきたら、全員で村へ転移する。


「んにしても、やっぱアイツおかしいな」

「どれのこと?」

「全部だよ」


俺達が最初に驚いたのは、始まりの森でのこと。


魔法の種類は様々あるが、本来契約者は

「適性」などという言葉とは無縁のはずだった。


俺達を従えている時点で、扱えない魔法など

あるわけがない。


だが、カオリは「扱えない」とは少し違うが

明らかに攻撃魔法の威力がおかしかった。


通常の契約者であれば、単数であれ複数であれ

攻撃対象として定めた相手、もしくは物にのみ。

範囲攻撃だったとしても、半径2km圏内が

せいぜいだ。


ところがカオリの場合

その範囲は、アイツの視界に入る場所

全てが対象になり、範囲を絞れば絞るほど

その破壊力は上がっていった。


つまり、上空から地上を見下ろし

範囲魔法を使えば、とんでもない範囲に

攻撃できるということになる。


さすがの俺達もこいつに攻撃魔法を使わせるのは

危険だと判断し、人間の近くでは攻撃魔法を

禁止した。

下手したら、無差別大量殺人を起こしかねない。


攻撃手段に魔法を禁じられたカオリは

当然のことながら、体術に集中し磨きをかけた。


その結果、空振りした蹴りで巨木を薙ぎ倒し

拳1つで大岩を消滅させるに至ったのだ。


ぶっちゃけちょっと…いや、だいぶ引いた。


そんな状況だったから

あのジャイルとかいうやつも当然死んじまうだろう

と思ってた。


死んだら死んだで

仲間の記憶からも、ジャイルが存在していたこと

自体を消してしまえばいいと思ってた。

俺が直接力を使えば、その程度のことは簡単だ。


だが、カオリは殺さなかった。


どうやったのか知らないが

力を制御して、ビンタ1発で相手を無力化した。


どうやらカオリは

最初から一貫して、人間を傷付けること

特に殺めることには抵抗があるようだった。

まぁ、当然と言えば当然だが。


歴代の契約者も、最初こそ躊躇っていたが

やらなきゃ自分がやられる状況に追い込まれれば

迷いは吹っ切れていた。


元より、今までと今回じゃ召喚された

状況が違う。


歴代の契約者達は、惨事が起きた後

この世界の人間達が、自分達の手に負えない

と助けを求めて、初めて召喚されていた。

惨事の真っ只中で呼び出されるのだから

悠長なことを言っていられなかった。


だが、カオリは恐らくこれからも

自分が追い込まれても、どうやったら殺さずに

相手を無力化できるかと、考えながら戦うだろう。


本来それは、殺してしまうより難しく

相手との実力に大きな差がないとできないことだ。


ジャイルの時も野盗の時も

追い込まれているように見えて

実は余裕だったってことだ。

本人は、そうは思ってねぇだろうがな。


それに加えて、今回の従魔契約だ。


歴代の契約者を見ても、猫が1匹とか

狸と狐を1匹ずつとか

1〜2匹、多くても5匹がせいぜいだった。


従魔契約だってタダじゃねぇ。

それなりに魔力を使う。


しかも古代種。

尋常じゃねぇのは確かだ。


なんというか……カオリの力は、どちらかというと

俺達の力に近い気がするんだよな。


「ひょっとしたら、ひょっとするかもな」

「真の主?」

「あぁ」

「いいんじゃないかしら?私、カオリなら文句ないわ」


どうやらヴェールも

同じことを考えているようだ。

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