第4話:人間界にやって来たルシル。

ナイトメアタウン・・・ 悪夢の町で誰にも干渉されずに自由に生きて

いたルシルは舞のせいで人間界に来てしまった。


舞は次に自分に耳鳴りが起きるまでルシルは悪夢の世界に帰れないかも

しれないって思った。


「私の耳鳴りが起こらないとルシルは悪夢の世界には帰れないのかな」


「そうだな、でもそれは分からない」

「二度あることは三度って言うけど、また同じことが起きるとは限らないよ」

「今度も耳鳴りがしてもナイトメアタウンじゃない場所の飛ばされるかも

しれないだろ?」

「それより、いつか舞の心が癒される時が来て逆に耳鳴りがしなくなったら、

もしかしたら?」

「でも、経験した記憶は一生消えないからな・・・」


「そうだね、今は、まだサラダの悲しみをぬぐえ切れないし・・・

思い出したくないし・・・時間が必要・・・ごめんね」


「いいよ、謝らなくったって・・・」


舞はこれから学校へ行ってもしかたないと思って、とりあえずルシルを連れて

一旦家に帰ることにした。


ルシルはマイクロビキニみたいな格好で露出が多かったし頭にツノなんか

生えてるから近所の人に 見られないかヒヤヒヤした。

ここにいる間は私の服を着せればいいか・・・舞はそう思いながらルシルに

話しかけた。


「ここに・・・人間の 世界に来るのは、はじめてなの?」


「初めてだよ・・・でもここもナイトメアタウンも、そんなには変わらないよ」


「ルシルの家族は心配しないかな」


「大丈夫だよ・・・私は天涯孤独だから・・・」


「だって、生まれた時は両親はいたでしょ?」

「どっちにしたって両親ともに悪魔でしょ?ルシル」

「忘れた」


「あ〜言いたくないんだ・・・」


舞は・・・悪魔にも?それぞれ事情があると思って、 それ以上は追求

しなかった。

歩道橋を降りて公園を抜けるとすぐ舞のマンションがあった。

舞は一人っ子・・・今は、母親とふたり暮らし。


舞が物心つく前に両親が離婚したため父親のことはよく知らなかった。

母親は生活費を稼ぐため昼間、働いていたので家には誰もいない。

舞はルシルを家の中に案内した。

ルシルの靴「ブーツ」は変わっていた。

先んちょが上に向いてトンがってるのだ。

魔法使いの靴みたいと舞は思った。


キッチンの椅子にルシルを座らせて冷蔵庫の中から飲み物を出してあげた。


「舞、あんたこそ家族は?」


「お母さんとふたり暮らし・・・」


すると舞のスマホに連絡が入った。

幼馴染の「悠真」からだった。


「悠真からだ」


《今日、学校休んでたみたいだけど調子悪りぃ?》


「大丈夫、心配いらないから」

「あとでうちに来て・・説明するから」


彼の名前は一ノ瀬 悠真いちのせ ゆうま

悠真は舞と同じマンションの隣に住んでいて幼稚園の時からいっしょに育った

仲でほぼ家族、兄妹と言っていい関係だった。

だから悠真は普通に舞の家に出入りしていた。


夜はお互いの隣同士の部屋の窓から遅くまでよく語り合った。

そして舞は密かに悠真が好きだったって言うか、それは恋心だった。

最初は仲のいい近所の幼馴染・・・あるいは兄妹・・・そのうちお互い同じ高校に

通うようになって舞のほうが意識しはじめた。


でも、それは舞の片想いで今更兄妹のように育った悠真に改まって好きとは

言えずにいた。


「なんなんだ?その小さい箱」


「スマホって言って離れたところにいる人とコミュニケーションが取れるの 」


「へ〜便利だな」


「悪夢・・・夢の世界では、そういうのないの?」


「ないね、化学的なことはたいして進歩してないし・・・」

「離れたところにいるやつと話す時は魔力を使うからな」


「もしかしてテレパシーとか?・・・なんだ、そっちのほうが便利じゃん」

「あ、それ飲んでみて・・・」


ルシルは舞の言うままに出された飲み物を飲んでみた。


「うまい・・・こんなの飲んだことないわ」


「果汁100%だから、体にもいいよ」


「つうか腹減ったな・・・」


結局、ルシルは舞の家の冷蔵庫の余り物と舞が温めてくれた冷凍商品を

全部平らげた。

ギャル曾根がここにいたらいい勝負になったかもしれない。

スーパーの食材を全部食べて尽くしてしまうくらいルシルは大食感だった。


つづく。

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