第2話
少年は学校への道を小走りに急いでいた。今日から四年生だというのに初日から遅刻はまずい。春休み気分が抜けず、つい夜更かしして寝坊してしまった。いつもは通らない神社を横切る道を行くことにしよう。だいぶ時間が節約出来そうだ。木々が生い茂り昼間でも薄暗い参道はあまり近づきたくないのだが緊急事態だ、我慢しよう。参道の階段を駆け上がる途中で妙な物を見つけた。1枚の枯れ葉が階段を上っていた。上るといっても手足がある訳ではなくズリズリと這うように縁を乗り越えて外側の地面を目指しているようだ。少年は足を止めしばらく監察した後そっとつまんでみた。見た目は何の変哲も無い枯れ葉だ。裏返してみても何も変化は無い。と、そのときどこからか声がした。
「やあ、見つかっちゃったかな?悪いけど降ろしてもらえる?出来ればその地面の方に。」驚いたことに枯れ葉がしゃべっていた。
「びっくりした。君がしゃべってるの?今降ろすね。」少年は持っていた枯れ葉をそっと地面に降ろした。
「ありがとう。君は優しい子だね。」
「君は何なの?葉っぱみたいに見えるけど。」
「ハハハ、見ての通りの葉っぱだよ。驚かせてごめんね。」
「うん、大丈夫だけど‥。どうしてしゃべったり動いたり出来るの?」
「これはね修行の旅をしてるんだよ。」
「修行?」
「そう、神様になるための修行。」
「ええ!君、神様になるの?」
「うん、まだなれるかどうかわからないけどね。そのために修行しているんだ。なれるとしてもずっと先のことだし。」
「葉っぱが神様になるの?どうやって?」
「そうだね。不思議だよね。じゃあ、特別に教えてあげるよ。」
葉っぱ君が教えてくれたのはこういうことだった。
世界は色々な物で出来ている。その全てが相互的に絡みあい成り立っている。
砂一粒も大きな岩が少しづつ削れて出来ている。葉っぱ君も砂になったことがあるそうだ。
今は種から始まって大きな木になってその中の葉っぱから枯葉になって、これから土になるらしい。そのあとも虫になったり、動物になったり、まだまだたくさん経験しなくちゃいけないみたいだ。全部が終わるのはまだまだ先でそれでも神様になれるかどうかわからない。大変な旅の途中なのだ。
「すごいね。ホントに神様になるんだ。じゃあさ、いつか人間になったら会えるかな、一緒に遊ぼうよ。いつ頃になるのかな?」
「え、それは難しいかも。」
「そうか、これからいろんな動物になるんだったら人間はずっと先だよね。僕もう大人になってるだろうから遊ぶとかじゃないかな?そうだ、僕もその修行って出来るのかな?」
「それもあるけど」葉っぱ君はちょっと寂しそうな声で言った。「人間はアウトサイダーだからムリなんだ。」
「ふーん、アウトサイダーなんだ。」言葉の意味は分からなかったが、なんだかとっても悲しい言葉に思えた。
葉っぱ君はもう何も話さなかった。
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