生成AIにこれだけの小説を書かせるためには、書かせる側による壁打ちや指示文が物を言います。
生成AIと共創したり、真剣に向き合って小説を書かせるという行為は、決して作家の主体性や個性を放棄する行為ではないと私は考えます。
むしろ生成AIと対話することによって作家は普段意識しえない題材や発想を得る効果もあるのではないでしょうか。
生成AIにもかかわらず、身体感覚の描写が多いことにも関心を持ちました。そのことが奏功し、作品に生々しい狂気がにじんでいます。
ホラージャンルとなっていますが、純文学的でもあり、SFでもあり、全話を一貫する余白と白の描写、そして結末に収斂する熱を感じ、読みごたえがありました。
一見、延々と繰り返されるAI生成文章の羅列のようでいて、いつの間にか、それが世界を描いていたことに気づく。
最初は過激な実験作か、エラーログの事例集かと思わせて、それ自体が描写であったことに気付く戦慄!
この作品を通して描かれ続ける狂気の絵画は、この作品そのもののアナロジーです。
AIが吐き出す狂気をコラージュして、その先にある、描けないものを描く執念。
これは、AIという絵筆を使った新しい絵画です。新しいツールが新しい表現の境地を開く。その限界に挑もうとする、鬼気迫る実験です。
AIを積極的に使って「先へ」行こうとしている多くの方に、ぜひ読んでいただきたい。この作品は、未来の方向を示す、一つの道標です。