第5話 どんなに好きでも限度はあるよね?
途中休憩を挟み、行軍は続いた。
午後の休憩時には背中に瓦礫を乗せた状態で腕立て伏せを延々とさせられた。
そして、きな粉汁のプレゼントを頂いた。
徐々にボトルのサイズが大きくなっているのは気のせいと思いたい。
夕食の時に師匠に、流石に耐えきれ無いので、汗を流すか、身体を拭かせて欲しいと懇願した。
「何じゃ、お主は神聖魔法は使えんのか?
[クリーン]どうじゃ? さっぱりしただろう?」
「! 師匠は神聖魔法をお使いになれるので!?」
「おう、イシュ坊のお陰で大体の奴等は使えるぞ?
ワシ等の国は国教をテルミナス教と定めておってな、幼い頃から信仰しておる。
テルミナス様は信仰厚き者が神聖魔法を使いたいと願えば、その魔法に必要な知識とそれに見合った信仰さえあれば、使える様にしてくださる。
お主等帝国のアルカーストは違ったのか?
まあ、最後は邪神に堕ちてしまったからな、無理からぬことか。
おっと、済まぬ。 お主の信仰を揶揄する気は無かったのじゃ、許せ」
「いえ、問題ありませんよ?
私自身はテルミナス教信徒ですから」
「何と! 帝国にもテルミナス教徒が居ったのか?」
「私の両親は元冒険者でして、祖国が何処とは聞いておりませんでしたので解りませんが、テルミナス教を信仰しておりました。
それに私がいた村もアルカーストを信仰していた者は少なかったですし」
「して、洗礼は受けておるのか?」
「いえ、流石に帝国でテルミナス教の洗礼は受けれませんよ、教会自体がありませんし。
それにテルミナス様は寛容なお方ですので、喩え洗礼を受けておらずとも、私を罰する事はありませんでしたし」
「ふむ、それはそれで勿体無い。
お主がアルカーストを含め、他の神を信仰している分には改宗を求める気は無かったが、元からテルミナス教徒であれば話は別じゃ。
次以降の街に良いテルミナス教会があり次第、洗礼を受けに行こうぞ?
ワシの見込んだお主であれば、少しの勉強した後、洗礼を受ければ神聖魔法も使える様になるやもしれん」
「でも、教義では本当は少しのお布施で良いと知っていますが、実際は洗礼を受けるのにお金が沢山かからないですか?
アルカースト教は洗礼を受けるのにとても高額のお金が必要だったと聞いております」
「そんな事は無い。 テルミナス様は金なんぞ無くても祈りを受け取っていただける。
教義と何も変わらん。
じゃが、流石にシンボルは持っていた方が良かろう、少し待っておれ」
そう言うと師匠は木の板を持ち上げ、手を離した直後、木の板がテルミナス様のシンボルに変わった。
「し、師匠、今何をなさったので?」
「おん? シンボルを作っただけじゃが?」
「どうやってですか?」
「指でこう、ちょちょいとじゃが?
取り敢えず、間に合わせで済まんが、これを持って祈るが良い。
それについての詳しい話は明日じゃ。
先ずは晩飯じゃッ! 沢山食えッ!
そして飲めッ!」
結局マンガ肉を四本、きな粉汁も四本をお腹の中に詰め込んだ。
あんなに美味しかった筈のマンガ肉も最早、〈食べる〉と言う作業の為に口に入れる物体に成り下がってしまった……。
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