満を持して
こちらの世界に転生してから早1ヶ月。
戦い方を覚えた私は、対魔獣戦に慣れるため
そしてこれからの生活費を稼ぐために
森の中を駆け回り
片っ端から魔獣を倒していった。
こんなに倒しても、際限なく湧いてくる魔獣。
こいつらは一体何なのだ?と聞いてみれば
魔獣とは、そもそも人間が抱えている
負の感情そのものなんだそうで
その負の感情が、人間が死んだ時に解放され
怨念となったものが魔力と結びつき
具現化した存在なのだそうだ。
「だから、この世界に人間が生きている限り、魔獣がいなくなることはないわ。生まれた時は何もなくても、成長し生きていくうちに、必ず負の感情は抱くものだから」
「俺達にしてみりゃ、関係ねぇ話だがな。人間の1人1人に情を移すことなんてしねぇから、そいつらの未練までどうにかしてやろうなんて思わねぇ。だから放ったらかしにしといたら、魔獣ってもんができあがっちまったんだよ」
どの世界でも、人間とは難儀な生き物のようだ。
人間の負の感情から生まれた副産物が
魔獣と魔石ということらしい。
しかしこの1ヶ月、本当に不眠不休で動けた。
驚きを禁じ得ない。
改めての実感だったが
飲まず食わずでいられるということは
言わずもがな、それに伴う
排泄の心配もないということ。
当然、食料の調達はしなくていいということだ。
森で出会えたウサギや鳥、鹿などの
本来なら食料として狩られているであろう
動物たちは、可愛かったのでひたすら愛でた。
なんなら、ちょっと懐かれた。
そして不休でいられるというのは
24時間フル稼働できるということで
昼夜問わず、魔獣を狩ることができた。
必然的に、手に入れた魔石も相当な量になった。
初期装備のポーチだけでは収まりきらなくなり
草や、
どんどん溜め込んでいった。
そして3つ目袋が一杯になった頃、おもむろに
「さて、そろそろいいだろう。いい加減ここを離れるぞ」
「そうね、今のカオリならもう1人でも十分戦えるし、いつまでもここに留まっている理由もないものね」
え?あ、もしかして、人里デビューですか!?
「それはそうだけど、どっち行ったらいいか分かんないよ?」
魔力感知ができるようになってからは
魔獣を標的にして、反応のある方へ向かって
走り回っていたので、実質森の中をぐるぐる
しているだけだった。
以前、ヴェールが人里には魔獣が近づけないよう
結界が張ってあるって言ってた。
つまり魔獣を追っていた私達は
人里には近付いたことすらないということになる。
「魔力感知ができるなら、森の中に魔獣以外のものがあるのも分かるだろ?」
「うん、分かる。人間と思われるやつ」
「カオリの力では、まだ魔力だけでどんな人間か判断はできないと思うけど、この森を通るのは、大抵冒険者か行商人、たまに野盗もいるんだけどね」
なるほどねぇ。
あー、だからか。
以前、この世界の人間に会ってみたくて
人間の気配がある方へ行ってみようとした時に
止められたことがあった。
今はまだ止めておいたほうがいい。と。
もしあれが野盗だったなら
間違いなく集団に襲われていただろう。
負けることはないだろうが、問題は私の覚悟。
ならなきゃやられる状況になったとしても
躊躇うことなく、他人を手に掛けるだけの覚悟は
正直、今でもまだできていなかった。
「で、そういえば言ってなかったんだけど、国境を越えるためには、出入国の際に身分証と通行料が必要になるの。だから、まずは人間と知り合いになって、協力者になってもらわなきゃならないわ」
久々に出たな。
「言ってなかった」シリーズ。
しかし協力者とは?
「事情を説明して、一旦通行料を肩代わりしてもらうってことだな」
あー、そういう……。
いやチョット待て!
人里に出るまでのハードルが高すぎないか!?
森で突然現れた女に
「金貸してくれ」
と言われて、誰がいいよと言うものか!
怪しさしかないだろうが!
早くも前途多難な様相に、頭を抱えるのであった。
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