灯を運ぶ者
@DOOKS
第1話
序章 忘却の神話
「世界は、すべてを覚えすぎた。」
世界がまだ、名前を必要としていなかった頃。
人はすべてを覚えていた。
死の瞬間。
裏切りの表情。
自らが犯した、取り返しのつかない選択。
それらは積み重なり、
世界は悲嘆の重さで、軋み始めた。
そこで神は、光を創った。
光は、記憶を喰らった。
人々はそれを「灯」と呼び、
救いとして讃えた。
だが神は知っていた。
——この光は、
いずれ誰かを“空っぽ”にする、と。
だから神は、
自ら最初の運ぶ者となった。
そして、壊れた。
それ以降、
運ぶ者は、人から選ばれるようになった。
選ばれるのは、
すでに多くを失った者だった。
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます