第14話

A社の駐車場へ着くと

シゲルは私達の車を見るや否や、会社の鍵を全て閉め籠城を始めました。


ドアをノックして話しかけても一向に出てこないシゲル。


よくよく見れば、

ひと月振りのA社はガラスの扉や窓に今時のヤンキーでも貼らないフルスモークの真っ黒なフィルムが貼られていました。


「ヤクザの事務所か!」とツッコミを入れてから、主人の持っていた鍵でドアを開けて中へ入りました。鍵あるんかい!笑


社長室へ入るとシゲルは椅子にドーンと座り、

「おぉ!どうぞどうぞ?お金はもう振り込んでもらえた?」と言いました。


主人が「きちんと調べてから必要ならば支払うのでまずはS社の帳簿を渡してくれ」と話すと、


シゲルは「ここには無い。帳簿は全部税理士が持っていった」と言い、帳簿を出す事を拒みました。


主人がその場で税理士に電話をし、スピーカーで聞かせました。


やはり帳簿は税理士の元には無く、シゲルが隠し持っている事が分かりました。


するとシゲルは足早に安田さんのいる部屋に向かい

「安田さん!2人が僕をいじめるから助けてくれ!」と泣きついたのです。


主人は良い機会だからと、安田さんの部屋にあきのも呼び私を含めた5人で話し合いが始まりました。


・まず、シゲルの退職金は帳簿を確認した上で話をするので速やかに両社の帳簿を提出する事。

・上司の指示を無視して仕事をせずシゲルと遊びに出ているあきのには、懲戒処分を含めて減給処置をする事。

・もちろんあきのに支給されていたETCやクレジットカードも会社へ返却する事。

・就業時間を守り許可のない勝手な外出はしない事。

・今後二度と他の従業員に対してパワハラ行為を行わない事を話しました。


あきのはいつもの様に眉間にシワを寄せ、

「それは、私が納得出来たらの話だよね?」と敬語すら使わず、受け入れる姿勢は見せませんでした。


主人があきのに

「あきのさんはこの20年間で一体何が出来る様になった?ではあなたのこれだけは絶対人に負けない強みって何ですか?」と聞いたところ


「う〜ん、そんな事言われても。」

「経験かなー」


け・い・け・ん?彼女今けいけんって言ったよ…


一瞬場が凍り付いた後、続けて主人から


「普通ならばその経験を元に1年目よりも2年目、2年目よりも3年目ってどんどんやれる事が増えていきますよね?

20年経験してあなたがやれる事って何ですか?」


するとあきのは、

「私は頭で考えるのが仕事だから!

あのさ、餅は餅屋って言うじゃない?

私陶器の事はそんなに分からないからそういうのは分かる人にやってもらいたいの。分かる人にやってもらった方が会社としても良いんじゃない?」とドヤ顔で答えました。


私はモンキーの様に思いっきり叫びそうになり、日本さえ許してくれれば私人生で初めて人を殴れますよ?ダメなんですか?と白目で悶絶しました。


ここで主人が話し出さなければ国が許さなくてもきっといってたと思います。笑


「あきのさん、ここは陶器屋ですよ。

それはあなたがこの会社に必要のない人って自分で言ってしまっているのが理解できますか?」


「ハッキリ言って経験と頭で考えるだけの人では今の高額な給料には見合いません。

先程の条件への同意が出来ないのであればそれ以上の処置を考えます。」

主人からそう言われると、あきのは睨みながらもやっと同意をしました。


そしてシゲルには

「もう来週から会社には来ないでくれ」と

A社の解雇を告げました。


シゲルは「長い事お世話になりました…」とひと言残すと、

しばらくあきのと部屋へ籠ったあと帰って行きました。


そして週明けの月曜日。


何事も無かったかのようにシゲルはA社に出社しました。

なんでやねん!笑


色々と片付けもあるだろうと思い、

安田さんに目を配ってもらいながらしばらく様子を見る事にしました。

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