怪しいのは分かってるけど、怪しい者ではないんです

頭を抱え、しばらくウンウン唸っていたが

ふと魔獣の魔力を感知した。

そしてなんと、その近くには人間の魔力反応が!


話が出来すぎてやしないかと疑うも

この千載一遇のチャンスを

逃すわけにはいかない!と、猛ダッシュした。


     *     *     *


「なぁ、なんかこの森…随分魔獣が少なくないか?」


パーティーのリーダーが仲間に問いかけた。


「やっぱ、そう思う?僕も少ないなって思ってた」

「うん、私も。進むのは楽でいいけど、儲けは少ないよね。それに、嵐の前の静けさって感じがして、なんか不気味…」

「ん〜、でもこのペースで行けば、今日のお昼過ぎくらいにはアグニアの街に着くよね」


4人でパーティーを組み

冒険者として旅を始めてから結構長いが

こんなに魔獣が少ない森は初めてだった。


不審に思いながらも歩を進めた4人だったが

魔術師の警告により、足を止める。


すると間もなく魔獣が現れた。

臨戦態勢をとる4人だったが

魔術師が再び警告を発した。


「9時の方向、魔獣じゃないが物凄い勢いでこっちに向かってる!何アレ……人間にしては、動き方とスピードが異常だわ!」

「クソッ!まさか、ここらの魔獣が少なかったのはのせいか?とりあえず今は目の前に集中!ファイは引き続きそのの動きを…」

「待って!もうここに到着するわ!」


木の枝の中から黒い影が飛び出してきた。

そしては魔獣目掛けてかかと落としを見舞い

勢いそのままに魔獣を踏み抜いた。


呆気に取られている4人を尻目に

魔石を回収するを見て、どうやらそれが

人型で、女の姿をしているということを確認した。


4人の存在に気付いた女は、急に挙動不審になり

しどろもどろになりながら挨拶をしたかと思えば

今の自分の状況を説明し出した。


「ふーん…。つまり、身分証も金もないが街には行きたい。入国さえできれば金を返すアテはあるから、俺達に同行し、一時いっとき入国料を肩代わりしてほしい…と」

「ハイ!その通りです!いきなりこんなことを言われて、怪しむのはごもっともです。あの、少々お待ち頂けますか?集めた魔石を持ってきますので!」


女はそう言うと、転移魔法の術式を展開し

消えていった。


「……どう思う?」

「いや、どうも何も…確かに怪しいのは間違いないけど、悪意は感じなかったなぁ」

「うん。本気で困ってるように見えた。それに転移魔法を使えるなんて、かなり高位の魔術師じゃないのかなぁ?」

「だとしたら、身分証が無いってのも変な話だが…」

「でも、黒目黒髪っていう人も、話には聞いたことあったけど、実際には今まで見たことなかったし…あの人、見た目は人間だけど、多分普通の人間じゃないと思う。私の勘ではあるけど、あの人は絶対に敵に回しちゃいけない人だよ」


話し合いの結果、4人の意見は

「怪しいが、とりあえず協力してみよう」

でまとまった。


その後、転移魔法で戻って来た女が

3つの袋にパンパンに詰まった

魔石を持ってきたのを見て

度肝を抜かれると同時に

やはり、この森に魔獣が少なかったのは

こいつが原因だったかと確信を得た。


魔術師が言ったように、この女を敵に回すのは

得策ではないと瞬時に感じ取った彼等は

協力を快諾するのだった。

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