第21話:愛という名の寄生
「ギャアアアアッ!」 「ヒギィ……神ヨ……!」
悲鳴と断末魔が交錯する。 広場は今や、屠殺場(とさつじょう)と化していた。
「オラッ、次はどいつだ!」
迅(ジン)の刀が一閃するたびに、神官(バケモノ)たちの首が飛び、胴体が両断される。 斬り口から溢れるのは、血ではなく大量のウジ虫だ。
「気持ち悪(わり)ィな、手応えがねえ」
迅は舌打ちした。 こいつらは「中身」がない。 人間の皮を被っただけの、蟲の集合体だ。 斬っても斬っても、後から後から湧いてくる。
「ジン! これ、苦い! 美味しくないよぉ!」
テツが泣きながら、鉄製の燭台(しょくだい)を振り回している。 蟲たちは鉄ではないため、彼女にとってはただの不味(まず)い生ゴミだ。 それでも、彼女の怪力は凄まじい。一振りで数体の化け物をミンチにしている。
「贅沢言うな。……運動不足の解消には丁度いいだろ」
迅は足元の死体を踏みつけ、大社の奥を見据えた。
「……それにしても、数がおかしいな」
この街の神官の数は、数百人程度のはずだ。 だが、今こうして湧いて出ている数は、既に千を超えている。
「どこで養殖してやがる?」
迅は、襲い来る化け物を無視して、崩れかけた本殿の床下を覗(のぞ)き込んだ。 そこには、地下へと続く巨大な空洞があった。
ムワッ。 濃厚な腐臭が吹き上がってくる。
「……なるほどな」
迅の目が冷たく細められた。 地下には、無数の「繭(まゆ)」がぶら下がっていた。 そして、その繭の中には――行方不明になっていた巡礼者や、金を持たずに追い返されたはずの貧民たちが取り込まれていた。
「救いってのは、これのことかよ」
人間に蟲の卵を産み付け、苗床(なえどこ)にして新たな神官を生産する。 この聖域全体が、巨大な「蟲毒(こどく)の壺」だったのだ。
「ギヒヒ……見たな……見たなァ……!」
地下から、一際大きな気配が這い上がってくる。 全身がブヨブヨに膨れ上がった、大神官だ。
「我らは神の愛に包まれている! 貴様らのような汚れた存在には理解できまい!」
「愛だァ?」
迅はニヤリと笑った。 その笑顔は、目の前の化け物よりも遥かに邪悪だった。
「テメェらのそれは、ただの『寄生』だ。……反吐(へど)が出るぜ」
迅が刀を構える。 刀身が青白く輝き、魔鉄の力が解放される。
「消毒の時間だ。……一匹残らず焼き尽くしてやる」
ヒュオオオオオッ! 刀に纏(まと)わりついた風が、唸りを上げる。 次の瞬間、迅の姿が消えた。
聖域の嘘が暴かれ、地下の地獄が口を開ける。 だが、復讐鬼にとっては、それすらも通過点に過ぎない。
(続く)
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