ルリちゃんとミミコちゃん

山犬 柘ろ

第1話


ミミコちゃんは小学一年生の変わった女の子。


教室にカマキリを持ち込んで、そのカマキリと遊んでいたり、授業中に急に鼻歌を歌ったりする。


いじめっ子が

「おまえって変だよな。

虫と遊んだりして。

友達いないから仕方ないか」

と、いうと


「虫はかわいいよ。

あんたミミコの事知らないよね。

ミミコもあんたの事知らないもの」

と、言う。


そう言われたいじめっ子はミミコちゃんの足を蹴って転ばせた。

それをそばで見ていた二人の男の子も、転んだミミコちゃんを一緒に叩いたり蹴ったりした。

ミミコちゃんは、うずくまり、目を開けたまま黙っていた。


クラスメイトのルリちゃんが、ミミコちゃんに言った。

「ミミコちゃんが言い返すからなぐられるんだよ」


ミミコちゃんは、

「ほんとうとちがうこと言ってくるから、返してるだけだよ」

と、言った。


ルリちゃんが、友達の家から暗くなるからと急いで帰る途中、通りがかった公園のブランコに、ミミコちゃんの姿があった。


ルリちゃんはミミコちゃんに向かって

「もう暗くなるから、早く帰った方がいいよー!」

と、叫んだ。


ミミコちゃんは

「ありがとう!でもわたしはこれがいいのー!」

と笑った。


寒くなってもミミコちゃんは、半袖のままだった。

「ミミコちゃん、そんな格好でいたら風邪ひくよ」

と、ルリちゃんが言ったら


「そうかなぁ。でもね、今は涼しくて気持ちいいからいいんだよ」

と、答えた。


ある日、ルリちゃんはお母さんと車で買い物に行った。

買い物の帰りに、大きな川にかかっている大きな橋を通った。

ミミコちゃんがいる!

ミミコちゃんは、大きな橋の真ん中あたりの手すりから、足をバタバタさせながら、川を覗き込んでいた。


次の日、ルリちゃんはミミコちゃんに何をしていたのか質問した。


「川のキラキラを見ていたんだよ。

ママがね、ミミコのせいでお金がないって言うから、あのキラキラを集められないかと思ってたの。

あのキラキラがあれば、ママに全部あげるのに」


ルリちゃんは少し困った顔をした。


「ミミコはね、本当はね、

キラキラで、おいしい食べ物がたくさんあって、ぽかぽかあったかくって、綺麗な洋服がたくさん着れる世界に住む王様なの。

だから心配しないで」

と、にっこりして言った。


「でも、これは二人の秘密だよ」

とも、ルリちゃんの耳元に小さな手を当てて、そうっと囁いた。

二人は見つめあって、頷き合った。



一週間後、ミミコちゃんはいなくなった。

ミミコちゃんは、朝早くにあの大きな川の端っこに引っかかって、動かなくなっていた。


ルリちゃんはママたちのひそひそ話を聞いていた。

「しぼうすいていじこくって何?」


ルリちゃんが質問すると、サキちゃんのママは行ってしまった。

大人はミミコちゃんが、いじわるされたから、天国に行ったと思っている。

ほんとうは違うのに。


ミミコちゃんはママのために、川にいっぱいあるキラキラを取りに行ったんだ。

そして、自分のキラキラの国の王様でいる方が楽しいから帰ってこなくなったんだ。


ルリちゃんは思ったが、ミミコちゃんと約束したから絶対黙っておこうと思った。




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ルリちゃんとミミコちゃん 山犬 柘ろ @karaco

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