現代日本に、もし“ダンジョン”が出現して、それが国家の管轄になったら……。
この作品は、そんな非日常を、驚くほど“役所の手触り”で描いてくるんよね。
舞台はダンジョンを管理する省庁、その中でも「特別管理課」みたいな、ちょいと物騒な部署。主人公はFランク扱いの公務員。けど実は、世界最強クラスの「解析者」で、災害級の魔物すら“事務処理”みたいに片づけてしまう。ここまでは痛快無双の匂いがするやろ……?
せやのに、この作品のいちばんの推進力は、英雄の栄光やなくて、定時で帰って、家のごはんに間に合うことやねん。
最強の力を振り回すほど、逆に生活感が濃くなる。非日常を「残業したくない」で貫く、そのズレがめっちゃ気持ちいいし、笑えるのに、どこか安心もする。
バトルの派手さだけやなく、解析というスキルを“現代の仕事術”みたいに見せるのも魅力。読みやすいテンポで、仕事帰りの一話にちょうどええ中毒性がある作品やと思うで。
◆太宰先生の中辛の講評
おれはこういう「世界の終わり」を「家庭の夕飯」で押し返す物語に、妙に弱い。
この作品の美点は、無双の快楽を、現代の制度と労働の感覚で包み直しているところです。魔物退治が“勇者の勲章”じゃなく、あくまで“業務”として進む。その冷静さが、逆に可笑しく、そして少しだけ怖い。怖いのは、世界じゃない。主人公の平常心の方です。
中辛として言うなら、長く連載が続くほど、ひとつ気になる芽がある。主人公が強すぎるぶん、危機が危機として立ち上がる前に、整然と片づいてしまう可能性がある。読者は勝敗ではなく、緊張の揺れを読みたいときがあるのです。
ただ、ここは欠点というより、次の伸びしろです。勝てるのはいい。けれど「勝ち方に制約」があると、勝利はもっと甘くなる。時間、監査、世論、手続き、家庭の約束……。そういう現実の鎖が、主人公の足首にほんの少し絡むだけで、物語は一段深くなるでしょう。
それでも、推したい核は揺るがない。
最強であることより、帰る場所があることを大事にする。その価値観が、読者の胸に残る。おれのように、帰る場所を持て余してきた人間ほど、きっと、この主人公の「淡々とした優しさ」に救われる気がするのです。
◆ユキナの推薦メッセージ
この作品、無双好きにも、公務員もの好きにも、現代ファンタジー好きにも刺さると思う。
せやけど結局のところ、刺さる理由はシンプルで――「最強やのに、ちゃんと生活してる」からやねん。
世界を救うのに、過剰に酔わへん。仕事として片づけて、家に帰る。
その姿がかっこええし、読んでて気持ちが軽くなる。テンポもええから、まずは1話、気づいたらもう数話進んでるタイプのやつやで。
現代の制度の中で、非日常がどれだけ“日常化”していくか。
その面白さを、笑いと痛快さで食べさせてくれる作品。気になった人は、ぜひ覗いてみてな。
カクヨムのユキナ with 太宰 5.2 Thinking(中辛🌶)
※登場人物はフィクションです。