第16話

シゲルに代表を譲った後、

あきののボーナスは大幅にカットされたものの、高額な給料はたった数万円下げられただけの状態でした。


ボーナスも他の人がスズメの涙に対して、これまであきのだけは1回に3桁以上が当たり前に渡されており、

カットされたところで痛くも痒くもない額でした。


税理士からも「大幅に下げてしまうと労基に訴えられるので、徐々に下げるしかありません」と言われ堪えました。


新倉庫の引っ越しまであと3ヶ月を切った3月下旬。


この日は突然訪れました。


この日の朝。S社で15年以上働いていた番頭の安田さんが突然退職を申し出たのです。


「腰が痛くてもう働けないから辞めさせてほしい。今週中に!」


退職希望日まであと、4日。


せめて代わりの人が見つかるまでは来て欲しいと言っても、

安田さんは

「絶対に今週末で辞めさせてもらう」と譲りませんでした。


これまで安田さんには、

主にB to Bといって企業向けに商品を卸す仕事を任せていました。


誰が安田さんの代わりをやる?

窯焼きへの発注や抱えているお客様への対応や営業は?


突然の出来事に主人はかなりのダメージを受けました。

顔は真っ青で表情は固まり、まるで死人のようでした。


私は、顔面蒼白し動揺する夫の様子を見て、、


イラつきました。逆に!?笑


「誰がやるって、やる人がいないならやりなさいよ!自分でやる時間がないならやってって言いなさいよ!!」イラつきついでに喝を入れました。


誰に??という顔をする主人に。


親指を顔に向ける私。


この日から私は、集荷係兼、梱包係兼、販売係兼、営業係兼、窯焼きメーカー担当係となったのです。


企業向けに取り扱っている商品は200種類ほどあり、取引先は50社以上でした。


それぞれの企業に合わせて梱包材や納品方法も違い、

これを後たったの4日で引き継ぐなんて可能なのだろうかと


顔には出さない様にしたものの私も少し弱気になっていました。


私は安田さんの仕事を引き継ぎするために、その日早速A社へと出向きました。


安田さんの所へ行き、引き継ぎをお願いすると

「今忙しいから後にしてくれ」と断られました。


??????断った??????


「引き継ぎが最優先なのでお願いします…」と言うと


「邪魔するなら帰れっ!!!」と安田さんが怒鳴りました。


突然の出来事に私は。


ビビりませんでした。笑


「どうしたんですか?安田さんが怒鳴るなんて…何かあったんですか?」そう聞くと、いつもの温厚そうな安田さんになり


「腰が痛いから…忙しいし、邪魔するなら帰ってほしい、会長から奥さんはA社に入れるなって言われているし…」そうオドオド話しはじめました。


やはりシゲルか。。


そこから私は丸一日安田さんの行動に付き合い、仕事を覚えようとしました。


しかし次の日、

突然シゲルから「今日は消防の点検日だから何も仕事をしないでくれ」そう言われると、


シゲルの呼んだ民間の消防業者が訪れ、

そこから引き継ぎの妨害行為が始まりました。


仕事も出来ずパートの方に話を聞こうとした時の事です。


突然安田さんから「今日はこれからみんなで昼ごはんへ行く、終わったらそのまま家に帰るからもう奥さんも帰ってくれ!」と言われ、

私だけを無理矢理会社から閉め出そうとしました。


それはまだ昼休憩の1時間前でした。


「まだ就業時間中で…こんな勝手な事して許されませんよ?さすがにもう社長へ報告をします」そう言って私は主人へ妨害行為の報告を入れました。


この日は3月では珍しく土砂降りの雨の日でした。


主人がA社へ到着する前に私は無理矢理土砂降りの外へ押し出され、

安田さんはパートさんを全員自分の車に乗せ出かけて行きました。


その直後に、あきのとシゲルが堂々と一緒に車に乗り出て行こうとしました。


私は「お義父さん、お義父さん!」とシゲルを何度も呼びましたが、


目の前にいるずぶ濡れの私を無視して、

強引に駐車場の門の鍵を閉め

あきのの車に乗りシゲルは出て行きました。


すぐ後に主人が到着し、私に駆け寄りました。


「とりあえず中に入ろう!」と、鍵を開けようとした時。


鍵が刺さりませんでした。


門の鍵だけでなく、A社の全ての鍵穴が新しいものに取り替えられていました。

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