第2話:魔王、シャワーを浴びる。

「俺の……!俺のスマホがぁ!!」


ピザを頼もうとスマホ探したら。

なんと班目白のスマホは魔王の手の中で温かく抱擁され

全て無に帰していたのである。


「バ先の連絡先とか友達の連絡先とか入ってるのに

そして、なにより俺の!俺の!大事なモン〇トのデータが!」


‘‘くいくい‘‘と俺の裾が引っ張られる


「す、すまんのじゃ。勇者」


またまた泣きそうな顔をしてこちらを見てくる


「お、追い出さないでほしいのじゃ」


「追い出す……?流石にそこまではしないさ。だけどな?お仕置きは必要だよな?」


‘‘ジロッ‘‘と魔王を射抜き

ぐへへ……と不敵な笑みを浮かべながら元凶へと歩みを進めていく


「ゆ、ゆうしゃぁ!?そんな目でこっちを見るでない!」


「く、くるな!このケダモノ!勇者としての誇りはないのかの!」


「や、やめろ!来るでない!止まれ!止まるのじゃあああ!!」


‘‘ぼふっ‘‘

俺は魔王に覆いかぶさる


「わっ……や、やめるのじゃ勇者……」


「んっ……」


「力抜いて」


「ふぅ……ふぅ……」


「ほらほら、そんな我慢しないで声出して?」


「ふぅ……んっ!……はぁんっ!!」


執拗にねちっこく魔王の体をまさぐる


「んひ!」


「ほほう?ここが良いんだな?」


「あっ!……そこっ……んっ!」


あぁ……気持ちいい。

そう、気持ちいいのだ。

お前みたいな悪い魔王にくすぐりをして、苦悶の表情をさせるのはなぁ!!


「ぐへへ……お前みたいな悪い魔王にはな!!こちょこちょの刑だ!」


俺はさらに勢いをつけてドリルのごとく魔王の脇腹をえぐる


「あひゃ!やめ、やめるのじゃ!勇者!」


「まだまだ!」


そうして小一時間

魔王の体をこちょこちょしまくった



「ふぅう!!ふぅう!!」


魔王の服はところどころはだけ

白くて艶のある肌が顔を出している


なんかやらしいことした気分になるな……

「スマホ壊したお前が悪いんだぞ?」


すると魔王は身を抱え部屋の隅へと急いで逃げる

「勇者!貴様やりすぎじゃ!小一時間もこの偉大な魔王の体をまさぐりよって!」


‘‘変態!スケベ!ケダモノ!‘‘と隅に身を固め。

俺を非難してくる


流石にやりすぎたか……?


「ふしゃーー!!」


魔王に近づくと威嚇される


「ネコかお前は!」


「とりあえずシャワー浴びてこい」


「む!シャワーとやらはなんだ!」


あぁ……そうだった。

向こうの世界にはシャワーなんてない

湖で水浴びか自分で風呂を沸かすかだ

当然給湯器なんてない


「水浴びみたいなもんだよ」


さぁいったいったと無理やり脱衣所に押し込める


「そこで服脱いで、その丸い箱の中に入れておけ。」

そういい俺は洗濯機を指差し、脱衣所を後にする


「の、のぞくでないぞ!」


「わーってるよ」

誰もお前の矮小な体なんか覗かねぇよ


「脱いだら目の前にある扉開けて。丸いハンドルみたいの捻れば水出っから」

そう少し大きな声で伝え

脱衣所から少し離れたところに腰掛け様子をうかがう



しばらくすると

声が聞こえてくる


‘‘んな!!水がでたぞ!‘‘


‘‘すごい!すごいのじゃ!‘‘


‘‘おぉっ!!お湯じゃ!お湯が出とるぞ!!‘‘


大層ご機嫌なようで

あれだけいい反応されるとこちらもうれしくなる

「さてと俺は洗濯機でも回しておくか」

勇者はチラッと洗濯機の中を見る

……下着がない、決して邪な気持ちをもって見ようとしてたわけじゃないが

確かにこちょこちょしてた時も少し感触がおかしかった。

「あいつノーパンノーブラだったのか……」

異世界にも下着は流石にあるんだが……

そりゃあ、あの胸だったらいらないか。

あの、ロリ体系のAAAカップのまな板じゃそもそも着れないだろ

「……今度買ってやるかぁ」

そう呟きながら勇者は洗濯機を回し始める。


…ん?待てよ?

ふと、勇者は気づいた

「魔王、これ一着しか服持ってないんじゃね?」…と

恋愛を学ぶために片っ端からラブコメを読み漁った勇者にはわかる

こういう場合は彼シャツってのをさせるべきなんだと

だが勇者は思う

…彼シャツをさせていいのか?

あのロリ体系に彼シャツはギリ犯罪なのではないか?

てかそもそも魔王だぞ?勇者のシャツを着るなんて…

いや、あいつなら普通に着るか。

「てかそもそも、彼シャツってなんだ?」

ラブコメでは彼氏のシャツを幼馴染(?)に着せてた

ただこれにはパターンがある、下着有り無しで分岐し、ズボンを貸すか貸さないかでも分岐をする

スタンダードでいえば下着なしズボンなしだろう

だがそれでいいのか?…それが正しいのか?


‘‘やはり勇者は恋愛の才能など皆無であった‘‘


つまり、勇者にとって一番正しい選択は…

ダッシュで買いに行くことである。


足に手を当て

身体強化フィジカルブースト

そう唱えた勇者は全速力で走っていった


 ***


「はぁ…はぁ…」


「なんじゃの、勇者。我に欲情しておるのかの?」


俺が急いで買ってきた、白のニットと黒のスカートに

ふわもこのネコちゃんパジャマを着て

訝しげに勇者を見つめる


「ちげぇよ…お前のために服買ってきたんだよ」


「そんなことわかっておるわ、お主がふわもこパジャマを普段使いしてるならならびっくりじゃがな」


「じゃあ、最初から言うなよ…俺がそんなパジャマ使ってるわけないだろ」


「それにしても、センスないのぉ。ネコちゃんパジャマとは」

パジャマの裾を‘‘くしゃっと‘‘握り

嬉しそうに笑う


「…喜んでくれたのならよかった」


「のじゃ!?喜んでなどおらん!」


「俺もそれ買うのどうかと思ったんだが目に留まって離れなくてな」


そのせいで店員にめっちゃ変な目で見られたがな

それにしても疲れた。反動がえぐい。

やっぱりこの世界は魔力が薄い、身体強化フィジカルブーストだけで魔力乱れを起こしてる。

完璧パーフェクト神童ジーニアスが頑張って適応してくれてるが魔力が乱れてるせいで上手く発動できない

結構つらいな


「…っ!」

急な痛みについ嗚咽する

少し酷くなってきたみたいだ


「勇者、お主魔法を使ったな?」


「はぁ…はぁ…」

魔王が問いかけてくるがもう口を開くほどの力はなくなっていて、ただ息を漏らすことしかできない


「本当にお主はどこまでいってもお人好しじゃな」


「ほれ、背中をみせい!」


そういい、魔王は俺の身ぐるみをはがして

露になった背中に‘‘ピトッ‘‘と手を当てる

魔王の右目が光り、勇者を射抜く

魔力の線が止まっていく、まるで魔力が魔王に怖気づいているかのように

次第に俺の体も落ち着いていき、口を開く


「…魔眼か」


「そうじゃ、前の世界でお主の常時発動技能パッシブスキルを邪魔してやった魔眼じゃぞ」


「しかし、魔法は止められないはずじゃ…」

俺は魔法を使って魔力を乱してる

魔法を止められない魔眼が魔力乱れを治せるのか?


「お主勘違いしておらぬか、我の魔眼は魔力の流れを止めるのじゃ。だから必然的に魔力を必須とするスキルは使えなくなる」


「魔法も魔力を使ってるだろ…?なんで魔法は止められないんだ?」


「勇者お主自分で言っていてわからぬのか?魔法は魔力を使う、つまり消費するのじゃ」


「だからわざわざ魔力を流して魔法を使うなんてことはない、魔法を行使するためにはただ魔力を吐き出せばいいのじゃからな」


そうか…

いつしか異世界で受けた魔法の授業で言われたことがある

魔法の行使に必要なのは魔力とそれ魔力を別の性質に変換させる力であると

そして魔法を使うと急に消費された魔力に穴が開き魔力の流れが乱れてしまう、その穴を埋めるために必要なのが魔力の素になる魔素

この世界は魔素が薄いから穴を埋めるための魔力をとりいれられないんだ。

しかし薄いだけであって少しはある

すなわち、魔法は威力は弱くなるが普通に使える。

そして、常時発動技能パッシブスキルは魔力を使わない

魔力を全身に流すことで発動している

だからこそ魔眼で止められたのだろう


「…なるほどな、楽になったよありがとう」

魔力の乱れが収まり、口を開く


魔王は背中に当てていた手を離し、横に座りなおす

「ふんっ!お主に死なれたら我はどうやって生きればいいのじゃ、拾った責任はしっかりとってもらうぞ」


「あぁ、この借りはいつか返させてくれ」


「返さなくてもよい」


「けど…」


「これで貸し借りはなしじゃからな」


「ん?」


「服買ってもらった借り!これでチャラじゃからなっ!」

顔を真っ赤に染め‘‘てとてと‘‘どっか走っていく


あんだけ泣いてまだプライドがあるのかあの居候

…貸し借りなしか、後でなんか買ってやるか

恩はしっかり返さないとな


‘‘ピンポーン‘‘

インターホンが鳴る


「ピザの配達でーす。サインと代金お願いします」


どうやら、家にある備え付けの電話で頼んだピザが来たようだ


扉を開けサインと代金を払い品物を受け取る

ありがとうございますと礼を言い

扉を閉め

魔王を呼ぶ

「おいっ!魔王!飯だ!さっさともどってこーい」


「戻ってこないと、お前のマルゲリータ全部食うぞー?」


「なぬ!待つのじゃ勇者!我にもそのまるげぃたとやら食わせてくれ!」


大急ぎで魔王が向かってくる


なんかこいつ犬みたいだなと思う


二人が席に座り

手を合わせ同時に告げる

「「いただきまーす!!」」











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異世界帰りの俺。倒したはずの魔王を拾う ぺけらんど @pekerando

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