第20話:神の座(くら)、あるいは処刑台の宴
広場の熱狂は最高潮に達していた。
「浄化せよ! 浄化せよ!」
処刑台の上で、神官が長剣を振り上げる。 縛られた男が絶望の悲鳴を上げる。 民衆は目を血走らせ、その瞬間を待ちわびている。
誰が見ても、救いのない光景。 だが。
「……うるせェな」
ドォン!!
轟音と共に、処刑台が真っ二つに砕け散った。 木片が飛び散り、土煙が舞う。
「な、何事だ!?」 「神聖な処刑台が……!」
静まり返る広場。 土煙の中から現れたのは、刀を肩に担いだ迅(ジン)だった。
「あーあ、壊れちゃった」
テツが瓦礫(がれき)の上で、飛び散った釘や金具を拾ってポリポリと齧(かじ)っている。
「き、貴様らは何者だ……! この神聖な儀式を邪魔するとは、神への冒涜(ぼうとく)だぞ!」
神官が顔を真っ赤にして怒鳴る。 迅は耳を小指でほじりながら、気だるげに答えた。
「冒涜? 笑わせるな」
迅は一歩、神官に近づく。
「テメェ、人間じゃねえな?」
「は……?」
「その白装束の下から、腐った泥の匂いがプンプンすんだよ」
迅の瞳が赤く輝く。 神官の顔色が変わり、後ずさる。
「な、何を言っている! 私は神に仕える身――」
「往生際が悪いぜ」
ヒュンッ。
迅の腕が霞(かす)んだ。 次の瞬間、神官の首がポロリと落ちた。
「キャアアアアアッ!?」 「神官様が殺された!」
民衆が悲鳴を上げる。 だが、その悲鳴はすぐに驚愕へと変わった。
切断された神官の首から、赤い血は出なかった。 代わりに噴き出したのは、ドロリとした黒い汚泥(おでい)と、無数の「蟲(むし)」だったのだ。
「ギ……ギギ……」
首を失った神官の胴体が、痙攣(けいれん)しながら膨れ上がる。 白装束が裂け、中から現れたのは、腐肉と蟲で構成された醜悪な化物だった。
「ヒッ……化け物!?」 「神官様の正体があんな……!?」
パニックに陥り、逃げ惑う民衆。 迅はニヤリと笑った。
「やっぱりな。……この街は、上から下まで全部『蟲の巣』ってわけだ」
迅はテツに目配せをする。
「テツ、食い放題だぞ。……ただし、腹壊すなよ」
「うーん……ちょっと不味(まず)そうだけど、頑張る!」
テツが蟲の化け物に向かって構える。 迅は刀を正眼に構え、大社の奥を見据えた。
騒ぎを聞きつけ、奥から無数の「神官(バケモノ)」たちが雪崩(なだれ)込んでくる気配がする。
「さあ、派手にやろうぜ」
迅が地を蹴る。 聖域という名の化けの皮が剥がれ、血と暴力の宴が幕を開けた。
(続く)
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