ご機嫌ナナメ

結果的に、荒磯亭は大変良いお店でした。

4人も満足してくれたし、私も大いに楽しんだ。


ただ、気掛かりなことが1つ。

食事をしている時から、ヴェールとヴィータが

ずっと怒っているのだ。

それはもうプンスカと。


しかしこの場で呼び出すわけにもいかず

宿に戻ってからこっそりと呼び出した。


「ちょっと!ズルいわ!なんで呼んでくれないのよ!?」

「自分だけうまいモン食いやがって!礼だぁ!?それなら俺達にだって食わせるべきだろうが!」

「ちょっ!うるさい!しぃーーー!声がでかいって。悪かった、悪かったよ。ご飯一緒に食べたかったの?」

「当たり前だろ!何のためにあれだけ魔石を集めさせたと思ってやがる!」

「え?」

「あ」

「……あ」

「ほーん。ナルホドナルホド。つまり、あれだけ私を人間から遠ざけて、こき使って魔石を溜め込ませたのは、自分達が飲み食いするための資金を稼がせるためだったと」


どうやらヴィータが口をすべらせやがった模様。

自らの失態に気付き

オロオロと狼狽えるヴィータと

焦りの表情を浮かべるヴェールに

無言で笑顔という圧をかけ続けると

観念したようにヴェールが崩折くずおれた。


「仕方ないじゃない!私達だって、ご飯くらい食べたいわよ!人間界に来なきゃ食べられないんだもの!いくら食べる必要はないと言っても、あの何も無い空間に、ただ居続けなきゃならないのは、正直しんどいのよ……」


崩折れた美女が涙目で訴えてくるのは

なかなかに堪える。


しかし、彼等の言い分ももっともな話だ。

あの空間で、彼等がどんな日々を送っていたかは

知らないけれど、何の楽しみも無いのであれば

それは、さぞしんどいであろう。


そこでふと、前から気になっていたことを

尋ねてみた。


「まぁ、気持ちは分かったよ。今度はちゃんと呼ぶからさ。それはもういいとして、あれだけの魔石があったなら、2人の力でお金にできなかったの?」


考えていたのだ。

魔石を売ってお金にできるなら

破壊と再生の能力で魔石を回収し、相当額に再生。


この2人を持ってすれば、他人の力を借りずとも

入国して、食事にもありつけたのではなかろうか。

魔石の相場は決まっているのだから

おかしな額になることもないだろうし…。


と私が話せば、2人は目が点になり

開いた口が塞がらなくなっていた。


「え…もしかして、思いつかなかった?」

「ぃや!バッ…おまっ…わ、分かってたよそんな事!でもほら、そんなん…ズルいだろうが!」

「そ、そうよ!それに、彼等に協力してもらえたから、ギルドのことを知ることもできたし、そもそも、私達がお金に変えちゃったら、せっかく集めた魔石が市場に出回らないじゃない!」


必死だな。

言ってることは間違ってないけど

思いつかなかったなら、そう言えばいいじゃん。

別に馬鹿になんかしないのに。


神様だから、自分のミスをおいそれとは

認められないのかな?


…いや、そんなことはないね。

死神だって神様だよね?

あのオッサン、自分のミスだと認めた上に

土下座までして謝ってたぞ?


つまり、この2人の往生際が悪いだけだ。


「分かった分かった、もういいよ。明日、ちゃんとあの4人にも紹介するから」

「そういえば、何か約束してたわね?」


そうなのだ。

あの子犬系格闘家のジャイル君に

あるお願いをされて、了承してしまったのだ。


とりあえず、ヴェールとヴィータには

一旦外出して時間を潰してもらい

明日、さも初めから合流する予定でしたよ。

という顔で来てもらうことになった。

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