耳障りな声

「主様〜!」

「最高です〜!」

「素敵すぎます〜!」

「どこまでもついて行きます〜!」


………どうしてこうなった?

私は今なぜか、4人の美女に胴上げをされている。

宙を舞いながら、虚無の表情を浮かべつつ

ここまでの経緯を思い出す。


     *     *     *


コライ村の危機を救うため


「任せて!」


と大見得を切り、転移魔法のマーキングを

しっかりと村長宅前に施し

ドラゴンの住処とされる

グスト山脈に足を踏み入れた。


村長の話に聞いた通り

山の中には豊かな実りがあった。


ドラゴン達は、元々この山の恵みで

生活していたのだそう。


雑食なので動物を狩ることもあれば

木の実や野草を食べることもあるのだとか。


だから畑も家畜も、見境無く荒らしたのか。


そうこうしてるうちに

ドラゴン達の縄張りに入ったようだ。

辺りから、けたたましい鳴き声が聞こえる。


すると、木々に覆われていた視界が開け

ゴツゴツとした岩場に出た。


眩しさに一瞬目を細めるも

改めて見開けば、眼前に現れたるは翼竜の群れ。


圧巻の迫力である。

しかし感心している場合ではない。


怯むこと無く歩を進めれば、まるで


「人間ごときが何をしに来やがった」


と、言わんばかりの威嚇の声が

それはそれはやかましかった。


そのなんともやかましい声を聞いているうちに

イライラが募り、ピークを迎える。


元はと言えば

ちゃんと住み分けができていたのに

その垣根を無視して侵略してきたのは

こいつらの方である。


「何しに来やがった」はこっちのセリフなのだ。

にも関わらず、ギャーギャーと

本当に耳障りな奴等だ。


あまりの腹立たしさに、思わず殲滅しそうになるが

ヴェールとヴィータの手前、それはまずい。

殲滅はだめだと、自分で言っちゃったからね。


だから一度冷静になろうと

イライラを発散させるべく、右手側にあった大岩を

思いっ切り殴りつけた。


ドッッパーーーーン!!!


轟音と共に、大岩が消滅した。

粉砕ではなく消滅。

どういう原理でそうなったかは分からないが

跡形もなく消え去ったのだ。


それを見て、さすがにドラゴン達は黙ったが

私の苛立ちは収まらなかった。


その機嫌の悪さに呼応するように

空には雷雲が立ち込め始めた。


静かになったので、一応聞いてみる。


「で、アンタ達のボスはいるの?」


人の言葉を理解しているかは分からいないが

私が質問したタイミングで

他のドラゴンよりも、二回りほど大きな個体が

……4体も出てきた。


どゆこと?

なんかそれぞれ色が違う。

群れが4つあるってことかな?

一応聞いてみる。


「全員ボス?アンタ達、どういう了見で群れに人里を襲わせてるの?」


ボスが居るということは

ある程度、組織的な動きをしているはず。

であるならば、ボスの動きなしに

群れが勝手に動くことはないんじゃないか?

と思ったのだ。


しかし、私の予想に反して

4体のボスは、まるで


「何のことだ!?言いがかりだ!」


とでも言うように、ギャーギャーと

威嚇の声を上げ始めた。


「なるほど。つまりアンタ達は、自分の群れ1つまともに管理できない無能ということね。群れの奴等がやったことに、どう落とし前つけるつもりだよ」


どこまで通じているかは分からないけど

とりあえず挑発してみる。


するとボス達は怒りをにじませ

今にも襲いかからんばかりの勢いで騒ぎ始めた。

それはもうギャーギャーと。


さっきからそうだったけど

なんだか異常に耳に障る声なのだ。


またもや私の苛立ちがピークを迎えた。


「黙れや!!このクソトカゲ共がぁーー!!!」


咆哮と共に雷を落とした。

物理的に。


先程から上空に立ち込めていた雷雲は

自然現象ではなく、私の攻撃魔法なのである。


雷がクリティカルヒットしたボス4体は

気を失い倒れた。

それを見て逃げ出そうとした群れのドラゴンにも

もれなく雷を落として眠らせた。


あ、もちろん殺してはいないよ。

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