探索する人間たちに「スキル」といった特殊能力をもたらしてきた「ダンジョン」。
そのダンジョンはどこかの英雄のお陰で消滅してしまった。
不安をもたらしてきたダンジョンの消滅が、必ずしも幸せになるとは限らない。
戦争に行った元軍人が、一般社会に適応できずに悩みを抱える、といったようなことが起きてしまう。
主人公である元A級の国定弥生もその一人。
いまやコンビニバイトで、仕事帰りにワンカップ飲むのが楽しみな女の子。
一般社会で冷遇される身で、どこか肩身を狭く生きている。
そんな弥生が出会うのは一人の少女。
その少女との出会いが弥生に与えた影響とは……。
本作は、記憶にまつわる物語である。
忘却は死にも等しい。
それでも、弥生の気持ちは前を向く。
そのあり方は、読むものにわずかながらの希望を与えることだろう。
あらすじのとおり、全世界に驚異をもたらしていたダンジョンが踏破されたその後が描かれる。
不謹慎であるが、ダンジョンの攻略はある意味で祭り、だったのだと思う。
無数の冒険者がダンジョンを踏破せんと冒険に参加し、ダンジョンの攻略は飯の種となり、生業となった――
そして、ダンジョン攻略というバブルは、どこぞの英雄が成し遂げた完全制覇によって弾けしまうのだ。
突如として、非日常から日常に引き戻された冒険者たちはとある理由で、有能な勇者から一転して社会から鼻つまみ者にされてしまう――
ファンタジー要素にラップされているが、この物語のテーマは、生きづらさ、そして他者との苦悩の共有、という普遍的なものに映る。
作者たーたんさんの持つ、ヒューマンドラマの確かな感性。
その上に繰り広げられる本作の物語は、短編ながらたくさんの魅力がぎゅっと詰まっているのでぜひ手に取っていただきたいです。