第12話:ルシルの体調の変化。

悠真と舞にはもう障害になるものは何もなかった。

ふたりの気持ちさえ冷めなければ・・・


ひとつ変わったことがあるとすれば 悠真と舞が恋人同士として付き合うよう

になってから 舞の耳鳴りがしなくなったってたことだろうか・・・。


つまりは舞の悲しみを悠真の強い愛が拭い去ったということになるのか?

もちろん舞の心からサラダのことが消えてしまったわけじゃない。

ただ、その時より確実に悲しみの深さが減って来ていたのは確かなことだった。


舞は確実に前に踏み出してるってことだろう。

舞の悲しみが薄れていくにつれ、ルシルの体にも微妙に影響を与えていた。


ルシルがいつになく、ふさぎこんでるのを見て舞も悠真も心配した。


「ルシル元気なさそうだけど・・大丈夫かな?」


「私も気になってて・・・ 」

「ルシルらしくない・・・」

「でも、ご飯の時だけは元気なんだよね」


ルシルはキッチンでひとり朝食をモリモリ頬張っていた。


「ね、ルシル大丈夫?」


「ん?」


「最近のルシルを見てると、なんとなく全体的に元気ないような・・・」


「大丈夫だよ、心配いらない・・・ただ、微妙に複雑かな・・・」


「複雑って?」


「私、ナイトメアタウンに帰るかもな・・・」

「それはいいんだけど、舞や悠真と仲良くなれたぶん後ろ髪ひかれる」

「ふたりと別れるのは、あまりいい気分じゃない・・・」


「帰っちゃうの?・・・え?もう自由に帰れるの?」


「そうじゃないけど・・・強制送還かもな・・・」


「そうなんだ・・・私はルシルに帰って欲しくない」

「でも、本当はそのほうが自然なんだよね・・・」


それ以上は舞には何も言えなかった。

舞はルシルを元気付けるために三人で遊園地へ行こうと思った。

三人で遊びたかった。


「ね、明日、土曜日だし・・・三人で遊園地へ遊びに行かない?」


「それ、いいね」


悠真はもちろん舞の提案に賛成してくれた。


「でしょ・・・ね、ルシル、そうしよう?」


「おまえらふたりで行ってくればいいだろ」


「そんなこと言わないで・・・ね?ルシルも行こうよ」

「一緒に行こうよ・・・楽しいよ」

「最近どこへも出かけないでずっと家に閉じこもってるじゃん」

「たまには気晴らしも必要だって思うよ・・・」

「ねえ、行こうよ、なんかルシル一人置いて 私たちだけ楽しんで来るなんて、

つまんないよ」


「ね、ね、行こう?」


「遊園地?」


「知らないの?遊園地」


「知ってるよ、遊園地ならナイトメアタウンにもあるから・・・」

「どっちかって言うとホラー館のほうが人気だけどな・・・」

「どっちにしたってガキが遊びに行くとこだろ?」


「大人だって楽しめるよ」


「ね、お願い行こう?」


「しょうがねえな・・・行ってやるか・・・」


「やった〜」


「よかったな舞」


「悠真、ルシル・・・三人で楽しもうね」

「遊園地の先に海もあるんだよ」


「そうか・・・私はどこでもいいけどな・・・」

「どうせ、お前らのイチャイチャを見せつけられるだけだからな」


「そんなにイチャイチャしないよ」


「おまえらが、一緒にいるだけでイチャイチャなんだよ」


「だって、しょうがないじゃん」


「まあ、いいけどな・・・」


「遊園地、きっと目先が変わってルシルもいい気晴らしになるよ」


舞は三人で遊園地に遊びに行くことが嬉しくてしょうがなかった。

浮かれている舞がルシルの体の変調に気付くはずもなかった。


ルシルの体調変化は時々現れてはすぐに消えた。

その間隔が短くなってきてるのは確かなことだったが、まだ1日くらいは、

なんとか持つだろうとルシルは思っていた。


つづく。

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