例え何者かになれなかったとしても、それが一番大切な答えだったりする。

旧小学校の教室の天井から吊り下げられた五百枚以上の原稿用紙を、ブリキの獅子舞が一枚一枚嚙み千切っていく。ブリキの獅子が踊り狂っているのは、狭い教室の中だ。
辺り一面に散らばった原稿の中で読まれたこの物語は、誰に向けて読まれているのか。
第6回かがわ・山なみ芸術祭2025に集まった観客たちが見守りながら、この演劇は進む。

ブリキが奏でる騒音は、時折、話者の言葉をかき消しながら、それでも何かを表現しようと藻掻くように踊る。それは、決して伝統を背負っていない。純粋な表現そのものが、観客たちの目の前で繰り広げられる。

獅子舞は、やがて教室を抜けて外に出る。
そして、獅子舞を脱ぎ捨てた演者が、一枚の手紙を読む。
それは、獅子舞の口の中に入っていたすべての人に向けた手紙。
子どもとして、そして親になってからもきっと受け取りたい言葉が書かれている。

是非、YouTubeの動画と一緒に読んでみてください。
創作は、きっとテキストを超えた肉体に宿っている。