第48話 ダンジョンマスターの偉業
そこからの戦闘はほぼ一方的なものであった。
怜奈はさっそく炎の
途端、太陽と見まがうほどの圧倒的な熱量によってモンスターたちは一掃される。
オークの硬い皮膚も、スケルトンの頑丈な鎧も、ホブゴブリンの魔法障壁すら、彼らにとっては意味を成さない。
ジルフィスたちの活躍もあり、万代橋は十数分で完全に制圧された。
対岸でそれを見ていたモンスターたちも、怜奈の眷属の実力に恐れをなしたのか我先にと逃げ出していく。
「よし、これで制圧完了だね。それじゃ、
怜奈たちは制圧した橋から岸側に移動すると、その力を解放する。
それは魔力の濁流となって万代橋とモンスターの死骸を包み込んでいった。
今回の魔法は
彼女は橋上にあったモンスターの死骸から魔力を吸い上げ、その力を利用し万代橋を変質させていった。
途端、対岸側から橋が粒子のようにバラバラになっていくのが見える。
砂粒のように小さなそれは、サラサラと風に舞って河に流れていく。
万代橋ほどの大質量。それをすべて粒子に変えて海へ流そうというのだ。怜奈は自身の身体から魔力が減っていくのを実感しながら冷や汗を流す。
(やばい、結構魔力消費が多いかも。私の魔力とモンスターの死骸でどうにかできると思ったんだけど、さすがにこれだけ巨大な建造物を破壊するとなるとそれだけ大量の魔力が必要になる……)
万代橋の一部だけを崩落させて通行不可にすることも考慮したが、多少の崩落程度
しかし、現在の怜奈ではその魔力量が見合っていなかった。
今もなお、彼女の体内で膨大だった魔力が目減りしていくのを実感する。
この
(仕方ない、あれを使うしかないか)
彼女が次元魔法から取り出したのは、深紅に光り輝くひとつの魔石。
今は扱いきれないと思って残しておいた、旧新潟駅ダンジョンのボスから取り出された魔石だ。
それは怜奈の顔よりも大きく、艶やかな光を放っている。
ため込まれた魔力の遠大さは、その輝きを見るだけで一目瞭然だった。
怜奈がその魔石に手を置くと、一瞬にして体中の魔力が充填されるのを実感する。
魔石とはモンスターが魔力を貯めこんでおくための結晶体であり、魔法を操れるものならば誰でも魔力として利用することができる。
しかし、悪魔と竜から取り出されたというその魔石は、今まで怜奈が扱ってきたどんな魔石よりも強大だった。
魔石から流れる魔力は怜奈の肉体を通り、瞬時に魔法となって万代橋に降り注ぐ。
目に見えて、万代橋の粒子化が早くなった。
その光景に、この場にいた誰もが目を見開く。
信濃川という大河を渡っていた超巨大建造物。それが瞬く間に姿を消していくのだ。
ドサドサと砂粒になったコンクリートや鉄筋が河に流れ出し、濁流となって大河を濁していく。現代の技術が結集して生み出されたその構造体を、たった一人の少女が消し去っていく。
計画では事前に説明されていた。しかし実際にそれを目の当たりにすると、彼女の力の絶大さがありありとわかる。
たとえ強大な魔石を使っているとはいえ、他の誰にこんなことが可能なのだろうか。熟練のウィザードでもこれだけの質量を動かすことはできないし、どんな魔法兵器でも粒子状に変化させながら物体を流すなど不可能なはずだ。
その様子に白銀の乙女は瞳を輝かせ、蜂の王は瞠目し、蝉と蝗の擬人化たちは畏怖と感嘆を同時に抱く。
水の化身である大妖怪は初めて目の当たりにした主人の偉大さに思わずたじろいだ。
たった数分で堂々とそびえたっていた万代橋は忽然と姿を消し、大量の土砂となって海に流れて行った。
文明の息吹が生み出した構造体は、新しい時代の絶大なる力によって崩壊する。
それを成した一人の少女は、たった一滴汗を垂らすとすぐに眷属たちへ振り返った。
「さぁ、万代橋はこれで終わりだ。次は八千代橋を攻略しに行くよっ!」
こともなげに、彼女は笑みを浮かべながら告げる。
その背には、まるで初めからそこにはなかったと言わんばかりに、大橋があった痕跡などどこにもない。
ずいぶんとすっきりした信濃川の河川敷に、寒々とした一陣の風が吹く。
その後、彼女は
しかし、語るべくもない。
その様子に、疲労など微塵も感じさせない。魔石から魔力を吸収し同時に魔法として消費するという極限のサイクル。それは本来であれば大きな負担を伴うもののはずだが、彼女はまったくと言っていいほど疲労を見せない。
その後すぐさま万代島に移動した怜奈たちは、これまでとは異なる敵と対峙することになった。
「……やっぱり万代島はこいつらに占拠されてたか」
青い鱗が全身を覆い、肺呼吸と鰓呼吸の両方に耐え、二足歩行を可能とし背に大きなヒレを持ったモンスター。
小柄ながら強力な力を有していることはすでに判明している。
(サハギンの群れか。でも……!)
怜奈はすぐさま炎の
レベル差はさほどないはずだが、
サハギンは高い身体能力を有しているものの、知能はさほど高くなく魔法を武器に宿らせることはできない。
相性という点において、炎の
勢いづいたジルフィスやその配下も一気呵成に突撃すると、万代島に集っていたサハギンの群れは瞬く間に姿を消した。
佐渡汽船ターミナルにはまだサハギンがいるようだが、上陸してくる様子はない。
怜奈たちの実力を目の当たりにし、様子をうかがっているのだろう。
一時的ながらその場を完全に制圧した怜奈は、万代橋や八千代橋のときと同様
わずか数時間にして、怜奈は三本の橋を完全に消し去って見せた。
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地球にダンジョンが出現するようになったんですけど、私が創る側なんですかっ!? ねぎとろどん @Negimono
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