第一章『英雄の後腐れ』 18フィルム目『スターリー・シン(星の罪)』

襲って来た3人のタスクを間一髪の連続で倒す事が出来た翌日、アリス達は食料調達へと街の方に向かった。


アリス「良いかね?手を繋ぐのが恥ずかしいんなら決して私と逸れてはいけないよ」


アーサー「分あってるよ…マジにどんだけ信用ねえんだ」


アリス「信用はまだ無いさ、だから築いてくれ」


アーサー「うっぜ!つーか信用してねえんなら何で俺を仲間にしようとしたんだよ?」


 アリスが少し考え込みアーサーに近づき少しだけだ小声になって話す


アリス「君が色々と便利だったのだよ」


アーサー「んだそりゃ…俺のタスクが強いってか?」


 アリスが少し吹き出そうとしたのを肩で押さえる


アリス「ングッ…いやはや今のはナイスジョークだったのだよ!」


アーサー「冗談じゃねえよ!殺すぞテメッ」


アリス「まあまあ話を聞きたまえ、良いかい?世の中に君より強くて便利なタスクを持ったやつなんていくらでも居るのだよ」


アーサー「ああ!?だったら何で俺を仲間にしたんだ、なおさら訳分かんねえよ」


アリス「だから話を聞きたまえ…だがねそう言う強い子達は大体がタスクを束ねる組織のどれかにに入っているんだ」


アーサー「組織…つったら今俺らを狙ってるやつもか?」


アーサー「恐らくそうだね、まあそう言うわけで組織に加入していなくて尚且つある程度使える子を探していたらアーサーに出会ったと言うわけなのだよ。」


アーサー「ふーん、お前ってマジで敵が多いのな」


アリス「ま、最強の苦悩ってやつなのだよ。今歩いているここに敵がいたっておかしくは無いのだからね」


アーサー「もう3人も倒したのにまだいるんなら嫌になるぜ」



 そんなやり取りをしている2人を遠くから覗く様に追跡している謎の男が尾けていた。




******



ジェクター「グアッ!クソ…何なんだ貴様等は」


 アーサーに倒された後、ジェクターは闇医者の元へ向かおうとしたが仮面を被った2人の男に奇襲され捕まってしまう。


仮面の大男「良いからサッサと入りやがれ!」


 体が異常に発達している大男に車の後部座席へと無理矢理詰め込まれる。仮面達も運転席と助手席に乗りどこかへ向かい車を走り出す。


リーフ「あら、アンタも捕まったのね」


 車から聞き慣れた声が届き顔を上げる


ジェクター「お前…やはり英雄に負けていたのか」


リーフ「それも完敗したわ、何も言えない程にね」


ジェクター「クソッ…今日は最悪の日だな、それにコイツらは一体何なんだ!?」


リーフ「さあ?ただ分かることはコイツら…異常に強いわ」


ジェクター「私達2人が協力すれば抜け出せるだろう」 


 焦ったジェクターが縛られた体からタスクを使い逃げようとしたが大男に殴られ気絶してしまう。

 リーフが恐れを噛み殺す様に虚勢を張る


リーフ「アンタ達は誰に手出してんのか分かってのかしら?アタシらを捕まえたら組織の奴らに殺されちまうよ」


 それを聞くともう片方の小柄な漢が仮面を外し大男に「もういいですよ」と呟く。すると大男は振り向きざまに腕を振りらリーフの腹部へと拳をかました。


リーフ「ガアッ…あ…貴方…はマーク様…」


 リーフは仮面の正体を知って体が異常に寒くなってしまう。しかし…それ以上に彼の台詞で恐怖を感じてしまうことになる


マーク「出来ればスティングと呼んで欲しいのですか…まあ良いとしましょう。それより今回はその組織のボスが貴方達を連行する様僕に言って来たのですよ。全く嫌になっちゃいますね…ってあれ?」


オスカー「もう聞こえてねえよ」


 マークと呼ばれる青年は後ろを向くとリーフが泡を吹きながら倒れているのを確認した。


オスカー「んなもの見てねえで前見ろよ!赤信号だぜ?」


マイク「ああ…もう良いのです。ここいらにあの人のタスクが用意されている筈ですから。」


 大男がビクッとして扉へと手をかける。


オスカー「なあおい?あの人ってまさかだがアレじゃあねよな?」


マーク「アレと言われても分かりませんが…もう逃げても遅いですよ?着いちゃいましたから」


 人気の少ない道に出ると空から高速の矢がこちらに向かっているのが見えた。それを知って大男は逃げようとしたがマークに袖を捕まえられ失敗してしまう


マーク「ほら、ちゃんと捕まっていないと危ないですよ?」


 矢が車に当たった。瞬間、車は宙へと浮き上がり超高速でどこかへ飛んでいく。


オスカー「グオオオォッ!!やっぱりコレかよ、気持ち悪ぃ」


マーク「あと数秒で着きますから我慢して下さい。」


 上昇していた車は急に下へと向かい地面に衝突しようとする。ぶつかったかと思われた時、車はフワっと浮き上がり優しく速度を落とした。


ーーガンガンッガタ


 大男は急いで外へと向かい新鮮な空気を吸い込む


マーク「よいしょ、貴方、相変わらず乗り物が苦手ですね。それよりも…オーイ!おきて下さい!組織の本拠地に着きましたよ!」


 叩いても起きなかったので仕方なく車から引き摺り出して飲みかけの水を顔に掛けた。


ジェクター「ーーッッブボア!?…ハァッハァッ。」


マーク「やっと起きましたか、それでは着いて来て下さい。たった今から幹部会談を始まりますよ」


(ここは大聖堂!?なぜここにいるんだ?それよりもこの方は……ッ!)

 

 起き上がった2人はあまりの情報量に混乱したが、いち早く現状を理解したリーフが何とか質問を捻り出す。


リーフ「何故アタシたちが幹部会談にお呼ばれされているのでしょうか?」


 マークは少し疑問を持った顔をしていたが気にしない様に先へと歩いた。


マーク「それに答えがいるとは思えませんね。貴方達も分かっているのでしょう?英雄アリスに関して聞きたいのですよ」


 2人はマークの後を着いて行き大聖堂の中へと入った。日中に関わらず真っ暗な中を歩いていると突如マークが後ろを振り向いた


マーク「ああそう…先に言っておくと僕はとても優しいので基本君たちを殺すことはありませんよ?」


ジェクター「………今何と?」 


 急な発言に混乱したジェクターはつい口を挟んでしまう。すぐに礼をしたがマークは気にしていないと言う顔で前を向いた


マーク「幹部は僕含め4人で構成されていることは存じていますね、ですが僕ともう1人の老人以外は気性が荒いので少しのことで殺してしまいます。なので注意して発言して下さいね」


 脅しか、ただの喚起かどちらとも捉えられる発言に2人は心底恐怖をした。そして理解する、ここで自分たちは死ぬかもしれないと。その結果2人は話さずとも同じ結論に辿り着いた


ーーここでコイツを殺して逃げるしか無い。幹部なんて普通にやったら殺されるだけだが奇襲なら…2対1なら勝てるかもしれない。


 ジェクターは腕の辺りからタスクの木を出して攻撃を仕掛けようとする。


マーク「それからもう一つ。僕を殺すことは不可能ですよ?当然逃げる道もない」


 2人攻撃しようとしていた体は止まり目を丸くし、震えてしまう。そして後ろから大きく濃い黒の影が襲っているのを感じ取った。


オスカー「どうすんだコイツら?やっぱここで殺すか」


 オスカーは2人の頭を掴みマークの指示を待つ。


マーク「落ち着いて下さい、まだ話を何も聞けていませんよ。ただ逃げ道を無くせれば良いのです。彼らの道を僕が作れる関係になれたらそれで良いのです。」


オスカー「あーそうかよ、じゃ早く行こうぜ」


 オスカーは2人の背中を押し出し歩く速さを自分に合わす様急かしてくる。


ーーダメだコイツら…化け物だ。ここで抵抗しても何も出来ずに殺される。


マーク「さあ準備は良いですか?それではようこそスターリー・シン(星の罪)の幹部会談へと!幹部達に殺されないと良いですね」


 マークは扉を開き一行を地獄にお連れする。

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