不自然な契約者 -sideヴィータ-

久しぶりに契約者が召喚された。

しかし今回の召喚はどうにも不自然だった。

相方も同じように感じたらしい。


本来契約者の召喚は、人間側からの要請があり

俺達が許可を出して、初めて実行される。


この世界の人間、特に召喚を行う当事者の神官は

俺達が滅多に動かないことを理解している。

そんなわけで、基本的に俺達に助けを求める時は

自分達の力だけでは手に負えない事態に

陥ってからが常だ。


だからまずは、世界に何か起こっていないと

おかしい、ということになるんだが…。


ここ近年で起こったことと言えば

神聖国東部で起こった、魔獣の集団暴走スタンピード

それからついこの間までは、首都で連続殺人事件が

起こっていたっけか。


あとは、以前から定期的に現れている鬼くらい。


正直、俺達の出る幕は無いし

実際人間からの救助要請もなかった。


前述の通り、いつものプロセスなら

人間からの救助要請→俺達からの神託

(契約者召喚の許可)→死神への通達

→契約者の選定→召喚の儀式→俺達との契約

で、初めてこっちの世界に契約者が転生するんだが

今回はいきなり召喚の儀式が行われた上に

通常は神聖国内にある神殿の

儀式の間で行われるはずの召喚が

全く別の場所で行われたようだった。


そりゃ死神のオッサンもテンパるわな。

何の前触れもなく、いきなり呼び出されて

選定してこいなんて言われたら

判断を間違えても仕方ないだろう。


それで殺されちまったカオリは気の毒だが

こっちにゃこっちの事情があるんでな。

しっかり働いてもらわなきゃならねぇ。


だが、こっちとしても色々とイレギュラーだ。

臨機応変にやってくしかねぇ。


その1として、転送場所だ。

いつもは儀式の間に転送するんだが

今回はそもそも儀式をやった場所が違う。


神官が行った可能性もゼロではないが

まともなプロセスを踏んでない以上

神官ではない何者かが、契約者を利用するために

故意に違う場所で儀式をやった可能性が高い。


呼び出されたままの場所に向かうのは

リスクが高いと判断した俺達は

儀式の場所とは、全く別の場所に契約者を転送し

すぐに俺達を呼び出すように伝えた。


可能性は低いが、転送先でソッコー魔獣に

出くわしたら、一溜まりもないからな。


だったら、神聖国内の神殿以外に転送すりゃ

いいじゃねぇかって話だが、コトは少々複雑でな。


神聖国に、ある時から現れるようになった

「鬼」ってのが、黒目黒髪の人型の化け物なんだが

カオリも同じ色を持っているんだよな。


元々この世界では、黒目黒髪の人間はいなかった。

だから、時々現れる契約者と

その血を引く神官の一族だけが持つ

神聖な色とされていたんだが

鬼が現れてその「黒」という色が

忌み色として定着しちまった。


神聖だった色が、忌み色になっちまうほど

人間達は鬼に脅かされてきたってことだ。


最初にヴェールと見た目をいじってたが

本人的に何かこだわりがあったようで

そこだけは譲らなかったらしい。


だから、神聖国内に入る前には

カオリの容姿を隠しとかなきゃならない。

それが神聖国に転送できない理由の1つ。


もう1つは、そもそも召喚してねぇのに

いきなり契約者が現れたら大騒ぎになんだろ。

面倒臭えことこの上ない。


最終的に正体がバレたら大騒ぎにゃ

なるんだろうが、そん時はそん時だ。


好きな言葉は臨機応変、事なかれ!

世界が上手いこと回ってりゃ文句はねぇ。


とはいえ、契約者は世界を上手いこと回すための

要だからな。

ちったぁ大事にしてやんねぇとだ。

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