「全てを知っている」ことがいかに虚しいことか、というゼスの冷え切った内面描写から始まるため、その後にルーナが土足で踏み込んでくるシーンの鮮烈さが際立っていました。ケーブルを強引に引きちぎる=神を強制的に人間(生身)へと変える、という通過儀礼のようなシーンがとても好きです。初めての外の世界で、ゼスが「データにはない湿度や匂い」を知り、自分が生きていなかったことを自覚する瞬間。その美しさと解放感に、読んでいるこちらまで胸が高鳴りました。