第5話:悪魔なんている訳ないじゃない。
「今度は私がこっちに来ちゃったわけだけど・・・」
「迷惑だったら帰ろうかって言いたいけど、帰れないしな・・・」
「迷惑だなんて思ってないよ」
「せっかく仲良くなれたんだから、しばらくここにいればいいじゃん?」
「そうだな」
「どうせ向こうに帰っても暇だし・・・」
「ごめんね、私がどうにかしてあげたいんだけど」
「もう耳鳴りは勘弁、思い出したら胸が苦しくなるから・・・」
「サラダのことは忘れないけど、でも耳鳴りはイヤ」
「無理しなくていい・・・」
「私が舞の前から消える時は舞の悲しみが癒された時だと思うんだ」
「きっと、それは舞にとってはいいことだと思うよ」
「でも、そうなったら、そうなったで寂しい・・・」
すると玄関のチャイムが鳴った。
舞が玄関を開けると悠真が立っていた。
「おう、舞」
そう言って悠真は手に持っていた袋を舞に手渡した。
「え?なになに?学校休んだからお見舞いのつもり?」
「たまにはな・・・」
袋の中を見ると美味しそうなスイーツが入っていた。
なかなか気が効く男だった・・・悠真は。
「今日学校に来なかったよな」
「うん、ちょっといろいろあってね」
「悠真・・・びっくりしないでね」
「こっち・・・」
そう言って玄関先にいた悠真の手を引いてキッチンに連れて行った。
「お?おおお、引っ張るなよ、まだ靴、脱いでないだろ・・・」
悠真は舞に導かれるままキッチンに行くと、そこに見たことない女がキッチン
テーブルの椅子に座って偉そうに膝を組んで、こっちを見ていた。
悠真はちょっと後ずさりしたが、気をとりなおして
「え?・・・え〜・・・?だれ?」
「この人・・・だれ?」
「この・・・エロっちい女性?・・・だれだよ?舞」
「悪かったな、エロっちい女で・・・私、悪魔だよ」
「え?、悪魔・・・またまた・・・悪魔なんている訳ないじゃないですか?」
「って言っても、そんな立派なツノ・・・人間じゃないことは分かるな」
「舞、どうなってるの?これ」
「悠真ごめんね・・・この子本当に悪魔なの・・・」
「この子の名前はルシル・・・ナイトメアタウンって悪夢の世界から私が連れて
来ちゃったの」
「そんなバカな・・・舞・・・何言ってんの?」
「へ〜?あんたが舞の彼氏?」
「ってかさ、舞・・・あんたの彼氏、イケてんじゃん」
「奪っちゃおうかな?」
「何、言ってるの・・・彼氏じゃないよ・・・幼馴染だよ」
「ふ〜ん・・・どうだか・・・」
「なんでもないんなら、私がもらっちゃうよ、悠真」
「ルシルには関係ないことだから・・・」
「あはは、ごめんね悠真」
「この人の言ってること真に受けないでね」
「分かってるよ」
「最初っからはっきり言っておきますけど」
「俺は、あなたを好きになることなんか100%ありませんから」
「お〜言ってくれるね〜」
「せめて5%くらい残しとけよな」
「それより、この悪魔とかって人って舞が学校へ来なかったことと関係あるとか?」
「大いにあるね」
舞は今まであったことを悠真に言って聞かせた。
「そんな馬鹿な・・・」
「じゃ〜彼女は?・・・ルシルのことはなんて説明するの?」
「まあ、たしかにな・・それに舞が嘘ついてるとも思えないし・・・」
「だからしばらくルシルはうちにいることになるから・・・」
「私、しばらくここに住み着くことに決めたから、よろしくな悠真」
「住み着くって・・・・」
「このこと、智晴(ちはる)さんは知ってるのか?」
「お母さんはまだ知らない」
「お母さんにはさっきのこと、全部説明して納得してもらうから」
「私って生き証人がいるんだから信じるしかないだろうがよ」
「そりゃそうだけど・・・」
悠真にしてみれば寝耳に水の話だった。
でもこの状況、悪い夢を見てるわけじゃなかった。
ルシルは悠真が持ってきたスイーツを全部一人でペロリと平らげてしまった。
つづく。
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