第2話 先輩の話

 ……お待たせ。

 うん、今日もいつもの後輩と会ってきたよ。


 ──浮かない顔してる? ……はは、君にはなんでもお見通しだな。……うん。今日は、その子に告白されちゃってさ。


 いや、勿論断ったよ。


 でも僕にはちゃんとした〝役割〟があるじゃん?


 ……そう、〝ボディガード〟ね。


 といっても、体を張る方じゃなくて。なんか危なそうな人がいたらやんわり遠ざける日雇いバイトみたいなものだし。


 ──語弊がある?


 ははっ、そりゃそうか。

 僕も君も同じことしてるしね。


 ……バイト感覚で、危ない人を〝抹消〟してる僕みたいな人とあの子はあまり同じ空間にはいられないから。


 ──じゃあ何故たまに会うのって?

 ……なんでだろう。というか、その後輩がボディガード対象だと知る前からの付き合いだったし。


 いつも年齢=彼女いない歴を馬鹿にされてたな。


 あ、そういえば断る理由に彼氏がいるって言い訳ついちゃったんだよね。

 今度彼氏連れてきてほしいって言われたから、その時は同行してほしいな。


 ──顔割れる? 大丈夫だよ、逆にバレた方が何も怪しまれないよ。


 ──ちゃんとした姿見せてやれって?


 ……おいおい、そんなことしたら。流石にあの後輩でも面食らって逃げてしまうよ。


 銃持って? ナイフ持って? 血塗れの僕を見てほしいとは思わない。君はかっこいいと思ってくれてるのだろうけど。


 後輩には……うん。いつも呑気に、僕のことを馬鹿にしてくれてたらいいよ。

 それが平和ってもんじゃん?


 ……でも。

 ただの先輩として守れないとなった時は。なりふり構わず飛び出してしまうかもね。


 ──惚れてる? ……まさか。


 だって僕は年齢=彼女いない歴の男だよ? あんなにきらきらしてる後輩の隣には……居酒屋で失恋話を聞いているくらいでちょうどいいんだよ。


 まあ、その彼氏を消したのも僕なんだけど。


 仕方ないじゃん。上からの命令だったし、実際悪質な男だったし。


 なんだろうね。なんであの子はあんなに危ない人に狙われるんだろうね。


 ──でも告白されるくらいだから、後輩には君の良さが伝わってる。……はは。


 きっと酒に酔ってただけだよ。


 ……あ、通知だ。

 こんな時間に……、話はここまで。


 行ってくるよ。


 後輩がいるところに。

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