体調が悪い時に読みたくなる話。
- ★★★ Excellent!!!
食べることは生きること。
僕は折に触れてそう実感する。
この話はスーパーの社員の美登里が、風邪をひいても休めずに、仕事に行って帰ってくる。そんな社会人なら誰もが経験しているしんどい一日から始まる。
一人暮らしの辛さは、体調が悪い時に誰も助けてくれないこと。
美登里が家に帰っても、冷蔵庫の中にあるのは牛乳と野菜くずくらい。
ロクに栄養も摂れずに眠りにつく彼女の孤独は、リアルな生活感に富んでいる。
次の日の朝、仕事が休みの美登里は、仕事先のスーパーへと買い出しに行く。
そこで、彼女は見知らぬおじいさんに声をかけられる。
その人は、初対面なのになぜか美登里に馴れ馴れしい。
おじいさんは彼女の買い物カートを奪い、身体にいいからと次々と食材を入れてくる。
果たして、このおじいさんは一体何者なのか……?
物語を通して一貫して読者に寄り添っていること。
おじいさんのキャラが立っていて、読んだ後に温もりが残ること。
たとえ家族の記憶が途切れても、想いが残るということ。
ちょっと不思議なことだけれど、それでも忘れたらいけない大切なものを思い出させてくれる。風邪をひいたときに食べるうどんのような話で僕は好きでした。
弱っている時ほど誰かの優しさが沁みるものだけれど、大人になって優しさを忘れてしまった人に、是非読んでほしい作品です。