デスゲーム広告
ちびまるフォイ
はじめてのデスゲームが始まらない
「こ、ここは……?」
「ふふふ。気がついたようだな」
「お前は誰だ!? 顔を見せろ!?
それに俺はどうしてこんな場所に閉じ込められてるんだ!?」
「お前になにか教えることはない。
なぜならお前は私のモルモットだからだ」
「なに!?」
「ではゲームをはじめよう」
密室に用意されたモニターにスマホの画面が映る。
「これは貴様から回収したスマホだ」
「おい返せよ!」
「まだ自分の立場がわかってないようだな。
貴様はこれから恐怖のデスゲームに参加する」
「なっ……」
「貴様はこれから一定時間ごとにフォロワーを失う。
フォロワーが0になった瞬間に首輪が爆発する」
「ふ、ふざけんな!」
「貴様のフォロワー数の増減はこのモニターで表示される。
お前はゲーム時間が終わるまでフォロワーをキープし続けるのだ」
スマホを所持しているゲームマスターは操作をはじめる。
モニターに転送されているスマホの画面が動き出す。
「さあ、ゲームスタートだ!!」
ゲームマスターが操作をした瞬間。
胸の谷間が強調された広告が画面いっぱいに広がった。
『今すぐぷるぷるの胸に飛び込もう!!
今話題のぷるるん体験ゲーム!
【今すぐ始める】 』
エッチな広告がデスゲームのモニターへ投影され、
右上の小さすぎる『X』ボタンにゲームマスターは四苦八苦。
小さすぎる当たり判定により、ぷるるんゲームの配信サイトへ遷移する。
張り詰めていた緊張の糸がぶつんと切れる音がした。
「おい……ゲームマスター……」
「ちがっ……。ちょっとまって! 今から始めるから!」
「ぷるるんゲームを?」
「デスゲームだよ!!!」
ふたたびスマホを操作して、前の画面に戻る。
もうバカでかいエッチな広告は表示されない。
「ま、待たせたな……」
「ひとつ聞いていいか?」
「なんだ」
「どうしてさっきから、画面の下に横長のエッチなバナーが出てるんだ?」
「ああもう!!!」
モニターに投影されるデスゲームの画面の下には、
エッチな漫画のワンシーンとアオリ文がちらちらと表示されていた。
『夫が帰らない家で待ち受けるご奉仕とは!?
【いけない奥様Final】 ※本編ではモザイクが無くなります』
慌ててデスゲームマスターは広告を消そうとするが、
スクロールすると広告が消えたり出たりして神出鬼没。
「動くなよ広告! 押せないだろ!!」
何度かいけない奥様を開いてしまったが、
なんとか広告を閉じることに成功した。
「はあ、はあ……今度こそゲームスタートだ」
「ゲームマスター、お前まさか……」
「なんだ?」
「もしかして、フリーサイトでデスゲーム作った?」
「…………」
「図星かよ」
「しょうがないだろ! デスゲームはじめてなんだ!
いきなり有料のデスゲームはじめてキットは高い。
無料のデスゲームサイトで作ったっていいじゃないか!」
「結果、こんな広告まみれになってるんだろうが」
「うるさいな! 広告閉じたからいいだろ!」
「いや、今度は横に広告出てるよ!!」
「ええええ!?」
サイト入場時のクソデカ前面広告。
さらにサイト入ってからのチラチラ現れるバナー広告。
それらを倒した先に待っているのは、
両脇に鎮座するエッチなバナーと上部を埋める広告、広告。
その刺激的な内容でもうデスゲームどころではない。
エロは死の恐怖をも超越してしまう。
無料でデスゲームを作れてしまう「デスゲームメーカー」。
無料である反面、大量の広告が出るのがデメリット。
そのことをゲームマスターは理解してなかった。
結果、本番で被験者にえっちな広告を見せつけて
それを慌てて閉じるという恥さらしをすることになった。
仮面をつけていなかったら、真っ赤な顔がバレてしまうところだった。
もちろんすでにデスゲームのモルモットには、
ゲームマスターの真っ赤な耳でどういう表情かはバレている。
「おいデスゲームマスター」
「なんだよ! 今広告閉じるのに忙しいんだ!!」
「広告が出ないブラウザもあるぞ?」
「……そうなの?」
「〇〇って検索してみろ」
「検索した」
「で、そこをインストール」
「インストールした」
「で開いてみろ」
「あ!! 本当だ!! 広告出てない!!」
「素が出てる」
サイトを開くインターネットブラウザを切り替えると、
あれほど視界を覆い尽くしていたエロ広告は消えた。
やっと本来見せたい画面がモニターに表示される。
「ククク。待たせたようだな。今度こそ本当にデスゲームを始めよう」
「今までのは何だったんだ……」
「ただのオリエンテーションさ……!
だがここからが本番。お前の恐怖に歪む顔が楽しみだ!!」
ゲームマスターはデスゲーム開始のボタンを押した。
画面いっぱいに利用規約が開かれた。
『 本サイトは利用規約の1行が更新されました。
お手数ですが、最初から確認して同意を押してください 』
右隅に表示される豆粒のようなスクロールバー。
巻物よりも長い利用規約を同意した頃、
モルモットは自分で首輪をはずして家に帰った。
デスゲーム広告 ちびまるフォイ @firestorage
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