第1話生まれる
目の前の女性は俺の体をいとも容易く抱え上げた。そして、近くにある鏡に自分の体が映った時、俺は絶句した。誰だって絶句する。なぜなら、鏡には今俺を抱え上げている女性とその女性が今抱え上げている赤ちゃんが映っていたのだから。内心で俺が動揺していると、女の人は俺の額にキスをして、こう言った
「生まれてきてくれてありがとう、私の天使」
まさに聖母のような優しい笑顔だった。しかし、同時に申し訳ない気持ちが出た。なぜなら、彼女が息子と思ってる赤ん坊の中身が赤の他人の二十歳の社会人なのだから。
変に言葉を発したりして彼女を困惑させるのは余計話をややこしくすると思い、あくまで赤ん坊として甘えるようにしようと思った。
◇◆◇◆
数日経って、自分の現状が大体わかってきた。ここは、異世界で、日本でも地球でもない場所。そして、今の母の名前は「イリエ•ルーナ」。ここでは魔法を使うのが普通らしく、イリエさんも魔法を使って俺の育児をしてくれている。成長したら、自分が転生したことを打ち明けようかと思っている。だが、久しく感じていなかった母の温かみは最高に心地良かった。
イリエさんは、1人で俺を育ててくれている。恐らくだが、父は他界したのだと思う。正確な日時や年数はわからないが、たまにイリエさんが男性の写真を見て、悲しそうな表情を浮かべているのでそういうことだろう。
そしてイリエさんは息子である俺を溺愛していて、よく額やほっぺにキスをしてくる。母親としては素晴らしい人だが、流石に溺愛しすぎな気がする。そして、転生者であることを黙って、月日は過ぎていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます