初めまして

これが魔獣?

凶暴なのは一目で分かる。

後はなんとなくだけど、意思や知性といったものは

感じられない。

そんなふうに思っていると

ヴェールが補足説明してくれる。


「魔獣は、より強力な魔力を取り込み、己の力を大きくするという本能のみで動いてるの。そこに目的があるわけでもなくね。意識も、ましてや知性なんて持ち合わせていないわ。見た目こそ獣のような姿をしているけど、その実魔獣は実態のない思念体なの。だから、魔力を伴わないただの物理攻撃は通用しないわ。よく見ててね」


魔獣がヴィータ目掛けて飛びかかる。

ヴィータはそれを難なくかわ

魔獣の右側へ回り込むと

魔獣の脇腹を思い切り蹴り上げた。


黒いもやが霧散して、魔獣の胴が真っ二つに

割れたかと思いきや、散った靄が元に戻り

再び魔獣の体を形成した。


「今のが、魔力を伴わないただの物理攻撃。何度やっても、ああやって元の姿に戻ってしまうわ」


多少体勢を崩した魔獣だったが

ヴェールの言った通り

攻撃によるダメージは無いようで

構え直すと、再びヴィータへ飛びかかった。


ヴィータはまたもやひらりと躱すと

今度は魔獣の背後に回り込み

地面を蹴り、飛び上がった。


空中に飛び上がったヴィータは

余裕の表情で、落下の勢いそのままに

魔獣の背中に掌底しょうていを叩き込んだ。


魔獣の胴が割れたのはさっきと一緒。

でもその後、黒い靄は戻ることなく

急速に霧散していき、とうとう魔獣の体は

跡形もなく消え去った。


「今のが、魔力を伴った攻撃。こうやって魔獣の体が完全に消えて、が出てくればこちらの勝ちよ」


そう言ってヴェールが指さした先には

淡い黄色の宝石のような石が落ちていた。

ヴィータがその石をつまみ上げ

私に見せてくれた。


「これが魔石と呼ばれる物だ。魔石は、この世界であらゆる所に使われている。生活雑貨から武器防具、アクセサリーに至るまで、全てのものに使われていると言っても過言ではない。そしてこの魔石こそが、物に魔法を付与するための媒体になるんだ」

「へぇ〜、キレイだね。あのおっかないヤツから出てきたとは思えないや。この色には何か意味があるの?」

「あぁ、色とその濃さによって、込められる魔法の属性と魔力の多さが変わってくる。同じ魔法でも、魔力を多く込められる方が、より強い効果が出るからな」

「なるほどねぇ…ってか、私もあの魔獣と戦えるようにならないきゃ駄目ってことだよね?できる気がしないんだけど?それ以前に、旅をするには軽装すぎて、森から出ることすらできる気がしないんだけど?」


弱音と文句をまとめてぶつけてみた。


「あ、そういえばまだ言ってなかったわね。実は今のあなたのその体、人間で言うところの三大欲求を満たす必要がないの。つまり、飲まず食わず眠らずでも問題はないし、年を取ることもないから心配しないでね」


…「まだ言ってなかった」が多すぎる。

この分だと、言ってないことまだあるだろ!?

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