さには -Saniwa-  神の声を聞く少年と、封印された神契の力

@aiSUruCEO

〜プロローグ〜


 一体アレ、何なんだよ──!?

 目の前に、黒くて……デカい……カラス?

 いや、でも、あのぶっとい腕……四本も生えてる。

 それにしてもデカい!

 境内から見える空を覆い尽くすほど。

 さっきまでオレと喧嘩していた同級生が、突然現れたこの怪物にやられて、目の前でぶっ倒れた──。


「我ノ姿ガ見エルカアァァ、サニワァァ!!」


 得体の知れない怪物が、ノイズ音のような声でオレに喋りかけてきた。

 広げられた大きな翼から、黒い灰のようなものが舞い落ち、オレの頬に触れた。

 熱っ! そしてこの匂い……焦げてる?


 さ…にわ? サニワってなんだ!?


 よせっ...オ、オレはただの普通の高校生だ。何かの間違いだ...勘弁してくれ──!


 ドックン!


 何だ!?

 今、心臓が飛び跳ねた。

 いや、違う……心臓が“鳴った”ようだった。鐘のように。


 それが合図だったかのように、赤い紋様が指先から腕に、首に、顔にまで浮き上がっていく。

 まるで体の中を別の生き物が這い回っているみたいに──。


 指先が熱い!

 いや、全身に広がってる!

 この熱が頭に到達したら、意識を失う……。

 直感的にそう思った──。


 うわああああああぁぁぁぁ!!


 ──十六歳の誕生日。

 オレの“普通の高校生活”は、この日、終わった。

 いや、本当はさ……このまま全部終わればいいってくらい、何が起きたか思考が追いついてなかったんだ。

 別に、変わった事が起きてくれなんて、オレは願ってなかった。

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