第2章

いろいろ足りない

人形に向かって呼びかけると

手のひらサイズだったものが

あっという間に大きくなり

先程まで話していた神様達と

寸分違わぬ姿になった。


あ、でもちゃんと服は着てるんだ。

さっきまでの、いかにも「神様です!」

みたいなスタイルじゃ、この先絶対に浮くもんね。


この世界の人間の服装を

まだ見てないから何とも言えないけど

さっきまでの彼等の格好が

スタンダードじゃないことくらいは私でも分かる。


「んあぁ〜、久しぶりのシャバの空気だな」

「ホントね〜、前回こっちに来たのは…50年くらい前だったかしら?」


ムショ帰りか!

神様がなんてセリフを吐くのだ。


思い思いに伸びやら深呼吸やらをしながら

感想を述べる彼等を横目に

私は自分の状況を把握しようと努めた。


まず周囲を見回すが、木や茂みしかない。

こっちに転送する前に何やらコソコソ話していたが

森に転送すると言っていたのは間違いないようだ。


次に、自分の格好。

ヴェールに「外見をいじれるよ」と提案され

あれこれ希望を入れてもらいつつ

世界を見て回ることになるだろうから

旅ができる装備にすると言われ、了承したのだが

……なんか、足りなくない?


確かに服装は機能的よ?

素材はよく分からないけど、綿っぽいシャツに

デニムっぽいパンツ、レザーっぽい編み上げの軍靴ぐんか

腰のベルトには、さっきの人形が入れてあった

まぁまぁ容量のあるポーチと

剣帯には脇差しくらいのサイズの剣と

サバイバルナイフっぽいのが1本ずつ。


それだけである。


待て待て。

動きやすさ重視であることは理解できるが

これだけの装備で、どうやって世界を旅しろと?

森を抜けることすらできなさそうだが!?


そもそもここはどこなんだ!?

森なのは知ってるけど

人がいる所に出るにはどうしたらいいのよ!?


情報も装備も足りない!

圧倒的に!


ちょ、おいコラ。

お前らいつまでくっちゃべってるんだよ!

こっちの世界のことはこっちに来たら

説明するって言ってたよなぁ!

何を思い出話に花咲かせてんだよ!


…あまりに呑気な彼等の空気を見て、ふと思った。

彼等は、時間の感覚も人間とは違うのだと。


さっき彼等が言っていた。

「永遠を生きている」と。

「情を移すには、人間の一生は短すぎる」とも。

であるならば、人間とは感覚が違うのも当然だ。

ほんの少しだけだが

彼等のことが分かった気がした。

一呼吸置いて、彼等に声をかける。


「ねぇ、そろそろ説明が欲しいんだけど」


思い出話で盛り上がっていた2人は

ハッとしてこちらに向き直り

バツが悪そうに話し始めた。


「ごめんなさいねぇ。こちらに来るのも久しぶりだったからつい…。えぇと、まずはこの世界の環境と、あなた自身についてね」

「この世界には魔法がある分、お前のいた世界のような科学技術はほぼ発達していない。医療もに関しても同様だ」

「病気も怪我も、魔法で治せてしまうからよ」


怪我はともかく、病気まで治せてしまうのか。

そりゃ医者いらずだね。


「ただ、その辺りちょっと複雑で…。科学技術に相当する魔法と、医療技術に相当する魔法は種類が違っていて、分けて考えられているのよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る