第13話:思い出づくり。

遊園地は広い公園の中の一角にあった。

ありきたりの遊具ばかりだったが近辺の人はみんなその遊園地に遊びに来ていた。

そしてその公園を突っ切った先には海があった。


夏になると海の家ができて海水浴客で賑わった。

その海も、すでに夏の思い出と一緒に過ぎ去って寂しい秋の気配を迎えていた。

そう言うこともあって砂浜には人の数もまばらだった。


舞と悠真とルシルはバスを乗り継いで遊園地に向かっていた。

バスの中ではルシルは注目の的だったが 誰も声をかけるものはなかった。


なんせ頭にツノが生えた女だし・・・だけど最近のこと、みんなルシルの

ことをコスプレ好きな女だと思っていた。

コスプレを知らないお年寄りからすれば変わったファッションくらいにしか

見えなかったのだろう。


どちらにしても、ここに悪魔がいるなんてこと誰も信じるはずがなかった。


バスを降りて少し歩くと、すぐに公園があった。


「さ、遊ぶぞ〜」


って舞がはしゃいだ。


「おまえ元気だな」


「だって、こんなに幸せなことってないんだよ」


遊園地に到着するとまは悠真と腕を組んで楽しそうにチケットを買った。

ふたりに少し離れていたルシルは、今日1日は持ちそうかんなって思って胃た。


「ファンタジーワールド」 って書かれたアーチ状の看板をくぐると

正面に、雫がお目当てのジェットコースターがあった。


こういうスピード系は舞とルシルは強かった。

ダメだったのは悠真だった。

三人は仲良く横並びでジェットコースターに乗った。

絶叫系は、あっと言う間に終わったが、ジェットコースターを降りた悠真は

真っ青な顔色をしてベンチに座り込んだ・・・まるで男の悪魔みたいだった。


「大丈夫?悠真・・・」


「俺、高いとこダメなの知ってるだろ・・・」

「少し休めば回復するから・・・」


悠真が回復するまで休んだ三人は、それからメリーゴーランドや観覧車に乗った。

一番盛り上がったのはカーレースだった。

さすがに悠真はその手の乗り物に強くてトップでゴールした。

どんケツは、もちろん舞だった。


バーガーを食べたり・・・アイスクリームを食べたり・・・ 食物になると、

ルシルは俄然元気が出た。

腹が減っては戦はできぬ、お腹が太ったのでルシルの調子は少し持ち直した。

ゲンキンなものだ。


たくさん遊んで笑った、あっと言う間の1日だった。

すでに、日は西に傾きかけていた。

爽やかな風がほほをなでて行く・・・。

秋の空らしくオレンジ色に染まった空・・・綺麗な夕焼けだった。

その綺麗な夕焼けに誘われて三人は砂浜にいた。


「見て、綺麗な夕日・・・」


「あ、そうだ写真・・・」


舞は遊びに夢中になっていて遊園地で写真を撮るのを忘れていた。


「夕日をバックに写真撮ってあげる」


「ふたり並んで」


そう言って舞はスマホで悠真とルシルのツーショットを撮った。

ルシルは舞がシャッターを押す瞬間を狙って悠真のほほにキスした。


「あ=ルシル〜・・・いけないんだ〜人の彼氏に・・・」


ルシルは笑いながら舞と悠真を撮ってくれた。

次は舞がルシルの真似をして悠真のほほにキスするつもりだった。

ルシルがシャッターを押す瞬間、悠真のほほにキスしようとした舞の

のほうを振り向いた。

その瞬間、ふたりのクチビルが重なった。

びっくりしたのは舞だった。


「おまえらな〜」


「びっくりした・・・だって、悠真が・・・」


「イチャイチャしやがって・・・」


そして今度は悠真が舞とルシルのツーショットを撮った。

それが舞とルシルとの唯一の思い出の写真になった。


永遠に続くかのような雲。

本当に綺麗な夕焼けだった。

舞は生まれてはじめてこんな、すばらしい夕焼けを見た気がした。

舞と悠真は仲良く並んで砂浜に座って沈む夕日を見ていた。


(もう立派なカップルだな・・・)


ルシルはそんなふたりを見守っていた。


「こんなに綺麗な夕日だから・・・明日も晴れるよね」

「そうだな・・晴れるといいな」


「私は明日の朝日は見れそうにないかもな・・・」


ボソッとルシルが言った。


「えっ?」


つづく。

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