第7話:舞の気持ちを確かめるルシル。
ルシルが学校に着くと、すでにたくさんの生徒が教室で真面目そうに授業を
受けていた。
ルシルにも覚えがあった、子どもの頃、悪夢の町の学校へ通っていたことが
あった。
義務教育だけはルシルも受けた。
勉強と学校生活が苦手で退屈だったルシルは進学はしなかった。
だからルシルの学歴は中学までだった。
足し算と引き算と九九が言えたら、世の中は生きていけるとルシルは思っていた。 あとは生きながら勉強すればいいと・・・。
以外としっかりした考えをルシルは持っていた。
人間はみんな毎日勉強なんてことを真面目にやってメダカの学校みたいな生活に
疑問すら持たず、なにが嬉しくて、どんぐりの背比べみたいなことをやってるん
だろうってルシルは思った。
自由な世界で育ったルシルには勉強漬けになるなんて理解できないことだった。
ここに来ても退屈なことには変わりなかった。
学校周辺を観察して回ったルシルだったが、めぼしいものは発見できずそれでも
少しは退屈しのぎになったようだった。
昼が来て学校のベンチで仲良く弁当を広げている雫と悠真の姿をルシルは発見した。
「お、いたいた」
「一緒に昼飯か?・・・普通に仲いいじゃん」
(あのふたり、微妙な関係だな・・・)
舞と悠真・・・
近づくわけでもなく、かと言って特別な仲にまで発展するわけでもない・・・。
そういう中途半端なことはルシルは大嫌いだった。
「なるほどね・・・」
退屈だし・・・することもないし・・・
どうせなら、この際、ふたりをくっつけてしまおうと密かに企むルシルだった。
その夜、舞といっしょに風呂に入ったルシルはさりげなく聞いてみた。
「あのさ、あんた悠真のこと、どう思ってる?」
「え? どうって?・・・なんでそんなこと聞くの?」
「あんたさ、悠真のことが好きなんだろ?」
「見てたらわかるよ」
「ルシルには関係ないし・・・」
ルシルの言うことが図星だったので雫はドキッとした。
「たしかに・・・ほっとけばいいことなんだけど・・・見てられないないんだよね、はがゆくて・・・」
「余計なお世話かもしれないけど・・・私そういう煮え切らないの嫌いなんだわ」
「好きなんだろ?悠真のこと・・・白状しろ」
「そりゃ、まあ・・・好きだけど・・・」
「好きってより・・・愛なんだろ?」
「そう・・・だけど・・・」
「だって・・・今更、愛してるなんて言えないよ〜」
「それに悠真が私のことをただの幼馴染って思ってるかもしれないし」
「兄妹みたいに育ったから私のこと女として見てくれてないんじゃないかって」
「聞いたことないのかよ、悠真の気持ち・・・」
「そんなこと聞けなるわけないでしょ」
「もし、悠真にその気がなかったら、ふたりの関係って絶対気まずくなるよ」
「悠真のほうは誰か付き合ってる女、いるのか?」
「以前は何度か彼女紹介されたことはあるけど・・・とっくに別れたみたいだし
今は付き合ってる子がいるって聞いたことないけど・・・」
「悠真、モテそうだもんな」
「このまま、放っておいたら誰かに持っていかれるぞ」
「もう、そんなこと言わないでよ・・・焦っちゃうでしょ」
「気になって寝られなくなっちゃうじゃない」
「だったら早く自分の気持ち告りな」
「無理だってば・・・・無理、無理、む〜り〜」
「悠真と今の関係、壊したくない」
「しょうがねえな・・・」
「今のままなら、悪くなったとしても良くはならないぞ」
「ぬるま湯の中に浸かったままでいたら、そのうち冷え切っちゃう・・・」
「男と女の間に、いつまでも変わらない関係なんて絶対ありえないからな」
「相手に自分の気持ちを分かって欲しいなら、言葉にしなきゃ伝わらない」
「だって・・・」
やれやれだ・・・。
舞がダメなら悠真を攻めてみるほうが早そうだなってルシルは思った。
つづく。
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