普通じゃない契約者 -sideヴェール-
アグニアの街を出てからしばらく。
分かれ道に差し掛かった所で
この先に野盗が潜んでいることに気が付いた。
カオリはまだ気付いていないみたい。
よくよく気配を探ってみれば
その更に先から、男が2人とその更に後方に集団
…あれは騎士団ね。
これは…チャンスじゃないかしら?
あの男2人がこのまま進めば
野盗共は間違いなく2人組を襲撃するわね。
そして恐らく、あの2人は
本当の狙いは、後方に待機している騎士団に
野盗共を捕縛させることみたいね。
私が目配せをすると、ヴィータも気付いたみたい。
このまま道を進み、旅人が野盗に襲われている
場面に遭遇すれば、お人好しなカオリのこと
助けると言うに決まってるわ。
未だに人間を攻撃することを
対人戦闘の経験を積ませることができる
絶好のチャンスだと思うのよね。
カオリに気付かれないように
こっそり魔獣よけの結界を張る。
魔獣に邪魔されたんじゃ集中できないもの。
「王都へ行こう。世界に何かしらの異変が起きているなら、人口が多い方が情報は入りやすい」
ヴィータがしれっと誘導しにかかる。
人間の心を操ることに関しては
本当に優秀なやつなのよねぇ。
素直なカオリは
ヴィータの誘導に疑うこと無く従った。
これはこれでちょっと心配になるわね。
お人好しで、素直で、疑うことをあまりしない。
さっきのはヴィータの言葉だったからって
いうのもあったかもしれないけど
このままじゃ、いつか騙されてしまいそうだわ。
まぁ、私達が一緒にいる以上は
そんなことは起きないけど。
ともあれ、私達の狙い通りに道を進み
野盗の襲撃現場に出くわした。
「カオリ、まさか助けに行こうなんて思ってねぇよな?」
「お人好しすぎるわ。あんなのいちいち助けてたらキリないわよ?」
私達がちょっと煽ると
案の定、カオリは助けると言い出した。
「それに…対人戦闘のいい機会だと思わない?」
意外な言葉が出てきた。
まさか、自分から挑もうとしていたとは。
カオリはカオリで、苦手を克服しようと
努力しているのね。
だったら!
と思って、私達は激励の言葉を送ったつもり
だったんだけど、それが良くなかったみたい。
カオリが震え出したの。
プレッシャーになっちゃったみたい。
勢いよく野盗に向かって行ったのはいいけど
やっぱりダメだったわ。
剣を抜くことすらできずに、殴ったところで
相手が立ち上がれる程度の力しか
込められていなかった。
これは重症ね。
仕方なく、ヴィータと共に助けに入ろうと
思っていた矢先、カオリが妙なことをした。
剣の刃を潰したの。
誰かしら?
赤髪に、頬に十字傷の男って?
よく分からないけど
その人から何かヒントを得たみたいね。
ようやく剣を抜けたわ。
刃は潰れてるけど。
どうするのかと見守っていると
カオリは刃を潰した剣を振り回し
あろうことか野盗共の骨を折り始めた。
ナニコレ…拷問?
さすがの私達もドン引きよ。
あの感じだと、1人1箇所どころの
話じゃないわね。
やりきったという達成感を携えて
清々しい顔で戻ってきたカオリを
白い目で見てしまった私達は
悪くないと思うの。
あのヴィータが、せめて怪我が治ったら
改心できるようにと、野盗共の中にある
人間に、しかも野盗相手に
ヴィータの同情心を引き出すなんて…。
やっぱりあの子、普通じゃないわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます