野生動物とは

害…獣?

アレは…ドラゴンというやつでは?


え、害獣って、農作物を食い荒らす

のことだよね?


村人達はドラゴンを相手に

ほうきや熊手、手製の槍などで

果敢に応戦している。


何この光景…私が呆気に取られているうちに

ひとしきり食い荒らして満足したのか

ドラゴン達は村の裏手にそびえ立つ

山々の方へ飛んで行った。


「ちょっとカオリ!何ボケっとしてんのよ!?」

「牛!牛が連れてかれたぞ!」


ヴェールとヴィータが騒いでいるが

私の胸中はそれどころではなかった。


「ねぇ、アレはドラゴンってやつだよね?害獣ってさ、作物を荒らすだよね?ドラゴンは…野生動物?」

「当たり前じゃない!何言ってるのよ?しっかりして!」

「あんなもん、ただのデカいトカゲだろうが!」


なんということだろう…。

私は失念していた。


ここは異世界。

前世の認識が、ここでは通用しないのだ。


私が膝から崩れ落ち、頭を抱えた姿を見ると

自分達の認識と齟齬があったことに気付いたのか

2人はシリーズを発動させた。


「あー、そういえば言ってなかったな。この世界の野生動物ってのは、お前のいた世界のものとは、ちょっと違うやつもいるんだよ」

「ちょっとじゃないよ…すごくだよ」

「カオリの世界にも、恐竜ってやつがいたんでしょ?それとか…ほか、生きた化石って呼ばれるやつ」


あぁ、オウムガイとかシーラカンスとか

カブトガニとかか。

恐竜も絶滅してなかったら

野生動物って分類になったのかな。

それ以前に人類との共存は絶望的だろうが。


「ってことは、ドラゴンは古い種の生き物なの?」

「そうだな。あの手のデカい野生動物は、古代からその姿をほとんど変えてない」


なるほどねぇ…。

なんか、一気に疲れた。


村の方も少し落ち着いたので

改めて村長に詳しい話を聞くことになった。


「数カ月前のことです。初めてこの村に下りてきたドラゴンは、1体のまだ若い個体でした」


それまで、人間とドラゴンはきちんと住み分けが

できていて、ドラゴンが人里に下りてくることは

なかったのだという。

それなのに、何を思ったかその1体が

村に下りてきて、ニワトリを1羽攫って行った。


それからだ。

山の方から数体の群れで飛来しては

農作物や、家畜を荒らすようになったのは。


山に彼等の食べ物が無いわけではない。

山には沢山の恵みがあり

うまく住み分けができていたころは

村人も山に入り、木の実や果実

キノコや山菜などを、ドラゴン達の分が

無くならない程度に収穫していた。


そして、残った種を山に戻し

山の実りが減らないように

うまく共存していたらしい。


「要するに、そいつらは味をめたんだね」


前世でも、野生動物が山から下りて

人間が育てた作物を食べて以降

その味を知ってしまったがために

度々、山から下りては畑に侵入し

作物を食い荒らすようになったと言う話は

たまに聞く話ではあった。


「殲滅ね」 「殲滅だな」


見事なシンクロ。

待て待て、すぐに滅ぼそうとするんじゃない。


まったく…。

こいつらの頭の中にあるのは

「自分達のご飯」のことだけである。


ドラゴンに襲われ始めたのが、数カ月前。

その数カ月でこの惨状。


このまま調査員の2人が王都に戻り

対策を講じて再び出向いてくる頃には

この村は滅びてしまうだろう。


村長も調査員の2人も

その可能性に思い至ったらしく

縋るような目をこちらに向けてきた。


私達は力強く頷き返した。


「この件、私達にお任せ下さい」

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