滅びの呪文かと

群れの全員と従魔契約をしてほしいと

言い出した理由はこうだった。


なんでも、村を襲っていたのは

一部の者だけではないらしく

各群れの何体かが日替わり、あるいは週替りの

ローテーションで数体ずつ動いていたらしいのだ。


そしてボス達は、数体見当たらない程度では

気にも留めない。

この山脈全体が彼女達の住処であり

目の届かない所に群れの者がいることも

常であるため、まさか姿の見えない者達が

村を襲っているなどとは考えもしなかったらしい。


つまりは、群れのドラゴン全員が犯人。


となれば、全員が自らの行いに対し

村の人間達に、直接謝罪と贖罪しょくざいをするのは

当然の道理だろう。


という、結論に至ったが故の懇願こんがんなのだそうだ。


「ははーん。じゃぁ、最初に私が来た時に、あいつらがやたらと威嚇いかくしてたのは、自分達がやらかしたことをボスに知られるんじゃないかと思って、私を追い返そうとしてたってことね」


イタズラを隠そうとする悪ガキのようだ。

最初に村へ行った1体だって

大方おおかた、好奇心に負けて立入禁止区域に入り込んだ

悪ガキみたいなもんだろう。


それにしても、このドラゴン達が持つ

倫理観の素晴らしいこと!


他人事みたいな顔して聞いてる後ろの2人にも

この子達の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。


彼女達の申し出を受けて

しょげている群れのドラゴン達に向かって

問いかけてた。


「全員、異論はないのか?」


相変わらずの拘束ドラゴン達は

涙目になってプルプルと震えながら

首がもげるんじゃないかと思うほどの勢いで

首肯した。


ボスの怒りがよっぽど恐ろしかったんだな。


「お前のカミナリじゃないか?」


ヴィータうるさい。


全員の承諾を得たと見て、契約をする。


「よし!じゃあアンタ達全員、今日からうちの子ね!!」


あ、眩しい眩しい。

ちょ!数が多いから光が尋常じゃない!


あぁー!目が!目がぁー!!


……光が収まって、目を開けてみたけど

なんか、チカチカする。

滅びの呪文かと思った。


ようやく目が元に戻り、眼前を見渡せば

約60人程の亜人の姿。

無事に契約が成立したみたいだ。


それを確認してから、ボス達が宣言した。


「いいか、お前達!主様に契約を結んで頂いた以上、傍若無人な振る舞いは、今後絶対に許されない!」

「全身全霊、誠意を持って村の人間達に謝罪と贖罪を!」

「主様が村との橋渡しをして下さる!主様への感謝も忘れるな!」

「以後、我らの心と魂は、常に主様と共にあることを肝に銘じておけ!」


「「「「ハッ!!」」」」


おぉう。

どこの軍隊だこれ。

迫力が凄いな。


「感心してる場合じゃないでしょ。この子達、カオリの傘下になったのよ」

「いいんじゃねぇか?これから何が起こるか分かんねぇしよ」


そうだよね。

今のところそうでもないけど

世界の均衡を揺るがす何かが

起こるかもしれないんだもんね。


味方が多いに越したことはない。

亜人達を眺めて、心強さを感じたのだった。

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